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コロシタノダレ ~黒猫学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅠ― 「切札枠と舞踏人形」
7/18

#7 学園長ドパッションねこ


 主催者側の放送により、食堂に集められたプレイヤー達。これは夢でも見ているのかと思えてしまう。


 プレイヤー達の前に現れたのは、生き物なのか疑わしい、人の手で改造されたカラフルな化け猫。華麗に天井から飛び降りて現れたそいつは、ニャンニャン言いながら人間の言葉を器用に操っている。


「夢も未来も失った若者諸君、ようこそ黒猫学園へ。我輩はこの学園で誰よりも権力を握る学園長『ドパッションねこ』と申す者ニャン。以後、我輩を尊敬の眼差しで見るよう心からお願い申し上げるニャン」


 ドパッションねこと名乗る化け猫は、自身を学園長だと説明し、これから行われる脱出ゲームの説明はこの猫で行うという。プレイヤーの半数は、これは黒猫学園からのサプライズなのかと期待している。


「さっそくだけど、ゲームを始める前に簡単なルールのおさらいからまだ話していない詳細まで説明していくから、我輩の話をよーく聞いておくように」


 私語は禁止だと言われている。だけど、つっこみどころ満載のこの状況について、他のプレイヤーの見解を聞いてみたい。誰でも良いからとにかく話をしたくて仕方がなかった。


 語尾にニャン付けするのを忘れる辺り、登場して早々キャラがブレブレ。黒猫学園という学園名のくせして学園長の化け猫が全く黒猫じゃない。ハートの眼帯まで付けてカラフルにも程がある。ついでに猫耳も見当たらないじゃないか。全然可愛くない。


「この場所に集められた諸君は、黒猫学園に入学した時点で脱出ゲームの参加を余儀なくされた選ばれしプレイヤー達ニャン。面接時、三百人近くいた入学希望者のほとんどは、脱出ゲームの説明を受けた時点で辞退している。しかし諸君は、人生の転機がこの学園にあると最後まで信じ、崖っぷちの中に輝く希望を最後まで捨てなかった勇敢な若者達といえよう。我輩も諸君のような生徒を迎え入れられて、心から嬉しく思っているニャン」


 今年から開校した黒猫学園。此処にいる夏男ら全プレイヤーは、この学園の第一期生になる。


 それにしても、三百人のほとんどが脱出ゲーム参加を拒否したのか。倍率は限りなく一倍に近いと聞いていたが、本来は何人まで学園に招き入れるつもりだったのだろう。


「諸君、これの存在は既に把握しているかニャ?」


 これと言って見覚えのある通信機を取り出す化け猫。それは、夏男のポケットに入っていた通信機と全く同じ物だった。


「これは正式には『ペル電子手帳』と言って、プレイヤー同士の連絡を可能にしたり、プレイヤーの情報を見たり出来るんだけど、ちょっと出してくれないかニャ」


 言われた通りにそれぞれがポケットからペル電子手帳を取り出していく。幾つかある項目の中のプロフィール画面に移ってくれと指示される。プロフィール画面を開いてみると、さっき見ていた時とは明らかに違う箇所が確認出来る。


 プレイヤーそれぞれの個人情報の左側に、入学申請時に使った願書用顔写真が載せられている。この食堂で初めて対面したプレイヤー達の素顔が公開された。


「早いところ顔と名前を覚えておけよー。あ、そこ私語禁止だよ」


 話をしていた二人のプレイヤーに優しい口調で注意する化け猫。私語禁止と言われても、この状況で私語がない方が不自然だろう。


「ゲーム開始の前に、これからこのゲームの詳細を説明するニャン。その後、それぞれには枠ミッションをくじ引きでランダムに決めて貰う。ちなみに枠ミッション各種類の内容は基本的に主催者から説明はしないニャ。最初はそれぞれ決められた枠ミッションの内容しか把握出来ない事になるニャ」


 くじ引きで枠ミッションを決めるのか。確か面接時に枠ミッションについて説明があった。内容こそ分からないが、枠ミッション全種類は以下の通りになっている。


 ・裁判枠(6人)

 ・殺人枠(5人)

 ・脱出枠(2人)

 ・裏猫枠(2人)

 ・黒幕枠(2人)

 ・植物枠(1人)

 ・人造枠(1人)

 ・切札枠(1人)


 一人しか選ばれない貴重な枠ミッションも存在する。半数が裁判枠か殺人枠に割り振られる事になるが、問題なのはこの殺人枠というポジション。このワードが不安要素でしかない。


「枠ミッションのクリア条件を見事満たしたら、その時点で脱出成功と認められるニャ。ミッション内容はそれぞれ全く異なるから、このくじ引きは待ったなしで今後の進路を左右させる重要イベだから気を引き締めていけニャン」


 ここでまた先ほど注意された二人のプレイヤーが話し始めてしまう。優しく注意していた化け猫が、今度は一変して怒りをあらわにする。


 何が起きたのか分からない。とにかくこの場所で銃声が鳴り響いた。会話していた女性プレイヤーの右腕から大量の血が溢れ出ている。


「え……?」


 女性の悲鳴と共に流れる赤色の液体を見た夏男は、何が起きたのか理解が追いつかない。



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