表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

#3 ペル電子手帳


 DVDの内容自体は理解出来るが、何故これが部屋に置いてあったのか理解出来ない内容のものだった。そこには自分自身が映し出されていた。


 何故か自分が脱出ゲームに参加する際に訪問した「黒猫学園」と呼ばれる学園で初めての面接を行っている自分の映像。


 椅子に座り、淡々と面接官の質問に答えている自分。この映像を舞台の部屋に残すという事は、面接内容に何か直接的な意味があるのだろうか。


 面接時は簡単な質問と自己紹介、そして今回行う脱出ゲームの簡単なルール説明が行われた。ルールのおさらいをしておけという事なのだろうか。


 確かにルールの中でも分からない話は幾つかあった。だがその疑問は質問として面接官に聞いてみたが、質問は一切受け付けないと言われて跳ね除けられた。


 ルールの中で生存者という単語がよく出ていたが、具体的にプレイヤーはどのようにして命を懸けるのか。ゲームオーバーになったらどうなるのか。枠ミッションの中に含まれている殺人枠とは一体何をするのか。


 まさかプレイヤーが他の人を殺せというミッション内容ではないと思うが、今のところ殺人枠というワードが不安要素でしかない。


 そもそもネットの広告で見つけたこの脱出ゲームの押し売り文句は「人生を最初からやり直す」であったが、それは脱出出来たらの話なのだろうか。


 ゲーム中に細かい説明があると思うが、不安要素は幾つも転がっている。それでも人生をやり直したいから此処に居る訳だが、それは考えが甘かったのかもしれない。


 ゲーム会場まで気絶させられ、目を覚ました部屋が自身のマイルームだと事前に説明はあったが、他のプレイヤーも気絶させられて此処まで運ばれているのだろうか。


「考えるだけ無駄だ。ゲーム開始の指示を待とう」


 分からない事は沢山あるが、もう此処まで来てしまったんだ。引き返し様がない。不安や恐怖に心が支配されてしまっては、それこそ今後のゲームに支障が生じる。


「冷静に、冷静にだ。このDVDは面接以外に何か隠されているかもしれない。最後まで流しておこう。まずはゴキブリだ」


 もしかしたらゲームは目を覚ました瞬間から始まっているのかもしれない。何の説明もなかったが、今は時間を無駄に使う方が危険だ。ゴキ退治の報酬を狙いつつ、部屋を探索してマイルームの全てを把握しておく必要がある。


 立ち上がった瞬間、自身のポケットに違和感を感じた。右ポケットに何か入っている。


「何だこれ。携帯電話か?」


 ポケットの中には、画面を指先で叩いて反応するタップ式通信機が入っていた。DVDの内容に変化がないかを確認しつつ通信機を操作してみる。左手に持つゴキジェットは一旦テーブルに置いておく。


 最初の画面は「プロフィール」「メッセージ」「電話」「ルール」「メモ」「カメラ」「音声レコーダー」「時計」「電卓」「QRコードスキャン」の十項目が確認出来る。


 時計や電卓、音声レコーダー等はどのような機能なのかおおよそ見当がつく。ルールの説明にもあったが、プレイヤー同士はこの機械を使って連絡を取り合う事が可能になる。


 まずはプロフィールをタップして内容を確認。そこには全プレイヤー二十人の簡単なプロフィールが並べられている。それぞれのプレイヤーをタップすると、そこから電話やメッセージが直接選択出来るようになっているみたいだ。


 次にメッセージを開いてみたが、メッセージは一つも届いてなかった。ルールをタップしてみるが、面接の時に説明があった簡単な内容のルールが並べて説明されているだけだった。


「まずは誰かに連絡してみるか」


 まずは電話機能やメッセージ機能がどのようなものなのか試す為、他のプレイヤーと通信機を通して接触してみる事にした。問題なのは、どのプレイヤーと接触するかになるのだが。


 一人一人の簡単なプロフィールを確認してみる。名前、年齢、性別、身長、体重、職業、趣味、特技、一言と続いている。一言覧は、ほとんどのプレイヤーが空白になっており、恐らくこれは自身で一言を入力してデータが更新されるシステムであろう。


 プレイヤーそれぞれには番号が割り振られ、夏男の番号は一番下の二十番になっていた。


 じっくり見ている時間があるかどうかも分からないのでそれぞれの趣味からチェックし、自分と気の合いそうなプレイヤーから探してみる事にした。


 上手くいけば電話やメッセージを通じて、プレイヤーと手を組む事だって出来るかもしれない。二十人いるんだ。一人くらい気の合う奴はいるだろう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ