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#1 マイルーム


 午後九時。見慣れない部屋で目を覚ます。部屋が明るい。目がぼやけていてよく見えない。


 電気の点いた部屋では一切眠る事が出来ない「神崎(かんざき)夏男(なつお)」は、初夜の目覚めに違和感を覚えていた。


 目を開け、まず視界に飛び込んできたのは知らないおじさんが表紙になっているポスター。それが天井に貼られていた。そのポスターに黒ペンで「男は前だけを向いて走れ」と書かれていた。


 セロハンテープで雑に貼られたそのポスターの興味は数秒で消え、次に自分が眠っていたベッドの横に置いてあるテーブルに目をやる。テーブルの上に一枚の手紙が置いてある。


 ゆっくり身体を起こして部屋全体を見渡してみる。全体的に赤色でまとめられたカーペットが敷れ、アニマル模様がちらほら確認出来る。


 部屋の隅に小さなタンスがあり、その上に水と赤色の花が入った花瓶が置いてある。壁紙が白色でまとめられていて、床に敷いてあるカーペットと花が目立つ。


 花は色によって人のメンタル面に働き掛ける効果があるようで、赤色はやる気や意欲を促す効果がある。本気でゲームに挑めという簡単なメッセージでも込められているのだろうか。


「此処は黒猫学園で合ってるんだよな。確かゲームが始まる数時間前、用意された部屋で眠らされるって聞いたけど、此処がそのマイルームなのか?」


 時計が取り付けられている。この時計の現在時刻は午後九時七分。眠らされた日の記憶が曖昧で、どのくらいこの部屋で寝ていたのか分からない。


 刀が納まっていない鞘が壁に幾つも飾られている。この部屋の何処かに刀が隠されているのだろうか。


 様々なジャンルの本が並べられた本棚が置かれている。最初に目に止まったのは「宇宙は異世界へと続く」というタイトルの分厚い本。


「本か。案外、こういう所にヒントが隠されていたりするんだよな」


 小型のテレビが部屋の中央に置かれた黒色のソファの正面に置いてある。DVDプレーヤーも一緒に置かれていて、機器の上に傷だらけのDVDが裏面で置いてある。後でDVDの内容を確認してみるとする。


  部屋の奥には洗面所やトイレがあるみたいだが、風呂場は用意されていないようだ。この建物に銭湯でも設けられているのだろうか。


 それに洗濯機も見当たらない。服と食料と水は毎日支給されるというが、洗濯してまた同じ服を使う事は出来ないだろうか。


 夏男は新しい服が苦手だったりする。新しい服を着ると、汚してはいけないという神経質な性格で気に病む場合を考えているからだ。なかなか珍しい症状と思えるが、夏男にとっては睡眠に関わる問題なので死活問題と言える。


 トイレと洗面所がどんな感じなのか確認してみる。あまり綺麗とは言えない床。シャンプー、ボディソープ、石鹸、歯磨き粉、歯ブラシが未開封の状態で置いてある。


 何故かどこにも繋がっていない新品のガスコンロが洗面所奥の脇に隠れて置いてあった。何でこんな所に置いてあるんだろうか……


 洗面所にある鏡で自分の寝癖を確認。金髪の頭が爆発して人の姿をしたライオンみたいだ。洗面所入り口に満タンのゴキジェットが二本置かれていた。置いてあるのに気付かず蹴っ飛ばしてしまう。


「ゴキジェットって。しかも二本も」


 引き返して室内を見渡す。不自然に部屋の入り口に何かが入ったビニール袋の存在に気付く。


 ビニール袋の中にはリンゴやオレンジ、さくらんぼ三種類の果物がそのまま入れられていた。ゲーム開始前夜から今日の晩飯はこれだけだなんて言い出さないだろうな。


 入り口のドアを確認する。横にスライドして鍵を解除するタイプのドアがあり、その上には電気が通った精密機器が取り付けられている。


「電動式か」


 投函口を開いて中を覗いてみる。次にドアの間に隙間がないか確認している。隙間はない。ドアスコープで外の様子を確認してみるが、正面に白い壁が見えるだけで他に何も見当たらない。


 一通り室内を見回った夏男は、さっそくテーブルに置かれた手紙を読んでみる事にした。主催者側が残した手紙だろう。赤い封筒に猫がピエロメイク化してるシールが貼り付けられている。


「何か緊張してきたな……」



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