第1話 なんだこれ…魚?
第1話です。
青。
青い。
なんだ、これ。
視界が広すぎる違和感。
体が軽すぎる違和感。
そう、私は――小さい。
ひれが動く。指はない。
自分が魚になっていることに気づく。
手や足はない。声もない。
でも、生きている、確かに息をしているような感覚がある。
水の中で揺れる世界は、どこまでも広い。
浮かんでいるのではなく、流されている。
流れに任せて進むしかない。
体は小さすぎて、水の重みをすべて受け止められるような気さえする。
口の先に漂うプランクトンを吸い込む。
満足は、ほとんどない。
それでも、生きるためには、これしかない。
水の中で小さな生き物を捕らえる自分――この感覚が、前世にはなかった“生の実感”だ。
だが、すぐに世界の広さだけではない何かを知る。
水流が変わった。
光が揺れる。
影――いや、影じゃない。
何か巨大なものが迫ってくる。
逃げられない。
回避するひまもない。
吸い込まれるように、暗闇に飲み込まれる。
圧力が体を押し潰す。
骨が軋む。
死ぬ――と思ったその瞬間。
静かに、しかしはっきりと声が響いた。
――進化しますか?
光はない。
形も変わらない。
ただ、問いだけが水の中に漂う。
私の体はまだ、小さいまま。
でも、ここで、選ぶことができる。
小さく、弱く、無力。
それでも――可能性は、目の前にある。
沈む水の中で、問いだけが、私を引き上げるように震える。
お読みいただき、ありがとうございました。




