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王子様と自殺志願のかぐや姫  作者: 吹雪
第二章 首吊り希望
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第五話 俺と彼女の呼び名

「おはよう、波城」

「……(ペコリ)」


 彼女の自殺未遂騒動があった翌日の朝。俺は校門の前で彼女を見つけ、軽く挨拶を交わした。


 昨日のあれがあったから、帰宅後の彼女が物凄く心配だったのだが、どうやらそれは杞憂に終わったようだ。


「無事で何よりだな」

「……」


 昨日はあれだけしゃべったくせに、人目がある所では黙りを決めこむつもりらしい。まぁそれでも無視されないだけまだマシだな。


「〇〇さん」

「……へ?」


 ところが突然、彼女は何の前触れもなく俺の名前を呼んできた。余りにも唐突だったものだから、思わず間の抜けた声を出してしまった。というか、黙り決めこむつもりじゃなかったのか?


「勘違いしないで下さいね。私、まだ諦めてませんから」


 何を。って自殺に決まってるけどさ。何でそんなに死にたいんだか。


 あ、そういえば俺、彼女に言いたいことがあったんだった。


「なぁ、波城……頼むからさ、俺のこと〇〇って呼ぶの止めてくれねーか?」

「……何が気にくわないんですか? 普通に名字で呼んでるじゃないですか」


 確かに〇〇というのは俺の名字だ。なぜ〇〇表記なのかというのは、出来れば察してくれ。俺は自分の名字が嫌いなんだ。


 彼女は訝しげに俺を見てくるが、俺はそれだけは譲りたくない。そしてあわよくば、彼女には下の名前で呼んでもらいたい。


「俺は名字が嫌いなんだよ。だから名「では、"王子"さん」……え」


 俺は一瞬己の耳を疑った。今、彼女は何て言った……?


「そこまで言うのなら、これから〇〇さんのことは"王子"さんと呼ぶことにします。それならいいでしょう?」

「良くねぇよ」


 何が嬉しくて"王子"なんて呼ばれなきゃいけねぇんだよ。……ん? 待てよ? そもそもその呼び名は……。


「何で俺の中学時代のあだ名を知ってんだよ!?」

「なぜでしょう」

「答えになってねー!!」


 俺の渾身の突っ込みは、空振りに終わりそうだった。


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