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第6話〜10話

 第6話

              リアル初対面


 幸村一星は、ロビンとの待ち合わせ場所で約束の時間よりも早めに到着して待機していた。

ここは待ち合わせ場所としてはメジャーな場所で、他にも数人の男や女が待ち人来たらずで、退屈そうにたたずんでいた。

なにせ、ロビンの顔は知らない。チャットでも顔写真の1枚でさえ見せてくれなかった。

逆に一星は自分の写真をロビンに数枚転送している。

 つまり彼女の方から一星を見つけて話しかけてくれるまではどうしようもないのだ。


 近くを女の子が通るたび、この子じゃないかと食い入るように見つめてしまう一星。

チラッと目が合った子がいた。首を少しかしげている。


 あの子かな。。。?


一星はニコッと微笑んでみる。

すると、とたんにその子に『はぁ?』みたいな顔をされてプイッとよそ見をされた。


 ヤバ・・人違いか。。。;^_^A


 どうやらナンパ師だと思われたのかもしれない。

一星は少し反省してあまり辺りをジロジロ見ないことにした。


 しばらくして、同じ場所で待機していた一人の女性からいきなり話かけられた。

「あのぅ・・」

「え・・?」

もしやこの人がロビン?と一星はとっさに思う。

「失礼ですけど。。」

「はい。俺がポンスケですけど。」

「はぁ?」

「はぁってその・・俺はポンスケで。。君はロビンじゃ?」

「ち、違いますけど(?_?)ただ、あなたのTシャツに値札がついてるもんだから気になって。」

「Σ(ノ°▽°)ノハウッ!値札がっ!!」

 普段、着るものに興味のないズボラな一星は、色のすすけたような何年も着ている服しか持っていなかったので、ここに来る前にユニクロで780円のTシャツを買い、試着室でそのまま着替えて来たのだった。

「お、教えてくれてありがとうございます。(^□^;A」

「いえ別に・・あの、ポンスケって本名なんですか?」

「え?とんでもない。これはハンドルネームでして。。」

「あぁ・・そうだったんですかぁ。クスクス・・」


 この知らない女性に忍び笑いされて赤っ恥をかかされながらも、一星は再び冷静さを取り戻し、ロビンを待っていた。

だが内心は当然のごとく鼓動が高鳴り、息苦しさまで感じるほどになっていた。


 それにしても今どき携帯も持ってないなんて。。ロビンの家はよっぽど貧乏なんだろうか?


 こんなちょっとした疑問を頭に浮かべているとき、後方からいきなり呼びかけられた。

「ポンスケさん・・ですか?」


 キタ━━━(((((゜(゜(゜(((゜゜∀∀゜゜)))゜)゜)゜)))))━━━!!!!!! 


 当然、一星は彼女がロビンの身代わり、水口和代であることなど知らない。。。



 第7話

            第1印象

            

 一星から見たロビンの印象は、思ったより小柄だということだった。

それほど派手さもないが、かと言って引っ込み思案そうにも見えない。

初対面でもしっかりと目をそらさずに一星と顔を合わせている。

きっと自己主張もしっかりできる人なのだろう。

特別な美人ではないが、普通に綺麗で清楚な女性だと一星は思った。


「はい、そうです。俺がポンスケです。」

「(*^m^*)フフッ」

「(?_?)え?なんかおかしかった?」

「あ、ごめんなさい。目の前でポンスケって聞くとつい・・」

「あぁ、そっか。リアルでハンドルネームを呼ぶのって妙な感じだもんな。」

「でしょ?」

「そうだねロビン。( ̄m ̄o)プ」

「 (o^-^o) ウフッ。なんか変よね。」

「じゃあリアルでは本名で呼び合う?」


 こう聞かれて和代はハッとした。

そういえば、ロビンの本名なんて全然聞いてない。でも自分の本名を教えるわけにもいかない。

「そうねぇ・・どうしようかな。。」

和代の中で一気に緊張が高まったが、できるだけ相手に悟られないように冷静さを装った。

「それはもっとお互い慣れてからにしない?急に呼び方変えちゃうとなんかよそよそしい感じしない?」

「まぁそれもそうかもしれないな。。じゃあ、しばらくはこのまんまということで。」

「うん。」

 和代は内心胸を撫で下ろしていた。

『ε- (^、^; ふぅ。最初からこれじゃまだまだ苦難の道がありそうだわ。。ホントにこんなことしてていいのかなアタシ。』


 一方、一星にしてみれば、この少しの会話で緊張が和らいだ気がした。

『よし、とりあえず嫌な顔もされてないし、お互い少し笑えたし、あとは俺がしっかりしなくちゃ。。』

決意も新たに一星は彼女に話しを切り出す。


「ロビン、もう昼だからランチしようよ。」

「うん。そうだね。実は朝食べてないのアタシ。」

 ここで一星は『何か食べたいものある?』とは聞かないと決めていた。

最初は男のリードが肝心だ。素早く主導権を握り、決断力が早い男だということを印象づけなければならない。

「今日もこんなに暑いしさ、冷たいものがいいだろ?」

「うん。そうね。あまり汗はかきたくないかも。。」

「じゃあロビンさ、ざるそばと冷やし中華、どっちが好き?」

「冷製パスタ。。」

「(ノ _ _)ノコケッ!!」

「(*^.^*)エヘッ。ごめんね。ボケちゃったw」

「いやいや、へーきへーき。でもパスタは全然思い浮かばなかったよ(^_^;)」

「おそばでいいよアタシ。ヘルシーだし。」

「ほんとに?無理に合わせなくていいんだよ?」

「ううん。ちっとも。」

「よしわかった。じゃ冷たいざるそば食べに行こう!」

「はい!」


 一星は少し不思議に思った。1年間もリアルで会うのをあれほど嫌っていたロビンが、会っていきなりこれだけ親しみやすい話し方をしてくれる。

彼女に何か吹っ切れたものがあるのだろうか?

チャットでの彼女とは伝わってくるイメージが微妙に違っている。

声もわずかにリアルの方が低いように感じる。


 まぁ・・ネットのイメージは俺の固定観念だしな。今が本当の彼女なんだし。。



 和代は一星に対して第1印象から親しみを覚えていた。

顔はジャニーズ系でもおっさんでもなく無難な感じ。でも発する言葉ひとつひとつに優しさがある。


『この人は悪い人じゃない。楽しく付き合えそう。。やっぱりアタシじゃなくロビンが会うべきだったのかも。。』

一星に対する安堵感と同時に、自分がロビンを名乗っている後ろめたさも痛烈に感じていた。

『でも・・・これがロビンの希望なんだし。。仕方ないことなのよね。。』

 こう割り切るしか今の和代にはすべがなかったのである。



   第8話

              ランチdeトーク 


 一星と和代はそば屋のテーブル席に対面して座っていた。

「ホント今日は蒸し暑いなぁ。」

「うん。そうだね。ポンスケ君、すごい汗だよ。」

「ごめん。汗っかきなんだ俺。オヤジみたいで気持ち悪い?」

「ううん。そんなことないよ。人それぞれの体質だもんね。」

「はは・・そうなんだ。それに今日は緊張の汗もプラスしてるしさ。」

「へぇ、そんなふうには見えないよ。アタシの方が手に汗びっしょりかいてるかも。」

「ほんとに?」

「うん。(*^.^*)わからないようにしてただけ。ほら。」

ロビンは両手の平をテーブルに差し出す。

「どれどれ・・」

一星は無造作に彼女の手のひらに自分の手を添えて汗を確かめる。

「ビクッ!?Σ(・"・;)」

いきなり手を触れられた和代に瞬間的な緊張が走る。

一星はそんな和代の表情の変化にハッと気づき、慌てて手を引っ込めた。

「ご、ごめんロビン。。いきなりじゃビックリするよな。」

「(^□^;A い、いいの。気にしないで。男の人に手を触られたのってしばらくなかったから。。」

「そっか。。安心した。警戒されたらどうしようかと思ったよ。」

「ううん。全然。ポンスケ君こそ、そんなに過敏にならなくていいからね。」

「うん。ありがとう。でもホントにいきなりでごめんな。」


 ロビンは待ち合わせ場所で会ったときから目をそらざずに話すし、緊張しているとは言え今もずっとそうだ。

それにこんな恥じらう一面もあると、一星の男心としてはグッとくる。

 逆に上から下までくまなく観察されているような気もするが、自然で明るい話し方に好印象を得た。

「さ、メニュー決めようか。ロビンは何食べたい?」

 二人はメニュー表を片手ずつで持ちながら目を通す。

「えっと・・アタシこれがいい。」

和代は決めたメニューに指をさす。

「(・。・) ほー。冷やしごまだれうどんかぁ。。うまそうだな。」

「でしょ?アタシごま大好きなの。」

「じゃ俺はと・・おっ!!」

 一星の目に留まったのは夏季限定『夏野菜カレーうどん』だった。

「俺、これにしよっかなぁ。。」

「 (o^-^o) ウフッ。じゃあそれで決まりね!すいませ〜ん。注文なんですけどぉ〜」

 店の店員の女性が小走りにテーブルにやって来た。

「ご注文お決まりですね。どうぞ。」

「アタシ言っていい?」

「いいよ。」

「うん。じゃあまず、冷やしごまだれうどん一つ。それと夏野菜カレーうどん・・・あ!!」

「(・ ̄・)...ン?どうしたい?」

「ポンスケ君。これ冷たくないよ?熱熱だよ?いいの?」

「あぁ、そうだけど俺、期間限定に弱いんだよロビン。はは・・」

「その気持ちわかるわw じゃそれでお願いします。」

「はい。ではご注文を繰り返します・・・・」

 

 店員はなぜか笑うのをこらえてたようで、注文を取り終わって俺たちのテーブルから少し離れると、同僚の店員と小声で話し出した。

はっきりとは聞き取れなかったが、かすかに会話の中で『ポンスケとロビン』という言葉が聞こえてきたのは確かだった。

「なぁロビン。店員の前でハンドルネーム言うのはやめよっか?なんか笑われてるようだし(^_^;)」

「そうだね。。うかつだったわ。ごめんなさい。(⌒-⌒;」

「それにしてもさ、俺たちざるそば食べに来たのに結局二人とも別メニューになっちゃったなw」

「あは。そういえばそうなっちゃったねw」


 なごやかなムードの中、ここまでは順調な滑り出しだと二人とも思っていた。

 お互いが好感触だった。

 だが、水口和代にはロビンの身代わりになっていることで、新たな不安も生まれてきた。


 ・・・もしアタシが本当にポンスケ君を本気で好きになってしまったらどうしよう。。。



  第9話

               ひやあせもの


 水口和代は一星とのデートから帰宅して胸を撫で下ろしていた。

 好感触はあったものの、たったひとつだけヘマを犯してしまったのだ。

 もちろん彼に言い訳はした。なるべく自然な形で。

 でも果たして彼は素直に受け流してくれているだろうか。。。

 和代の心に一抹の不安がよぎる。


 「でも、終わったことだし、うじうじ考えてもしょうがないもんね。。」


 一息深呼吸した和代は部屋で飼っているリスのテトに話しかけた。

「テト、寂しくなかった?おなかすいたでしょ?今エサあげるからね。」

 テトはしゃべれないからエサを欲しがっているのかわからないが、和代が近寄って来ると必ずカゴの外側まで顔を出す。

和代にとっては目に入れても痛くない可愛い相棒だった。


 その後、彼女はベッドの上に仰向けにドスンと寝転がり、天井を見据えながら考え込んだ。

「あ〜。。うかつだったなぁ・・・大丈夫だと思うけど。。」


 和代が悩んでいる原因はそば屋の席で起きたほんのささいな出来事だった。

 二人の注文したメニューが来るまでの手持ち無沙汰な時間でのこと。

 どのテーブルにもあらかじめ、浅漬けのような大根ときゅうりの薄切りになった漬物が容器に入って備え付けられている。

 和代はそれを小皿に取り分け一星に差し出した。

「はい、ポンスケさん。」

「あ、ありがとう。これ好きなんだ。」

「そうだったんだ。アタシここ初めてなの。ポンスケさんここの常連さんなの?」

「常連までいかないけど、月1では来るかもね。」

 そう言いながら一星は浅漬けをカリカリと良い音を立てて食べ始めた。

「アタシも食べよっと。」

 和代も自分の小皿からつまんだ浅漬けを口に運ぶ。

「うん。おいしいねこれ。あっさりしてて食感もいい。」

「だろ?いけるんだよけっこう。」

「でもうどんが来るまでにお腹いっぱいにならないでねw」

「はは。そうだよな。ほどほどにしとかないとな<(; ^ ー^) 」


 ここまでの会話は普通だった。だが一星がふと思い出して言った言葉に和代は固まった。

「あれ?そういえばロビンさぁ、大根が大嫌いじゃなかったっけ?」

「Σ('◇'*エェッ!?・・・( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)」

「何驚いてるんだよ?これ大根の漬物だろ?平気なの?」

「あの・・あの・・」

「あぁ。。これカブにも見えるよな。ロビンはこれがカブだと思って食べたんだ?」

 まさに助け舟とはこのことだ。一星が理由を考えてくれるなんて。

「そ、そうなの。。(^□^;A アタシ、カブは大好きだからてっきり。。」

「(@^▽^@)ノあはは。思い込みってすごいよな。俺、黙ってりゃ良かったかな?」

「ううん。いいの。ありがとう。でももう食べない。。」

「そっか。なんか悪いことしちゃったみたいだな。ごめん。」

「そんな謝らないで。もういいの。うどん楽しみにしてるから。」


 もちろん和代本人は大根が嫌いなはずはない。

 学習不足の上、未熟な計画だった。和代もそしてロビン本人も。

 一星に関する情報は、徹底的に叩き込んで来たものの、ロビンに関する情報はほとんど知らされていなかったのだ。

 こうして現在、自分の部屋にいる和代は、ベッドから起き上がりテトに話しかけるようにつぶやいた。

「疑われてないよね?大丈夫だよね?うまくごまかせたよね?帰りにTシャツも買ってあげたんだし。。」

 と言ったところでテトはエサに夢中で答えてはくれない。。



 一方、一星も自宅に戻ってから今日のデートを振り返り、反省点の多いことに悔やんでいた。

 「随分、みっともないとこを見せてしまった。ロビンは笑ってたけど。。内心は幻滅してたのかもしれない。。」

 そう、彼も失態を犯していた。

 注文した『夏季限定・カレーうどん』を食べ終わり、添付されていたナプキンを使っていないのに気づいたときにはすでに遅かった。

 彼の胸の辺り一面は、カレーのルーが飛び散り、散々なTシャツに様変わりしていたのだ。


 Σ(ノ°▽°)ノハウッ!マジかよっ!!


 しかも今日、ここに来るときにユニクロで買ったばかりの780円のTシャツ。

 色も真っ白なものだから飛び散ったカレーの色が見事に反映されている。

「俺ってホント、バカだわ。。(;´д`)トホホ。」

 一星は和代の目を見るのが怖かった。軽蔑の眼差しを浴びせられそうで怖かった。

 だが、彼女の方から意外なセリフを聞かされた。

「(*'‐'*)ウフフ♪それアートだよ。アートだと思えばいいじゃない。」

「ア、アートったって。。(^_^;)」

「そのTシャツの模様に、あと何色か混ぜたら夏祭りみたいだよ(*^m^*)ムフッ」

「ロビン・・・あんた変わった発想してるね。。(⌒-⌒;」

「うん。よく言われるの。」


 取りあえず、無難にデートは済ませたものの、Tシャツは和代に買ってもらうことになった。

カレーの色や匂いが染みたTシャツを着たまま洋服屋になど入れるわけがなかったからだ。

一星は和代にお金を払おうとしたが、彼女が受け取らなかった。


 こうして自宅に戻った一星は、次々頭の中に反省点がたっぷり浮かんで来たのだった。


『やっぱりあのとき、無理にでも金を受け取らせるんだったかなぁ。。』

『行儀の悪い貧乏人に見られたかなぁ。。』

『夏祭りみたいだって・・・あれは皮肉だったのかなぁ。。』

『大根嫌いのことで突っ込み入れすぎたかなぁ。。』

と、そこで一星はふと思った。

「ロビンはあれが本当に大根に見えなかったのかなぁ?あの驚きようはハンパじゃなかったよな。。」

 一星はロビンの顔を思い浮かべながら今日の出来事を振り返る。

 特別な美人ではないが、笑顔がさわやかな清楚な人だと改めて思った。

 だが正直、チャットでのロビンとは少し違和感があった。

 話し方か・・・それとも別な何か・・・


 (゜〇゜;)ハッ!。。。。


 一星はその違和感が何だったのかに気づいた。

 それはロビンが一星に対する呼び方にあった。


 ポンスケさん。。。


 そう、この1年、チャットではポンスケと呼び捨てにされていた一星が、突然今日のデートで『さんづけ』で呼ばれたことにある。


 一体どういうことなのか?リアルでは初対面だから礼儀として丁寧に呼んだだけなのか。。。

 一抹の不安が一星の脳裏をよぎった。



 第10話

                結果報告


 和代はいつものようにパソコンを立ち上げ、ロビンがオンするのを待っていた。

とにかくすぐにポンスケとのデート内容を彼女に報告しなければならなかった。

ポンスケは今夜にでもロビンとチャットで話をするだろう。

その時には当然今日のリアルデートの話が出るのは必至。


 ロビンにちゃんと細かく説明しなきゃ。。。


和代は今日のデートを順を追って思い返していた。

今日は二人で何を食べて、何を話して・・

そしてちょっとしたヘマをしでかしたことも教えておかないとあとで取り返しのつかないことになる。

その他は・・そう、彼の服装や自分の着て行った服装もロビンに教えておかないと。。


 10分くらい経ったころだろうか、ロビンのIDが点灯した。


 「来たっ!」


 すぐさま和代はロビンにPMプライベートメッセージを送る。

すると、間もなくしてロビンから返信が来た。


robin830:ごめん。かずぽんと同時にポンスケからもPM来てるの。

kazupon_v:Σ('◇'*エェッ!?でも彼と今すぐ話すのは危険でしょ?

robin830:うん。だからちょっと彼をごまかすからそのまま待ってて。

kazupon_v:うん。。。


 その後1分ほど過ぎると、ロビンのID状態表示が『入浴中』に変わった。

「なるほどね。さすがロビン (o^-^o) ウフッ」

 そして入浴中などウソっぱちの彼女からすぐにPMが届いた。


robin830:かずぽんお待たせ。ごめんね。

kazupon_v:ううん。でも危なかったね。

robin830:ちょっとね。でも1時間はお風呂に入ってるからって彼に言っておいたからしばらくは大丈夫よ。

kazupon_v:(*^m^*)ムフッ

robin830:(*'‐'*)ウフフフ♪


 和代はロビンに順序よく、待ち合わせから食事に行くまでの経過と、話した内容など、できるだけ綿密に伝えた。

kazupon_v:で、失敗したことは、彼の情報しか知識がなかったことなの。どういうことかわかるでしょ?

robin830:あ・・!そうだったわ。彼が知ってる私のこと、全然教えてなかったよね。。

kazupon_v:そうなの。そこでちょいとヘマしちゃったのよ。

robin830:ど、どんな?

kazupon_v:ロビン、あなた大根食べれないでしょ?

robin830:ウッ!!Σ(・"・;)

kazupon_v:ほらぁ。。アタシさぁ、おそば屋さんの大根の浅漬け、思いっきり食べちゃったわよ。

robin830:Σ|ll( ̄▽ ̄;)||l・・それで・・どうしたの?

kazupon_v:それが意外でね、彼が『カブだと思って食べたんじゃない?』とか聞くから、思わず『実はそうなの』って調子合わせちゃったの。

robin830:あー良かった。。少しホッとしたわ。

kazupon_v:白々しくなかったかな?

robin830:たぶん大丈夫よ。ポンスケはそんなこと深く考えるような人じゃないもん。

kazupon_v:だといいんだけど。。

robin830:あと、変わったことは?

kazupon_v:えと・・アタシね、彼にTシャツ買ってあげたの。カレーうどんの汁が飛び散ってひどかったから。

robin830:ナプキンはなかったの?

kazupon_v:使うの忘れてたみたい。

robin830:(ノ _ _)ノコケッ!!

kazupon_v:でも全体的には楽しいデートだったよ。とてもいい人そうで。

robin830:襲われそうなムードにならなかった?w

kazupon_v:ううん。全然。気さくな人だったよ。いつかロビンが本当に会えたらいいのにね。

robin830:・・・・いいの。。アタシはネットの女だから。

kazupon_v:でも。。。

robin830:あ、それと今気づいたんだけど、かずぽんは彼のこと何て呼んだの?

kazupon_v:ポンスケさん・・・だけど?

robin830:Σ(ノ°▽°)ノハウッ!しまったぁ!

kazupon_v:???

robin830:ごめん。私が悪いの。教えてなかったから。

kazupon_v:ハッ( ̄□ ̄;)!!そういえばロビン、いつも彼のこと呼び捨てだったわよね?

robin830:そうなのよ。。彼は何か言わなかった?

kazupon_v:そのことについては特に何も。。

robin830:そう。。。まぁ、私はチャットで何とか言い訳するからいいわ。安心して。

kazupon_v:うん。。。完璧に他人を演じるのって・・難しいわ。。



 1時間後・・・


ponsuke:風呂入ってさっぱりした?

robin830:うん。気持ち良かったよ。

ponsuke:暑かったもんな。今日のデートは。

robin830:だよねぇ。でも楽しかったよ。今日はありがとうポンスケ。

ponsuke:う、うん。。

 一星は妙な気分だった。今は呼び捨てにされてる。。

もちろん通常はこれでいいのだが、今日のデートでは丁寧に『ポンスケさん』と呼んでくれた。

一星はその理由を聞いてみようかと思いあぐねていた。


 ロビンは一星のちょっとした言葉の間を見逃さなかった。

彼女はその理由をすぐに悟った。


robin830:今日はね、私とても緊張しちゃってたの。家に帰って来て本当の自分に戻ったって感じ。

ponsuke:へぇ。じゃあ昼間のロビンは猫かぶってたのかい?w

robin830:ん〜ん。。ちょっとだけそうかもwいつもより礼儀正しかったかも。

ponsuke:どんなところが?


 予測通りのポンスケの聞き返し。待ってましたと言わんばかりにロビンが言う。

robin830:例えばぁ、今日はポンスケのことを『ポンスケさん』って呼んだでしょう?

ponsuke:あ、あぁ。。実は不思議だと思ってたんだ。

robin830:でしょ?いくらなんでも初対面だし、馴れ馴れしいのも失礼だと思ったしね。

ponsuke:そうだったのか。うん、それなら納得したよ。でもそんなに俺に気を使うなよ。いつものロビンでいいんだからな!

robin830:うん。ありがとう。次からは遠慮しないからね (o^-^o) ウフッ

ponsuke:かまわんかまわん( ̄ー ̄)


 この場は何とか丸くおさまりはしたが、ロビンにしてみてもこれから益々不安がつきまとうことになる。

「これで良かったのかしら。。。本当に。。」

自問自答するロビン。でも彼女の目的のためには何としても一星を繋ぎとめておく必要があった。

誤算だったのは、彼がどうしてもリアルで会いたいと言ってきかなかったことだった。

それさえなければ。。。


 ロビンは自分の置かれている境遇をあらためて痛感し、現在に至るまでの人生を過去から思いめぐらせていた。。


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