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#4 プロフィール


 プレイヤー達の趣味から電話するプレイヤーを絞る筈だったが、思いのほか参考になりそうな情報が細かく記されている為、各個人情報の項目に目移りする。


 プレイヤー達のプロフィールを見る限り、共通点は未成年である事以外に見当たらない。半数は学生のようだが学生と言っても小学生が一人混じっていたりする。


 最年長は十九歳となり、最長は二メートルを超えているプレイヤーもいる。日本人だけとは限らず、明らかに外国名のプレイヤーも一人確認出来る。


 二十人の中で二人が既に一言欄に一言載せている。番号六番の『十河そごう愉快ゆかい』という名の男性は一言で「テスト」と書いていた。


 番号十三番の『北村きたむら玲美れみ』は一言覧に「北村玲美です。まだこのゲームの事よく分かっていないけど、みんなで仲良く脱出出来たら良いなーと思ってます。気軽によろしくね(はあと)」と書かれている。


 全プレイヤーの通信機はそれぞれポケットの中に入っているのだろうか。プレイヤー達の目が覚める時間がバラバラだと考えた場合、この時刻から一言欄にデータを載せるのは何の手掛かりにも繋がらない。


 だが一言を載せているのは二十人いる内のたったの二人。その中でも十河そごうはテストで一言を入力しただけに過ぎない。そう考えると……


「北村とかいう女、行動力あるな」


 脱出ゲームがどのような内容のものなのかほとんど説明を受けていない夏男にとって、行動力のあるプレイヤーは貴重だと考えている。最優先して自分の輪に取り入れるべきであるのは間違いないだろう。


 それと同時に二十日間という時間の中で、この脱出ゲームは恐らく体力も求められる。体力がありそうな二メートル超えの外人プレイヤーにも興味がある。


 更には何故かは分からないが、身長と体重をクエッションマーク三つでデータを上書きしているプレイヤーもいる。このプロフィールはどうやら自分で編集出来るシステムになっているようだ。


 プロフィールを編集したプレイヤーは、編集した項目の右上に編集マークが付けられる。一人のプレイヤーは既に身長と体重を編集しているが、他のプレイヤーに編集マークは見当たらない。


「何で身長と体重を非公開にするんだろ。考えなしにいじってみたのか、それとも単純に体重を他のプレイヤーに見られたくないのか」


 編集者は女性だ。体重を隠そうとする気持ちも分からなくはない。が、にしても行動するのが早過ぎる。何となく引っ掛かるけど、今はこのプレイヤーと直接会ってみるまでスルーで良い。


 考えている時間が勿体無い。一人しか電話が出来ない訳じゃないんだ。


 通信障害はないのか、メッセージは本当にプレイヤーに送られているのか、通話が繋がる時間はどのくらいなのか、他にも調べるべき事は沢山ある。


 まずは北村きたむら玲美れみにメッセージを送り、メッセージを待っている間に他のプレイヤーに電話をしてみる。そうする事により、メッセージを待つ時間を無駄にしない上に通話状態の確認も出来る。


 突然メッセージを送るのも気が引けるので、北村にメッセージを送った経緯と挨拶を混ぜ合わせて「プロフィールの一言、見ました。年齢も近いので仲良くしていただけたら嬉しいです。神崎夏男」と送る。


 次に電話をするプレイヤーだが、体力がありそうなプレイヤーを望むが、外人プレイヤーでは言語の問題で会話が成立しないかもしれないと考えた夏男は彼をスルー。


 先程一言欄にテストと一言入力していた十河そごう愉快ゆかいに電話を掛けてみる事にした。彼は夏男の一つ下の十七歳学生で、趣味と特技欄にバスケと書いてある。運動しているのはデカい。


 電話ボタンをタップして十河に電話を掛ける。その間、まだ調べていない小型の冷蔵庫を開け、中を確認する。中には五百ミリリットルの水が一本入っているだけで、それを手に取り開封する。


 通信機から呼出音が鳴り響く。いきなり知らない通信機から電話がくるんだ。着信音に驚いて腰が抜けているのかもしれない。


 通話に中々出ない。むしろ夏男の電話を取ろうか迷っているのかもしれない。


「もしもし」


 十河が電話に出た。音声は正常。通信自体も問題はないようだ。しかし問題なのはここから。何を話すのか一切決めていなかった夏男は噛み噛みで電話対応をする。


「十河くんだね。俺の名前は神崎夏男。君と同じ黒猫学園で脱出ゲームに参加しているプレイヤーだよ」


「あ、どうもわざわざご丁寧に」


「ごめん、いきなりでびっくりしたよね。通話がどんな感じなのか試してみたくてさ」


「いいよ別に。俺もどんなもんなのか試してみたかったし」


「そ、そうか。ところでゲームってもう始まってるのかな。主催者から何の指示もなくてどうしたら良いのか分からないんだ」


「俺も何も聞いてない」


「そうか。とりあえず部屋にいれば良いんだよな?」


 十河に部屋にいれば良いかと尋ねてみると、何を思ったのか彼が黙り込んでしまう。電波が悪いのかも知れないと思った夏男は、何度か「もしもし」と尋ねる。


「聞こえてるよ」


「な、何だよ。聞こえてるんなら返事くらいしろよ」


「部屋で待機する必要はないよ。俺もう部屋の外にいるし」


 思わず声を上げて驚いてしまう。十河は既にマイルームの外に出ているらしい。


 マイルームの外に出ても特に問題はないと話す十河。逆に何で部屋から動かないんだと指摘を受け、夏男も試しに部屋の外に出てみたらと提案される。



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