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第四十一話 女教皇・月「直感」





市之瀬「どうだった? 幸土教授の所は」


水際「そうですねー……」


市之瀬「どうした。何かあったか?」


水際「あのー、教授へのカードの貸与は決定しているのですよね?」


市之瀬「何か問題が?」


水際「いえー……。やはり、危険物であるカードを、民間に貸与していいのかなってー」


市之瀬「カードの実態解明は急務だ。そもそも、地方都市の高牧で彼以外の適任はいない。なにせカードは市外に持ち出せないのだからな」


水際「それは理解してます」


市之瀬「貸与中はこちらから人員の出向もある。教授のカード管理も随時監視する予定だ」


水際「それはわかりますが……」


市之瀬「なんだ? 懸念があるなら言ってくれないか」


水際「あると言えば、あるのですがー……。個人的な疑念と言いますか……」


スミがコーヒーを運んでくる。


スミ「あの……、水際先生も、市之瀬参事官も、どうしたんですか?」


市之瀬「いや、なに……。気にしないでいいよ」


スミ「何かあったんですか?」


水際「別にー。何でもないの」


スミ「そうですか……」


コンコン


ナオ「特別捜査官、白川ナオ、入ります」


スミ「ナオちゃん。こんにちは」


ナオ「ええ。何?なんか空気悪くない?」


スミ「それが……」


水際「気にしなくていいのー。さあ、白川さんも来たところだしー、カード探索に行きましょう。カード所持者と思わしき目撃情報もあるの」


ナオ「ええ……、わかったわ」


水際「ほら、黒瀬さんも行くよー?」


スミ「は、はい」


水際とスミが出ていく。


市之瀬「白川さん、少しいいかな?」


ナオ「えっと、なにか?」


市之瀬「水際は幸土教授に何か思うところがあるようだ。それとなく聞いておいてくれないか。教授にカードが渡ることに懸念があるのかとね」


ナオ「……わかったわ」






黒いワゴンを早乙女刑事が運転する。


早乙女「カード所持者と思われる人物が目撃されたのは、南部の飲み屋街でね。場所が場所というのもあって、まあ、男女の良からぬ話しが多い」


スミ「良からぬ話?」


水際「はいはい、お子様には詳しく話せないなー」


ナオ「なにそれ」


水際「まあ、なにかしら男女トラブルにあったという女性からの相談が多いわけ。その中で共通する奇妙な相談内容があってねー」


スミ「奇妙な? どんなことですか?」


早乙女「カードさ。それが、別の物に形を変えるマジック。そして、気が付いたら……、まあ、なんだ……」


水際「ホテルのベッドで朝になってたって訳。記憶はなーし」


ナオ「明らかにカードとしか思えないわね」


スミ「記憶がない……。どういうことでしょう」


水際「さあね。まあ、押収したらわかるかなー」


ナオ「押収ね……。ところで、あんた達警察は、今のところ、何枚のカードを集めたわけ?」


水際「他人事みたいにー。白川さんも、こっち側よ?」


ナオ「あら、お仲間って認めてくれてるわけね」


スミ「6枚。署の地下に金庫があって、そこに入れてるって」


水際「まあ、そのうち一枚は私が持ってるけどー」


ナオ「ふーん……」






パーキングに車を停める。


水際「さて聞き込みだけど……。もうすぐ夜も更ける。誘惑の多い場所でもあるし、高校生たちは二手に分かれて、私達について来てもらおうかなー。じゃあ、白川さんは早乙女君について行って。黒瀬さん、行こっかー」


ナオ「水際、私とあなたのペアにしてくれない」


水際「あら、どうして?」


ナオ「女性に悪さをするようなクズ男なんでしょ。単独犯かも定かじゃないし、女を誘い出す役とかもいるかも。女同士の方がやり易いじゃない。でも、それをやろうにも黒瀬スミには荷が重いわ」


水際「すごーい。白川さん、もう刑事になれるねー」


スミ「ナオちゃん、私も行くよ……」


ナオ「何かあればバックアップがいる。ペアは分けた方がいいかな」


水際「その通りね。でも、こういうところは、そもそも誘惑だらけなの。誘惑されたとして、それがカード所持者の仲間かなんて、そもそも判断は出来ない」


ナオ「そう……」


水際「でもいいわ。白川さん、私と組みましょうか。早乙女君は、黒瀬さんとここでお留守番。それでどう?」


早乙女「どちらでも。報告は逐一お願いします」


ナオ「ええ、お願いするわ」


スミ「ナオちゃん……」






飲み屋が並ぶ通りを歩く。


キャッチの男「どう、お姉さんたち! 安くしとくよ!」


水際「いらなーい」


ナオ「嫌な所」


水際「まあ、高校生にはわかんないよねー」


ナオ「私は大人になっても、こんな所には来ない」


水際「それはどうかな~。来なきゃいけない時もあるし、意外とハマってるかもー」


ナオ「ありえないわ」


水際「ホントにお堅いなー、白川さん」


ナオ「そんなことはどうでもいい。市之瀬に聞いたわ。あんた、幸土にカードを渡るの渋ってるようじゃない。どういう心境の変化?」


水際「……聞いたのねー。あのさ、秋穂先生ってどんな人?」


ナオ「何?秋穂先生?」


水際「秋穂先生と幸土教授が協力してカードを研究してるって知ってた?」


ナオ「え……。まあ、それとなく聞いた話ではあるけど、それが?」


水際「かなり深く関わってる、あの二人。それが私には不穏に感じるんだよねー」


ナオ「わからなくはないわ。秋穂先生は怖い人よ。物事をはっきりと断定するタイプだしね」


水際「あの二人は、カードが本当に願いを叶えると思っている。それも大きな願い事を叶えてくれるってねー」


ナオ「大きな願い?」


水際「世界改変的な?まあ、冗談だと思いたいんだけどねー」


ナオ「……願いかねないわ。どんな馬鹿らしい願いでも、秋穂先生ならね」


水際「まあ、私は信じていないんだけどね、カードが願いを叶えるとか……」


ナオ「どうだかね。ところで、水際、気づいてる?」


水際「ええ。直ぐ近くね」


ナオ「二軒前。個室バーって奴」


水際「さて、お仕事と行きましょうかねー」


水際がイヤフォンを片耳に入れる。


水際「早乙女君。こちらの位置情報は捉えてる? カードの反応を見つけた。会話は繋いだままにしておいて」


早乙女『わかった。気をつけて。近くまで行って待機する』


水際「さて、お話を聞きに行きましょうかー。女の敵とかいう奴の口から」


ナオ「ええ、そうね……」


ごくんと唾をのみ、

個室バーの入口をくぐる。


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