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コロシタノダレ ~黒猫学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅠ― 「切札枠と舞踏人形」
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#17 舞踏人形


 午前九時七分。食堂に集まった夏男らは、二時間以上を費やして今後のプランについて話し合った。だが、それらしい決め事が出来ないまま分担して建物内を探索する事で一致した。


 牧山まきやま桜咲さき。派手な格好に人を睨んだような目つきで誤解を受けやすい印象ではあるが、話してみると真面目で頼れるプレイヤーだと分かった。彼女には体育館側を調べてもらい、この建物から抜け出せそうな場所を探してもらう。


 北村きたむら玲美れみ。一人にさせると手に負えないレベルまで暴走する可能性を秘めている。メッセージ機能で彼女を何とか理解しようと繋がっているが、引き続き彼女との距離感を考えながら様子を見ておく。彼女には俺と行動を共にしてもらう。


 三野みの大海たいせい。合気道を習っている上に達人クラスと意外性のある小学生。子供だと思って甘く見てはいけない。作戦会議ですっかり牧山に懐いた様子なので、彼女と行動を共にしてもらう。


 新島にいじま悠平ゆうへい。彼とは枠ミッションのくじ引きで嫌な出会い方をしてしまったが、印象的には割と良い。実に人間らしく迷って悩んで間違えて、それでも前へ進もうと歩き出す姿が好印象だ。彼には三階を調べてもらう。


 熊耳くまがみはるか。彼女に関しては何かよく分からない。ただの天然なのか、感情的になりやすいのか、天然を超えた大馬鹿者なのか。どちらにしても暴力的なのに変わりはない。彼女には新島さんを付けておいた。


「デンデン……あの赤髪のクソはどうでも良いや。勝手にしろ」


「んん。何か言った?」


「あ、いや、何でもない」


 そして北村と俺の隣にいるこいつ。銀髪ボサボサ男の名は「野螻のけらゆい」。夜時間に眠れなかったのか、作戦会議中ずっと寝ていたプレイヤー。ついて来るからとりあえず行動を共にしているといった感じ。


「皆で分担して外に出られる場所を探しているから君も協力してくれ」


「良いよ。えっと、君が北村玲美ちゃん、君が神崎夏男くんで良かったかな?」


「ああ」


「僕の事はケラって呼んで良いよ。その方が覚えやすいでしょう?」


「分かった。よろしくなケラ」


 夏男と北村は二階を調べる事になっている。ケラも含めた三人で分担してそれぞれの部屋を調べてみる事にした。二階には空き教室が三つ。後は「娯楽室」「美術室」「物理室」「物理準備室」「図書室」がある。物理室と物理準備室は部屋同士が繋がっている。


 夏男がまず最初に調べた娯楽室にはダーツやビリヤード、卓球台やスロットなどが置いてある。一番驚いたのは、娯楽室に置いてある自販機が無料で飲み放題になっていた事だ。


 リンゴジュースを手に入れる。娯楽室にあるものは全てゲーム内通貨を必要としないと説明書きがある。無料で遊び放題飲み放題という訳か。随分と親切にしてくれるな。


「他に気になるところはなしっと。次は隣の美術室に行ってみるか」


 先に北村が美術室を調べていたが、既に隣の物理室へ移動したようだ。ケラは図書室にいる。夏男は北村が調べた美術室を再度調べてみる事にした。


 室内の奥には美術準備室が設けられている。絵の具や筆、黒板、机、椅子が確認出来る。その他にはデッサン用石膏像の首像が六体も置かれている。


 何よりもこの美術室で一番目につくのは、部屋の中央奥にある椅子に置かれた舞踏人形だ。ピンクの友禅と朱赤の金襴地をとりあわせた衣裳。染めの美しい友禅は日本の雅を、煌びやかな金襴の華やかさで演出している。


 人形の大きさは150cm位だろうか。まずこの大きさに驚いた。本当に生きた人間が座っているみたいだ。次に驚いたのがその人形の体温だ。触ってみると、わずかだが体温があるのを確認。


「すごいなこれ。一瞬、北村が座ってると思った。後ろから見たら人にしか見えないくらい生々しいぞコレ。それに重さも生きた人間が再現されているみたいだ。何でこんな物が美術室に……」


「あらー可愛いお人形。どれどれってうわ! これ髪の毛まで人間みたいだよー?」


「脅かすなよケラ。いきなり現れやがって」


「神崎くん。この娘にキスしてみてよ。もしかしたら愛の力で動き出すかもしれないよ?」


「ふざけんなよお前がやれよ」


「本当に生きた人形みたいだよねー」


 北村まで美術室に戻って来た。人間にしか見えない舞踏人形の生々しい姿に三人は感心していた。それにしてもどうして美術室にこんなでっかい人形が置いてあるのだろう。



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