04 説明
レンセは畳んだ制服を黒ローブ、イルハダルのメンバーの一人へと渡して部屋を出た。
部屋の外も、壁、床、天井……全てが鉄で出来ている。どうやら最初の部屋だけが鉄に覆われていたわけではないようだ。
鉄で出来た廊下は青白く発光する不思議な石で照らされており、ファンタジーな異世界と言うより、SFじみた印象を与えていた。
その廊下でレンセは新しい服をもらう。イルハダルのメンバーが着ているのと同じ物だ。その黒いローブだけをレンセは裸の上から被る。
その後先に出ていた生徒と共に、最初の部屋よりさらに広い部屋へと案内された。
次は何が起きるのかと生徒達全員が恐怖している。
だがそこでなされたのはここでの生活の説明であった。
最後の生徒と共にやってきたボコラムが生徒達へと説明を始める。
「シュダーディ様との謁見は明日行うことにする。なにせ貴様らは……ひどく匂うからな。その小便にまみれた体を洗い、身を清めた上でシュダーディ様とは引き合わせる。それと、全員今から配る薬を飲め。これは魔法が使えるようになる薬液だ。もっとも……この世界の者なら魔法は多かれ少なかれ誰にでも使えるものだがな」
ボコラムの説明にあわせて、生徒達の前に水瓶と小さなコップが回される。水瓶からコップへと真っ赤な液体が注がれ、ボコラム達の監視の中、一人ずつその液体を飲まされた。
全員が薬液を飲んだのを確認すると、ボコラムが再び話を進める。
「その薬液が全身を巡り、一晩も眠れば明日には力に目覚めているはずだ。どんな力に目覚めるかは各自で異なる。その辺りについては、シュダーディ様との謁見の際に説明する。俺からの話は以上だな。後は代わりの者に説明させる」
そう言ってボコラムは部屋の奥へと去って行った。
その後の説明は、イルハダルのメンバーの中でも若い男が行った。
説明の内容は、ここでの暮らしについての物である。
召喚された生徒達には一人ずつに個室があてがわれること。食事も三食出るということ。この建物には大浴場も用意されていることなどが説明された。
そして全員今日中に風呂に入って、指導者シュダーディとの謁見の前に、身を清めるようにと言い渡される。
謁見まで終われば戦闘訓練なども行われるが、その説明は翌日されるとイルハダルの若い男は語った。
今日はやるべきことももうないので、この後は夜まで自由にしてよいと生徒達は伝えられる。
ただし、しばらくすれば薬の影響で頭痛がしてくるはずなので、痛みが始まったら大人しく寝るようにと若いイルハダルメンバーは語った。
その後各自の部屋へと案内され、生徒達が立ち入ってよい区画などについても説明される。
ここまで説明した後で、イルハダルの若い男は去っていった。
こうして意外なほどあっさりと、レンセ達はイルハダルの監視から解放される。
薬液を飲まされた大広間の中で、生徒達は緊張から解放され、全員その場に座り込んだ。
レンセも精神的に疲れており、冷たい鉄の床へと腰を下ろす。もちろん隣には彩亜も座っており、向かいには当然のように芹も座り込んでいた。
三人とも着ているのは黒のローブ一枚のみ。下着もつけていないため彩亜のFカップの胸がその大きさを主張していた。Dカップの芹の胸も、整った輪郭が普段よりもあらわとなっている。
そのためレンセは目のやり場に困りながらも、少しだけ元気になってしまうのだった。
「渚のことは残念だが、ひとまず無事に解放されたな」
最初に口を開いたのは芹である。
「うん……怖かったけど、解放されて少し拍子抜け」
彩亜は困惑した表情でそう言った。
「安心するのはまだ早いけど、最悪の事態にならなくて良かったよ」
レンセも油断こそしてはいないが、ほっとした表情でそう答えた。
三人の間に、しばしの沈黙が訪れる。
その沈黙を破ったのも芹だった。
「それで、二人はこの後どうする?」
「僕は少し頭を整理したいかな。今が何時か分からないけど、部屋に行って色々考えてみたいと思う」
「……わたしはレンセと一緒にいたい。……レンセが邪魔じゃなければ」
レンセと彩亜の考えを聞いて、芹が提案してくる。
「良ければだが、私もレンセの部屋にお邪魔して良いだろうか? 考えをまとめるにも、一人で考えるより相談出来る相手がいた方が良いだろう?」
「いいけど、芹さんの相談相手は僕達でいいの?」
レンセが答えると、芹は広間にいる生徒達の顔を見回した。そして落胆した表情で、再びレンセ達の方へと向き直る。
「他の者は駄目だ。全員、憔悴しきった顔をしている。学級委員長のナイトでさえな。ナイトは副委員長の渚と仲が良かった。彼女が殺されてショックが大きいのだろう。他の者も同様だ。クラスメイトを目の前で殺され、さらに全裸になることまで強要された。ショックでみな心が折れている。未だに正気を保っているのはお前達二人だけだ。……さすがはレンセに彩亜といったところか」
「僕がまだ正気でいられているなら、それは彩亜のおかげだよ。彩亜がいるから、僕はまだ心がくじけずにいられている。芹さんの方こそ周りも冷静に見れててすごいよ」
「私がこうして正気でいるのも、半分はお前達のおかげだな。何と言ってもお前ら、みなが恐怖で震える中裸で抱き合ってキスしていたからな。目の前であんなものを見せられては恐怖も吹き飛ぶというものだろう」
「あ、あれはそのっ……」
「そう照れるな。お前達二人が付き合っていることなど、クラスの全員が分かっている。いまさら恥ずかしがることでもあるまい?」
「えっ、付き合っ……て、え? まだだよ! 僕と彩亜は幼馴染で、まだ付き合ってるとかそういうのじゃ……」
レンセは顔を真っ赤にして慌てている。事実、レンセと彩亜は付き合ってはいなかった。ただし、『まだ』などと言う時点でレンセの思いは透けて見えるが。
だが付き合っていないと言うレンセの言葉に、芹は驚くと同時に少し嬉しそうな顔をする。
「てっきり二人は付き合っているものとばかり思っていたのだが。なるほど、そうなのか。……ちなみに私もまだ付き合っている相手はいないぞ」
何気に彼氏がいないことをアピールする芹である。
「……でもレンセはわたしにキスしてくれた」
芹の様子から何かを感じ取ったのか、すかさず彩亜が牽制を入れた。
空気が変な方向に行こうとするのを感じ取り、レンセが二人へと話かける。
「とにかくまずは、僕の部屋までみんなで行こうよ」
そうしてレンセは二人の美少女を連れて大広間を後にした。