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コロシタノダレ ~黒猫学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅠ― 「切札枠と舞踏人形」
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#9 運命のくじ引き


 十河愉快がくじ引きボックスの置かれているテーブルまで歩いていく。


 夏男を利用してマイルームの外が安全なのか確認しようとした最低な男。今ではプロフィールから顔を確認出来るようになっている。が、奴の顔を生で見たい。


 何らかの枠ミッションが書かれているくじを手に取り、こちらを振り返る。彼の表情からは何を考えているのか読み取る事は出来ない。


 黒髪にロン毛で髪を後ろに結んでいる。服装は黒のシャツに黒のパンツ。地味だけど動きやすそうな服装に十七歳とは思えない筋肉質な身体。見た目から言ってもなかなか特徴的なプレイヤーだ。


 何よりも、私語禁止と言われているこの状況下で化け猫に質問してしまう落ち着きよう。気味が悪い。


「十時になったらゲーム開始と共に夜時間を迎えるんだよな?」


「そうだニャ。だからさっさと部屋に戻ってくじの中身を確かめてくるニャ。残り七分しかないニャ」


「夜時間を迎えても、さっき起きたばかりで眠れないんだが?」


「心配には及ばないニャン。ゴキブリの活動時間は夜だニャ。言いたい事は分かるね?」


 十河は落ち着いている。ゲーム開始時刻は午後十時。夜時間は午後十時から午前六時まで。確かにゲーム開始と同時に夜時間が始まる。その夜時間という縛りは、個別部屋からの出入りを禁止としている。


 夏男と目を合わせる事なく横を通り過ぎ、自身のマイルームへと去って行く。今は私語禁止だから何も言えないが、今度会ったら事の真相を余す事なく全て話してもらう。


 そうこうしている間に、夏男が気に掛けていた身長が二メートルを越える外人プレイヤーが呼ばれる。


「次はプレイヤーナンバー八番の『ネル・ウィンストン』くん!」


 でかい。とにかくでかい。何よりもオーラが他のプレイヤーとは全然違う。夏男が目を付けただけの事はある。彼と協力すれば脱出ルートも抜けられるかもしれない。何よりもこの後の捨て台詞が忘れられない。


「あんさんやってるコト間違ってるネ。そんなコトでは人の心は動かせないネ!」


「お前、撃ち殺されたいかニャ?」


 初っ端から正義感溢れる感じが気に入った。そうだ、こんな恐怖で人を支配するような真似して人生の再生に向かえる筈がない。日本語も話せるみたいだし、ネルとは早いところ繋がっておく必要がありそうだ。


 残り六分くらいでゲームが始まってしまう。一人ずつくじ引きを引く光景が、まるでゲーム開始のカウントダウンを行っているように見える。


「次、プレイヤーナンバー十一番の三野みの大海たいせいくん、引いてくれ」


 大海君の番だ。今は何もしてあげられないけど君の事は必ず守る。君がどんな子だろうと知ったこっちゃない。まだ小学生なんだぞ。こんなのあんまりじゃないか。


「えっと、次はプレイヤーナンバー十三番、北村玲美ちゃん。来てくれニャ」


 北村の番か。彼女に関して一つだけ言える事は一人にしておくと危ないタイプ。色々悩んで考えて頭でっかちになって処理出来なくなって、最終的には爆発する。彼女の今後の扱いが悩ましいところだ。


 既にプレイヤーの半数以上がマイルームに戻っている。その間まだまだ紹介しきれていないプレイヤーは沢山いる。気になる点は幾つかあったけど、その中でも強烈だったのがこいつだ。


「プレイヤーナンバー十五番『立花たちばな向日葵ひまわり』ちゃん」


「はーい。立花向日葵、元気一杯頑張りまーす」


「お。気合入ってるニャ。他の生徒は死んだ魚のような目をしていたのに、君の目はイキイキしてるニャ。先生、君のこと応援しちゃおうかニャ」


「ありがとうございまーす。あのー学園長先生、一つだけ質問っていうかお願い聞いてもらっても良いですかー?」


 何だこの厚化粧の女は。サングラスをかけている上にじゃらじゃら付けたアクセサリーが目障りだ。さっきから気になっていたきつい香水の匂いはこの女によるものだろう。金髪に黒のリボンを付けた四つ編みのハーフアップヘアスタイル。


「毎日新しい洋服を支給してくれるって聞いたんですけどー、私こだわり激しめなんでー、学園長先生に言ったら好みの洋服を用意してくれたりしますかー?」


「ふむふむ。身だしなみにこだわりがあるようだニャ。先生、生徒の個性は大事にしていきたいから、そういう要望には喜んで応えてあげるニャン。ただ、少しだけ時間が掛かるかもしれないニャ」


「分かりましたーありがとうございますー」


 落ち着いてるなんてものじゃない。まるで遊びに来ているみたいだ。何をどう考えたらこの最悪な状況の中で今後の服装を気にする。また厄介なプレイヤーがいたもんだ……


 だが、本当に厄介なのは次に出てくる青髪の女子プレイヤーだ。彼女に関していえば厄介というよりは、もはや手に負えないレベルと言えるかもしれない。


「次は、プレイヤーナンバー十六番の『早乙女さおとめゆかり』ちゃん、引いてくれ」


「おっと。僕の番だね」


 右手に持つサバイバルナイフをまるでペン回しのように華麗に回して歩いている。


「ねえねえ。これって一番難しい枠が欲しいって言えば、例外にしていただけたりしないのかな?」


「ん。何だお前。ずいぶんと余裕そうだニャ。そんな物騒な物チラつかせて」


「アハハ。僕はね、このゲームをじっくり楽しみたいと思っているんだ。駄目かな?」


「例外は認められていないニャン」


「そうか。それは残念だね。僕が殺人枠を引いても知らないよ。死体コンプリートしちゃうかもね」


 何だこの青髪の女。遊びに来てるなんてものじゃない。人を殺す気満々みたいな雰囲気が漂っているじゃないか。厄介なんてものじゃない。危険人物そのものだ。


 くじを引いた早乙女は、不気味な微笑みを見せながら夏男の前から歩いて来る。


「君、神崎夏男くんだよね。プロフィールの職業欄に探偵って書いてあったけど、推理は得意なのかな。もし僕が殺人枠だったら君に勝負を挑んでも良いかな?」


 何だこいつ。私語は禁止だって、ついさっき銃撃を見せ付けられたばかりだろう。それにまだ呼ばれていない男子が三人も残っているのに、どうして自分が夏男だって分かった?


 殺人枠が具体的に何をするミッションなのか分からないが、早乙女は人を殺す枠だと考えてる。人に殺せと言われたら殺すのか。最悪なプレイヤーから元職とはいえ探偵という情報に一目置かれてしまう。


「い、今は私語禁止の時間だろ。さっさと部屋に戻れよ……」



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