その婚約破棄騒動で、なかったことにされること
どうして、そんなに動揺しているのですか?
私はあなたに舞踏会でのことをもう一度聞きたいだけです。
おちついてください。
前にも話した通り、私は王族や上級貴族の不正を取り締まる機関の者です。ですから、下級貴族のあなたを罰する権限はありません。
ここでの会話は漏れることはありません、ですから安心して証言してください。
あなたが望むなら、証人保護の処置もします。
あの舞踏会で何が起こったのですか?
ええ。その舞踏会で王子が婚約破棄宣言をした。
それはその舞踏会に参加した人達はみな証言してます。
王子が婚約者に婚約破棄宣言をして、婚約者が反撃をしようとしたところに、王妃様が二人をいさめて、二人は反省して仲直りしたと。
私はみなが口裏を合わせていると睨んでいるんです。
前の聞き取り調査でもそうでしたが、あなたは王妃様の名前が出ると、とても動揺しますよね。どうしてですか?
私が調査しているのは、王妃様が一か月以上も公の場に出てこない件です。
王妃様が公の場に最後に出られたのが、あの舞踏会だったのです。
私は、舞踏会の参加者全員に話を聞きました。
その中で、あなたの証言だけ、曖昧なんですよ。
婚約破棄の部分は他の人達の証言とぴったり変わりません。ですが、会場の様子などはよく覚えてないと誤魔化してましたね。
あなたはあの舞踏会場にはじめて行ったと証言しましたが、本当は一度も行ったことがないんじゃないですか?
あなたは実際には舞踏会には参加していなかったのに、口裏合わせの補強として参加していたとの嘘証言を強要されているのではないのですか?
では、あの会場の床の色は何色でしたか?カーテンの色は?置いてある像は何の動物でしたか?
やはり、答えられませんね。
あなたの証言で決定的におかしいのは、王妃様のドレスの色を覚えていないと言ったことです。
たしかに、あなたは男性だから女性のドレスの色に興味が無いのもおかしくありません。
ですが、王妃様のドレスの色を覚えていないのはありえないんですよ。
王妃様はいつも赤いドレスを好んで着ます。そのことは有名で誰もが知っていることです。
だから、王妃様のドレスの色を覚えていないなんてありえないんですよ。
もし、赤いドレスを着ていたらいつもの赤いドレスだなと記憶に残るし、違う色ならそのことを忘れない。
あなたは本当は舞踏会に参加していなかった。つまり、王妃様を見ていない。
私の想像を聞いてください。
あなたの参加していない舞踏会で起こったことです。
婚約破棄が行われ、王妃様は口出しをした。そこで逆上した王子の婚約者に刃物で刺し殺されてしまった。
それが隠蔽されようとしている。
あなたが下級貴族として苦しい立場にいることは承知してますが、勇気をもって証言してほしいのです。
本当に舞踏会に出席していたですか?
では、あなたは舞踏会で王妃様を見たと主張するのですね。
それが本当ならどうしてそんなに狼狽えているのですか?
「王妃様。いいかげん、部屋から出てきてくださいよ」
王妃の部屋の前で、王子の婚約者が呼びかける。
「出られるわけないじゃない。どんな顔でみんなの前に出るのよ!」
部屋に引きこもっている王妃が、ドア越しに怒鳴る。
「みんな心配しているんですよ。世間じゃあ、王妃様が姿をみせないから、死亡説も流れていますよ」
「それでいいわよ。私は死にました」
「そんなこと言わないでくださいよ。私は王妃様に説教されて目が覚めたんですから。男女の仲にどちらかが悪いなんてない、破綻するときは両者が悪いんだって。その言葉で私も王子も心を入れ替えて、やり直すことに決めたんですから」
「酔っぱらってあんな姿をみんなにみられて、出ていけるわけないじゃない」
「みんな、なかったことにしてくれてますよ。でも、あの男の子には謝った方がいいですよ。酔っぱらった王妃様が服の色が気に入らないからって脱いだせいで、あの男の子、王妃様のおっぱい以外の記憶がふっとんでいるでしょうからね」
「うぎゃあー」
部屋の中で頭を抱える王妃に、外から追い打ちの言葉がかかる。
「気にすることはありませんよ。酔っぱらっておっぱい丸出しのまま気持ちよく説教していただけじゃないですか」
おわり




