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第九話 吊るされた男の正位置「試練」





キーンコーンカーンコーン。


女子生徒「きりーつ、れい」


一同「ありがとうございましたー」




シホ「ミドリー!」


ミドリ「どうした、シホ」


シホ「ミドリお願い! 彼、今週末、ライブのノルマきついんだよ! チケット買ってくれない!?」


ミドリ「……。わりぃ……、週末はバイトあんだよ」


シホ「え~、最近、放課後もずっと、そう言ってんじゃん。だめぇ……?」


ミドリ「すまん」


シホ「そっかぁ……。しゃあない! みんなにも声かけてくる! ありがと! ねえ、みんな~、お願いあんだけどー!」




スミ「……え?」


シホ「頼むよー! スミちゃん! なんとか、私の彼君、助けて!」


スミ「えっと……、週末?」


シホ「頼む!」


スミ「あの……」


シホ「いや、まてまて、わかった! 一枚は私と彼で出すからさ!」


スミ「え? 2枚ってこと?」


シホ「頼む~!!」


スミ「えっと……、あー……」




昼休み


スミ「あのー……」


ヒロト「あー、黒瀬先輩? なに?」


スミ「実は……」




ヒロト「ライブ? 嫌なら断れば?」


スミ「そういう訳にも、いかないと言いますか」


ヒロト「俺、興味ないから、行かない」


スミ「だよね……」


ヒロト「ライブハウスなんて人も多いだろうし、大丈夫じゃね?」


スミ「え?」


ヒロト「そんなとこで襲うような、度胸ある奴も少ないだろ」


スミ「まあ……、それは……。心配はそこではないというか……」


ヒロト「何?」


スミ「複雑なんだよ、人間関係は」


ヒロト「はあ?」


スミ「その子の彼が出るときだけでもいいからさ、行かないかな?」


ヒロト「……たく、面倒くさいな……」






繁華街の雑居ビル。

集まる私服の学生。


シホ「あ、スミちゃん! こっちこっち!」


スミ「こんにちは」


シホ「ありがとー! 来てくれて助かったよ! あれ、一人?」


スミ「あー、えっと、もう一人声をかけたんだけど、遅れて来るって」


シホ「おっけー、おっけー、じゃ、入ろ!」




ぼんやりと薄暗い室内。

小さなステージに、開いた空間。


背の高いテーブルの一つにシホと陣取る。


シホ「スミちゃん、何飲む?」


スミ「あ、私も一緒に行く」


シホ「大丈夫、シホが取ってくるから! 席守っててほしいし」


スミ「うん、じゃあ、ジンジャー」


シホ「おっけー!」


スミ「ありがとー」




がやがやとした店内を見回す。


スミ「ライブハウス、初めてだな……」



シホ「お待たせ~、ジンジャーでよかった?」


スミ「ありがと。ここは、よく来てるの?」


シホ「しょっちゅう! その都度チケットさばくの手伝って、大変なんだよ!」


スミ「へえ、すごいね」


シホ「彼君のためならさ~、何でもやってあげたいって思うんだ」


スミ「いいな。そういう関係」


シホ「へへ~。やめてよー! 照れる!」


スミ「はは」



女子「シホ~!!」


シホ「あ! やっほー!! ごめん、スミちゃん! 挨拶周り行かないと!」


スミ「あ、うん、行ってらっしゃい……」


シホ「わー! ありがとねー!! 来てくれてー!!」


スミ「……」





ジャジャジャジャジャー!!!

ダダダダダダダダ!!!


キーン……


バンドマン「うーい!! 今日は来てくれて、ありがとーっす!!」


観客「別にお前を見に来たんじゃないぞー」


バンドマン「そこ、うっせー! 俺らのも、ちゃんと聞いていけって!」


観客たち「ははは」




大きな音の中、

盛り上がる観客たち。


スミ「……」


テーブルで一人、それを眺める。


トントン。

肩を叩かれ、ビクっとする。


スミ「あ、ヒロト君! 来てくれたんだ!」


ヒロト「な――て――」


スミ「え? なに?」


ヒロト「ここ、カ――が、は――う―」


スミ「え? 聞こえないよ!」


声が音楽にかき消される。

周りを見回しているヒロト。



音楽が止む。


スミ「ごめん、聞こえなかった」


ヒロト「出よう。ここ、カードが反応してんだよ」


スミの肩がビクっとする。


ヒロト「今、カード持ってないの?」


スミ「持ってる、けど……」


ヒロト「気づけよ。気を抜いてるとやられる」


スミ「ごめ……」


ヒロト「向こうも気づいてるかもしれない。さっさと逃げたほうがいいって」


スミ「うん」


人をかき分けて出口に向かうヒロト。

その背中にくっついていく。




エレベーターの前で待つ。

まばらな人。


スミ「まだ……、カードが熱い」


ヒロト「バレたっぽい。中から出てくる人がいたら、注意して」


スミ「うん」



グググ。

ライブハウスの重い扉がゆっくりと開く。


スミ「き、きた……?」


身構えるヒロトとスミ。


シホ「あ、スミちゃーん!!」


扉の向こうからシホが顔を出す。


シホ「スミちゃん帰っちゃう!? もうすぐ彼君の番なんだけど……」


スミ「シホちゃん……。ごめん! 急用できちゃって!」


シホ「え~!!」


スミ「ごめんね、誘ってもらったのに……」


一歩シホに近づこうとした所、

ヒロトに肩を掴まれる。


スミ「? ヒロト……」


ヒロト「伏せて!」


押し付けられて、しゃがむ。


ピシッ!


スミ「なに!?」


ヒロト「上をよく見て!」


顔を上げて、目を凝らす。


スミ「っ!?」


細いワイヤーのような一本の鉄線。

ライブハウスの扉の隙間から、エレベータの扉に突き刺さる。


シホ「ど、どうしたの、急に!?」


ヒロト「逃げよう!」


手を掴まれて走り出す。


シホ「スミちゃん!」


スミ「ごめん! また学校で!」






ヒロト「はっ!はっ!」


階段を駆け下りる。


スミ「あれ何!?」


ヒロト「知らねえよ! でもコッチのが、分が悪い!」


スミ「どういうこと!?」


ヒロト「遠隔系とは相性が悪いんだよ!」


スミ「それってどういう、きゃ!」


階段を踏み外して、踊り場に倒れる。


ヒロト「ばか! ちっ!」


ヒロトがカードを細い剣に変える。

一太刀に振り下ろす。


ドシュ


鉄線が弾かれ、床に曲がって刺さる。


スミ「なに!?」


階段を見ると、

上の階から直角に折れ曲がりながら、

鉄線が伸びてきている。


ヒロト「黒瀬先輩! オープン!」


スミ「は、はい!」


ポケットからカードを取り出す。

手の上で金色の円盤に変化。


鉄線が床から階段のほうにスルスルと戻る。

そうかと思えば、ヒロトに向かって素早く伸びる。

それを剣で弾く。

壁に刺さる鉄線。


ヒロト「先に行って!」


スミ「うん!」


階段を駆け下りる。




ヒロト「この!」


キン!


剣で鉄線の先を弾いて曲げる。

そのたびに少しもどって、ヒロトに向かって伸びる。

何度も。


スミ「ヒロト君!」


遅れ気味のヒロト。


ヒロト「いいから! 早く行って!」


スミ「う、うん!」


キン! キン!


後ろで何度も金属がぶつかる音。


スミ「はっ! はっ!」


一階につく。

出口はすぐそこ。


スミ「ヒロト君! 外!」


後ろ目に剣で弾きながら降りてくるヒロト。


キン! キン! ガッ!


ヒロト「って!」


ヒロトの指を鉄線がかすめる。

剣から手を離してしまうヒロト。


ヒロト「しまっ……」


階段から落ちてきた剣が、

スミの足元でカードに戻る。


スミ「ああっ!!」


鉄線がスルスルと少し戻って、

ヒロトに照準をつける。


ヒロト「くっそ!」


逃げるように階段を駆け下りる。


スミ「逃げて! ヒロト君!!」


一階目前。

鉄線がヒロトの背中に迫った時、

ヒロトが階段を踏み外す。


ヒロト「あ!」


飛ぶように階段から落ちて、

一階の床に倒れ込む。

迫る鉄線。


スミ「ああ!!」


ヒロトの背中を守るように、

スミが覆いかぶさる。


スミ「……っ」


ヒロト「黒瀬……、先輩?」


スミ「はあ、はあ、」


顔を上げる。

スミたちの直前で止まっている鉄線。

先端が小刻みに揺れている。


スミ「と、止まった……?」


ヒロト「はっ、はっ、」


鉄線がスルスルと戻っていく。


ヒロト「今!」


スミ「う、うん!」


ヒロトがスミの手を引く。

カードを拾い上げ、

外に向かって走り出す。




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