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第四十四話 皇帝・塔「落城」





ミドリ「……」


幸土教授の研究室。

カードの束を持って祈るミドリ。


幸土「西野さん、どうだろうか?」


ミドリ「わかんねぇ。何にも起きてないっていうか」


秋穂「それとなく、お母さんに連絡してみたら? 最近変わったことは無いかとか」


ミドリ「ああ、そうする」


幸土「では、今日の所はカードを返してもらうよ」


ミドリ「ま、待ってくれ!」


幸土「ん?」


ミドリ「もう一回、もう一回、願ってみるから!」


秋穂「焦らなくても大丈夫よ。何度でも願う機会はあるのだから」


ミドリ「あ、ああ……」


コンコンコン


水際「こんにちわー」


幸土「やあ、いらっしゃい」


水際「早速、出向に来ましたー。カードがどんな感じで使われてるか、視察ですー」


秋穂「ええ。ちょうど実験をしていたところよ」


水際「実験?」


秋穂「西野さん、視察の人も来たみたいだし、もう一度やってみる?」


ミドリ「や、やる!」


水際「あ、あのー。何をしてるんですか?」


幸土「今の枚数で、願いが叶う兆候があるのか、試しているのさ」


水際「……。願い……ね」


秋穂「彼女の家庭はトラブルに見舞われていてね。カードにそれの解決を願っているの」


水際「へえ……」


ミドリ「だめだ……。なんにも起きやしねぇ……」


幸土「今の枚数では、願いを叶えるには不十分なのだろう。またカードが増えた時に試せばいい」


ミドリ「ま、まだ願い方が足りないのかも!もっと強く願ってみる!」


幸土「まあ……、君の思うようにしたまえ」


ミドリ「ああ!」


水際「……」


怪訝そうな水際の顔。






カード犯罪対策室。


ナオ「ねえ、黒瀬スミ」


スミ「なに? ナオちゃん」


ナオ「あんた、西野ミドリや、新藤ヒロトと連絡とってる?」


スミ「んー……。あれから会ってないかな」


ナオ「それでいいの? あいつらも、あいつら並みにアンタのこと心配してたわよ」


スミ「……今は、自分のやるべきことをやらなくちゃ。それには、皆を巻き込めない」


ナオ「昏睡してる友達を救いたいのはわかるけどね。そればかりに突き進んで、周りを見ていないと、いつか色んな物を失いかねないわよ」


スミ「いいの。アサコが助かるなら」


ナオ「……そう」


ドアが開く。


水際「戻りましたー」


スミ「あ、お疲れ様です」


ナオ「水際、幸土の所に行ってたのよね」


水際「そうそう」


市之瀬「幸土教授はカードをどのように使おうとしているか、なんと無くみえたか」


水際「いーえ、まだわかりません。ですが、なんか嫌な予感がします」


市之瀬「嫌な予感?」


水際「カードの実態調査っていうより、カードが願いを叶える力を持っているかの実験って感じです」


スミ「え……?」


市之瀬「その実験とは?」


水際「滝見高校の西野さん、彼女にカードを持たせて、願いが叶うか試してるみたいですねー」


スミ「え、西野さんが!?」


市之瀬「まあ……。それもカードの解明に必要な実験かもしれないが……」


ナオ「西野ミドリの願いは、かなり私的な物。それが叶うぐらいのことなら、大した問題にならないんじゃない?」


市之瀬「願いの内容がどうであれ、そんなものが実現するとは思えない。問題は、そこではない。上がカードを教授に預けた思惑は、その危険性、性質、そして実用性の解明だからな」


水際「カードは西野さんの実験が上手くいかないことを口実に、他のカードも渡すように申請してくるつもりですよ。悪い冗談ですよ」


市之瀬「……こちらの思惑通りに教授が動かないのであれば、その申請は取り下げよう。上にも報告しておく」


水際「そうしてください。もっと、教授の動きを監視するべきだわ。てか、他にカードを研究できそうな信頼のおける人っていないんですか?」


市之瀬「教授いかんによっては、研究方法も検討されるだろうが……。カードの実態は一部の人間のみが知る秘匿情報だ。そう簡単には見つからないさ」


水際「どうも信用できなくなってきました。あの人」


市之瀬「そういうな。これまでの協力もあっただろう」


水際「まあ……」


プルルル


市之瀬「おっと、すまない。はい、市之瀬です。え? はい、繋いでください」


水際「はあ……」


スミ「水際先生、西野さんが願いを叶える実験をしてるって……」


水際「まーね、でも目的は別にあると思う」


スミ「え? 別の目的?」


ナオ「幸土が、西野ミドリの願いが叶うか試してるってのは、ただの建前。本当は別の目的があるってことでしょ」


水際「そういうこと。幸土教授は、現時点で願いが叶うとは微塵も思っていないんじゃない」


スミ「そ、そうなんですか……。じゃあ、この実験って、なんのために……」


水際「さあね。何考えてるわかんない。教授も、秋穂先生も」


市之瀬「え、ええ、わかりました。では、失礼します。……。やれやれだな……」


水際「なんの電話ですか?」


市之瀬「上が教授に会いに来るそうだ。カードという物について詳しく聞きたいとね」


水際「え……、どうしてです?」


市之瀬「カードというものに、利用価値があると目論んでいるんだろう。すでに教授へアポを取ったらしい」


水際「……教授の側に上がなびいたら、なんか良くないかも。上はカードの危険性を正確に把握できてますよね?」


市之瀬「さあ、どうだかな」


水際「いつ頃、上は視察に?」


市之瀬「明日だ」


水際「……最悪。急すぎでしょ」


市之瀬「さて、どうなることか……」







翌日。

幸土教授の研究室。

警察幹部と、それを囲む数名のキャリア組。

そして市之瀬。


幸土「まず、断っておきたいのは、これは手品の類ではないと言うことです。ご覧ください」


カードを壺に変化させる。


キャリア警察たち「おおお……」


幸土「驚かないでください。ここからが本番です。じっとしていてくださいね」


一斉に壺から蛇が飛び出し、刑事達の体に巻き付く。


キャリア警察たち「な、なんだ、これは……」


幸土「まだ本来の力を見せていません。今は彼らを拘束しているだけですが、このまま絞め殺すことも可能だ」


市之瀬「こ、幸土教授!」


蛇が壺に戻り、カードに戻る。


幸土「そういうわけでしてね……。非常に不可解な物なのですよ、カードという物は」


警察幹部「信じられませんな……。それが犯罪に利用されていたと?」


幸土「お持ちになってみますか?」


警察幹部「え、ええ。危険なものではないのですよね?」


幸土「ええ、一度もつだけなら」


手に持つ。



※※※ カードを集めよ。さすれば願いは叶う ※※※



警察幹部「お、おお……、なんだ、これは……」


幸土「いかがです?」


警察幹部「こんなものが、現在に存在していることが不思議といいますか……」


幸土「このカードなる物の研究は進めることは、急務なのですよ。この街でだけ起きている些細な犯罪というスケールではない。大げさな話に聞こえるかもしれませんが、わが国の技術発展に係わることなのですよ」


警察幹部「……。たしかに、これは、我々が手に負える物ではないと思えます……」


幸土「研究へ理解を示していただけますかな?」


警察幹部「え、ええ……。早急に手配いたしましょう……。市之瀬君、頼むよ」


市之瀬「かしこまりました……」


警察幹部「私は君たちの追っていた、カードという物への認識が甘かったようだ。地方的に出回っている、違法な凶器などではない。もっと不可解な物だと……。君たちのチームが押収したカードは研究に回した方がいいのではないかな」


市之瀬「し、しかし、カードは、他のカードを探知するセンサーでもあるのです。それがないと、捜査が進まない。我々にも必要な物なのですよ……」


警察幹部「そうか、ならば捜査に必要な枚数は君が提示しなさい。出来るだけ早急に研究に回せるように」


市之瀬「は、はい……」






警察署。


市之瀬「もどったよ」


スミ「お帰りなさい、市之瀬参事官」


水際「どうでした? 上の人達」


市之瀬「いい話ではない」


水際「……というと?」


市之瀬「今、こちらで保管しているカード。それに、黒瀬さんや、白川さん、他にも、擁護教諭の秋穂さんや高校生たち。現状確認できているカードは、捜査に必要な枚数を除いて、幸土教授に順次わたるようにとのことだ」


スミ「え!? そんな!」


水際「最悪」


市之瀬「秋穂先生たちには、監視についている刑事から通達に行かせる。素直に手渡すかどうかは不明だかな」


スミ「は、話が違うじゃないですか!」


市之瀬「……。なにがだ……?」


スミ「ここに居たら、カードを集められるんじゃないんですか!? 私は、カードを持っていても良いって、言ってくれてたんじゃないんですか!?」


市之瀬「それは……、捜査に君の力が必要だからだ」


スミ「そんなの!!」


市之瀬「捜査に必要な枚数は残す。多くはないだろうがね。そのうちの一枚は黒瀬さんに持たせよう」


スミ「一枚って……。アサコの、アサコの為に、私は我慢して協力し続けて来たのに!!」


市之瀬「君は、警察上層部を敵に回すつもりか? 雑木林を放火した容疑者、黒瀬スミさん」


スミ「っ……、で、でも、そんなの、あんまりですよ……」


市之瀬「……」


水際「……」


スミが唇をかむ。



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