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肺炎

−証言−

わたしの娘は今、入院中なんです。

え?何故かって?・・・肺炎です。マイコプラズマ肺炎。

でもなんだか・・・肺炎って医師にとっては面倒くさい病気らしくて・・・。

今回、この事実を知れたけど、知らない人はいっぱいいるんじゃないでしょうか?

 秋が去り、冬がやってきた。

 また間もなく、インフルエンザ患者が増えるだろう。

 医師達は、予防注射を客つりの道具として使っていた。

 そんなときの、ことである。


「先生、熱がまだ下がりません」

 真っ赤な顔をして咳き込む少女。それを心配そうに見つめる母親がいる。

 彼女らと対座しているのは、私営病院の医師である。

「ほうほう」

 医師は少女をまじまじと見て、服をぺろんとめくり、聴診器を押しつけた。

「ん〜〜、やっぱり肺炎にもなっていない。気管支炎にもなっていないよ。風邪だね」

 そう言う医師に、母親はしびれをきらして言い放った。

「でも先生!もう10日目ですよ!まだ38度台の熱ですよ。風邪ってこんなに長引くことはあるんですか?」

「お子さん、どっかに出したでしょ」

 ぐっと医師の顔が母親に迫った。

 母親はたじろぎながらも、強気な口調で

「出したっていっても、熱が少し下がったから、ピアノのレッスンに30分だけ・・・」

 と言ったが、逆にとられてしまった。お得意の「その油断が原因です!」である。

「風邪の薬、出しときますね」

 いつものお別れの言葉が、母親にはいらつきに感じられた。


 病院を出た2人は、車に乗り込もうとした。

 そのときである。

 ふと、感じるのだ。誰かが見ている。母親は感じた。

 くるっと振り向く。誰もいない。気のせいなのか。

 再び正面を見る。

「・・・・・・?」

 目の前には、白い、笑い顔のマスクをかぶった人が立っていた。

 身長や体つきから見て、男だろう。

 その男は、じっと2人を見つめている。

「・・・・・・」

 恐くなった母親は「何かご用ですか?」と言った。

「・・・・・・別にぃ・・・・・・」

 ぶるっという寒気が、2人を襲った。

 母親は絶えられず、急いで車に乗り込んだ。

「ただねぇ・・・・・・」


(・・・・・・えっ!?)

 つい、手を止めてしまった。白いマスクの男が、ぐんと近づいてくるのが分かった。

「ただねぇ・・・・・・あんたのお子さんは肺炎だよ。市立病院に言ってみれば、分かるさ」

 そう言い残して、たったと病院の暗い裏門へ入っていった。


(なんだろう・・・今の人・・・)

 そう思いながらも、車は市民病院の方へ向かっていた。


 翌日のことである。

 あの少女を診察した私営病院の医師が、遺体で発見された。

 死体には胃袋がなかったという。

 胃袋は、そのまた2日後に見つかった。

 中には、報告書が一枚。裏には、こう書いてあった。


“肺炎ノ報告書 面倒ニテ 風邪ト診断スル者 生キルベカラズ”

−証言後記−

そういえば、あのマスクをかぶった人。

ネット上で結構噂らしいですよ。

名前は確か・・・・・・。

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