第2話 …進化しますか?
第2話です。
水の暗闇の中で、問いが反響する。
――進化しますか?
その声は無機質で、感情もない。
でも、重みがある。
小さな体では、どうにもできない状況で――選択が迫られる。
体を動かす。ひれを震わせる。
逃げることはできない。
吸い込まれる圧迫の中、考える。
進化……する?
いや、進化してどうなる?
選択肢は3つ。
耐久特化種。
高速機動種。
捕食強化種。
どれも魅力的ではあるけれど、どれも未知。
小さな体で、どれを選べば生き延びられるのか。
視界の隅で、暗い影が揺れる。
丸呑みした相手の存在は、まだ脳裏に重く圧し掛かる。
逃げられるなら……でも逃げられない。
ならば、進化しかない。
恐怖と絶望の中で、自然と決まった。
「壊れるのは、もう嫌だ」
この気持ちは、前世では味わえなかった。
弱さを叩かれ続けた自分に、やっと芽生えた反抗心だ。
体の奥が熱くなる。
骨格が音を立てて組み替わる。
筋肉が膨らみ、内臓が強化される感覚。
体は小さいまま。見た目は変わらない。
でも、違う。
中身が違う。
――耐久特化種を選択しました。
問いかけは静かに消え、残るのは自分の心臓の音だけ。
そして、吸い込まれた暗闇の中で、初めて生き残る感覚を実感する。
巨大な影の口が開く。
牙も、力も、私には届かない。
体の奥で、新しい耐久力が圧力を受け止めている。
骨が軋むけれど、潰れない。
体の一部を失っても、再生する。
息を整える必要もなく、呼吸の概念すら曖昧なまま、私は初めて生き抜いた。
小さな体で、巨大な世界に抗えた。
恐怖は消えない。
でも、希望が芽生えた。
この進化はまだ始まり。
もっと大きな存在――因縁魚――が待つ海の頂点を目指すための一歩。
水中に漂いながら、心の中で微かに笑う。
――止まらない成長が、ここから始まる。
お読みいただき、ありがとうございました。




