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至高の黄金球使い ~旧版~  作者: 濃縮原液
第一章 囚われの空中要塞
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02 奴隷召喚

 生徒達の様子を眺め、ボコラムは邪悪な笑みを浮かべて語り始めた。


「こんな身寄りもない異世界へと召喚されながら、なぜ自分達の身の安全が保障されると頭から思えるのか。今回の異世界人は本当に……救いようのない馬鹿ばかりだな。都合が良すぎて俺は笑いをこらえるのに苦労したぞ。ククク……ハーハッハッハッ!」


 困惑する生徒達の様子を見て、ボコラムはこらえきれずに笑い始めた。


「ハハハッ。よく聞け愚かなガキ共よ! もう一度言うぞ。貴様らは全員我らの奴隷! いや……我らを導いて下さる大魔族、アバカル・シュダーディ様のしもべとなるのだ。光栄に思えよ。シュダーディ様はこの世界で最も偉大なる魔族の頂点。程なく神の塔さえ攻略し、シュダーディ様がこの世界の新たなる神となられる日も近いだろう。我々イルハダルはそのために活動する組織だ。そして貴様らは、神の塔を攻略するための優秀な駒として、こうして我々に召喚されたのだ」


「う、うそだぁっ! 嘘だ嘘だ! そんなの全部でたらめだぁーー!」


 小太郎が髪を振り乱して叫んでいた。他の生徒達は、話についていけずに茫然としている。



 そんな中、レンセは最悪の予想が当たってしまったと嘆いていた。


 異世界召喚物のライトノベル。そういう類の本ならレンセもいくつか読んだことがある。だがだからこそレンセは、このような事態を危惧していた。


 そもそもこれが勇者の召喚であるのなら、召喚先が牢獄みたいな鉄の部屋であるはずがないのだ。迎えにやってくる者達も、こんな怪しい黒ローブの集団などではなく、王様やその部下の騎士などであるはずだ。


 だからレンセは初めから彼らを警戒し、この状況を打破するすべを考えていた。しかし、情報が圧倒的に足りない。そして恐らく――実力も足りてはいないだろう。


 もし自分達にこの世界の者より優れた能力があったとしても、恐らくそれは成長することによって得られる物のはずだ。つまり召喚されたばかりの現時点では、ただの高校生であるレンセ達に彼らへと抗うすべはない。


 この結論へと至るにつれ、レンセは自らのくちびるを強く噛みしめていた。


「レンセ……」


「これは……大変なことになりそうだな」


 レンセの両側に立つ彩亜と芹も、共に不安げな表情を浮かべていた。


 こうして生徒達全員が絶望の淵へと沈む中、ボコラムがさらなる絶望へと生徒達を突き落とす。


 ボコラムは下卑た笑みを浮かべて、生徒達にこう命令した。


「ではこれより貴様らをこの部屋から出す。だがその前に、貴様らには今着ている服を脱いでもらおう。その後我々の着るこのローブと同じものを羽織ってもらう。これからシュダーディ様のしもべとなる貴様らに、故郷を思い出させるような物など一切不要だからな。荷物はこちらで処分する。では……全員服を脱げ。その後二列に並んで担当の者に荷物を全て差し出すのだ」


 ボコラムの言葉に、生徒達全員が戦慄した。特に女子達の顔が恐怖に震えていく。多くの人間がひしめくこの中で、女子を含む生徒全員に全裸になれとボコラムは告げていた。


 二十八名の生徒達は、みんな肩を震わせ怯えている。


 だが一人の女子が声をあげた。


「この中には女の子もたくさんいるんですよ! せめて男女を別にするとか、そういう配慮はないんですか!」


 少女の名は池口いけぐち なぎさ。クラスの副委員長である。だが彼女の必死の訴えに対し、ボコラムは冷ややかに答えた。


「だから、二列に並べと言っている。男女別がいいならそのように並べ。だがそこまでだ。貴様らが持ち込んだ異世界の異物を確実に回収するために、この部屋からは全裸のままで出てもらう。新しい服は外の者から受け取れ。以上だ」


 冷たく、ボコラムはそう言い放った。だがその非情な態度に渚がさらに食ってかかる。


「そんなの男子からだって丸見えじゃない! それにあなた達も全員男でしょ! い、いやらしいっ! あんた達、ただ女子高生の裸が見たいだけじゃないの! 変態! 変態変態! このっ――変態犯罪者共!」


 叫び声をあげながら、渚はついにボコラムへと掴みかかった。渚はボコラムの頬へと右手で思い切りビンタをぶつけようとする。だが――


 ――池口 渚の右腕が、宙を舞った。


「初級魔法、《風の刃(ウインドカッター)》だ。丁度いい。貴様らにこの世界の魔法を少し見せてやろう」


「やめろぉぉーーーー!!」


 学級委員長のナイトが咄嗟に叫び声をあげる。だがボコラムはナイトの叫びを無視して再び魔法を詠唱した。ボコラムが掲げる右腕に、緑色の淡い光が収束する。


「あらかじめ言っておくが、今の貴様らはまだ魔法を使えん。この女の死に様を目に焼き付けて、以後は我々の指示にきちんと従え。ではいくぞ。切り裂け、《風の刃(ウインドカッター)》」


「――っあ」


 手首から先のない右腕を必死に抑え、目を見開いて座り込んでいた池口 渚。その体が、縦真っ二つに両断された。頭の先から股の下まで綺麗に切り離された渚の体が、左右に開いて地面へと崩れ落ちる。


 そして両断された渚の体から、おびただしい量の血が溢れ出した。


「イ、イヤ……」

「渚ちゃんっ!」

「イヤァァアアアアアアーーーー!!」


 壁、床、天井。その全てを鉄に囲まれた部屋の中は、一瞬にして生徒達の絶叫で埋め尽くされる。


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