第7話 因縁の再会
第7話です。
水流が揺れる。
小さな体は、まだ耐久特化の感覚を覚えている。
しかし、安心する暇はなかった。
視界の端に影。
大きい――前より圧倒的に。
あの因縁魚、グラドだ。
水の中で、体を低くする。
尾ひれを、小さく震わせ、水の抵抗を計る。
巨大な体が、こちらを観察している。
牙を振りかざすわけでも、すぐに襲ってくるわけでもない。
だが、その存在感は圧倒的だ。
「……来たな」
心の奥で、自然と声が漏れそうになる。
いや、声は出せない。
でも、意思は伝わる。
グラドも、それを感じているのか、視線が揺れた。
小さな体で、水流に乗りながら、距離を取る。
耐久特化の体は、まだ有効だが、相手の体格差は、歴然としている。
このまま戦っても、正面からは勝てない。
ならば、戦略――逃げと、圧力の読みを使うしかない。
グラドが、水流を変える。
尾ひれの振動が、私の体に伝わる。
判断を誤れば、再び丸呑みされる。
しかし、内部進化の感覚が、体を支配する。
圧力を受け流し、わずかに方向を変える。
小さな体でも、読みと反応で立ち回れる。
互いに距離を取り、見つめ合う。
言葉はない。
でも、名前を持った存在として、互いに認め合う時間だ。
グラドの体は圧倒的だが、動きには迷いがある。
小さな体の私が、未知の力を持っていることを、察しているのだろう。
恐怖と、緊張が混ざる。
小さな体が震えるが、心は冷静だ。
逃げるだけでは、生き延びられない。
戦略と耐久――両方を駆使して、この海で生き抜く。
水面に、光が差し込む。
光の中で、グラドの瞳が、私を追う。
牙も尾も使わず、ただ視線で圧をかける。
敵でも、仲間でもない。
でも、確かに認め合うべき存在――因縁魚。
胸の奥で、微かに笑う。
まだ小さい。
まだ弱い。
だが、止まらない成長はここからだ。
互角に戦う日は、近い。
水面の光が揺れ、二人の影も揺れる。
海の中で、静かに呼吸を感じながら、心に決める。
次に遭遇した時は――小さな体でも、もう逃げない。
お読みいただき、ありがとうございました。




