第三十八話 恋人・皇帝「リバイズド」
朝の教室。
ミドリ「おはよ!」
シホ「おはよーミドリ!」
ミドリ「おう。あー、スミは今日も来てないのか……」
シホ「結構大きな怪我したって話だし、今日も休みかも」
ミドリ「そうかもな~。昨日メールしたんだけど、帰ってきてねーし……」
シホ「大丈夫かな? 心配だよ」
ミドリ「今日もメール入れとくかな」
シホ「ねー、連絡帰ってきたら、お見舞い言っていいか聞いてみて」
ミドリ「そうだな……、見舞いかぁ……」
シホ「おねがーい!」
ナオ「やめときなさい」
シホ「え? なんでー?」
ナオをミドリが顔を合わせる。
ナオ「怪我人に押し掛けるのは良くないわ」
ミドリ「そう、だよな……。メールで見舞いだけにしとこうぜ……」
シホ「えー!」
ナオ「西野ミドリ、ちょっといい?」
ミドリ「お、おう」
廊下に出る。
ナオ「水際からの報告。アンタ聞いてないの?」
ミドリ「報告?」
ナオ「襲撃されたって話」
ミドリ「スミが? やっぱな。でも無事なんだろ?」
ナオが首を横に振る。
ミドリ「え?」
ナオ「自宅を襲われたのよ。家も半壊」
ミドリ「まじかよ!」
ナオ「シッ! 声が大きい」
ミドリ「わ、わりぃ」
ナオ「昨日、水際からの報告が来た。言っとくけど、この件は私達だけの秘密だからね」
ミドリ「わ、わかった。口外しない。これ、新藤や秋穂先生は知ってんのか?」
ナオ「さあね。放課後、カード犯罪対策室に行ってみましょう。何かわかるかも」
ミドリ「ああ……」
キーンコーンカーンコーン。
ナオ「じゃ、放課後に」
手を振って教室に入る。
担任が入ってくる。
担任「おはよう」
生徒たち「おはようございまーす」
担任「あー、急な話だが、みんなに報告がある」
女子生徒「なになに?」
男子生徒「もしかして、小テストっすか?」
女子生徒「えー、やだー」
担任「静かに。驚かないで聞きなさい。今日から、黒瀬が休学することになった」
シホ「えー!!」
女子生徒「急すぎない!?」
女子生徒「なんでなんですか?」
担任「詳しい話は先生も知らん。ま、まあ、そういうことだから、みんな、気を
落とさないように」
シホ「そんなー!!」
ミドリ「まじか……」
ナオ「……」
担任「あー、それともう一つ。副担任の水際先生だが、家庭の事情で急遽お辞めになられた」
男子生徒「えー! セナちゃんも!?」
女子生徒「なにそれー!」
担任「あー、静かに! 寂しいと思うけど、もうすぐ冬休みに入るから。学期末、引き締めていけよ! 以上、ホームルーム終わり!」
男子生徒「はあ~!?」
ザワザワ
ミドリ「スミと、水際先生が……?」
ナオ「……やられた。ただ事じゃない。絶対」
警察署の中にある、広い道場。
スミと水際が組手のような物を行っている。
水際「ほらー、目をつむらなーい!」
スミ「はっ、はっ、」
水際「おそーい! もっと速くー!」
スミ「はい!」
水際「相手が攻撃する前の、予備動作で見切るー!」
スミ「はい!」
水際のパンチを、ぎこちなく避け続けるスミ。
水際「相手が本気だったらー、こんなもんじゃないよ!」
スミ「あ、ああ、きゃ」
パンチを避けて尻もちをつく。
スミ「いっててて……」
水際「まあ、こんなもんにしよっかー。傷が開いたら意味無いし」
スミ「はい……」
道場の端に置いた鞄。
その横に座る。
スミ「あ……」
水際「どうしたのー?」
スミ「西野さんからです。心配だから会いたいって」
水際「言ってなかったの?」
スミ「はい。言いづらいから」
水際「あー、私のとこにも鬼メールー。白川ナオちゃんからねー。今日行くから説明しろってー」
スミ「あー……」
水際「まー、今日来たら、ちゃんと説明しなきゃだねー」
スミ「はい……」
学校。
昼休みの中庭。
ミドリ「おい、新藤!」
ヒロト「西野先輩? 珍しいね」
ベンチに座るヒロト。
ミドリ「スカシてんじゃねーよ。お前、スミが心配じゃないのか?」
ヒロト「なんで?」
ミドリ「なんで、じゃねーって」
ヒロトの胸倉をつかんで持ち上げる。
ミドリ「お前、スミの状況、知ってんのか?」
ヒロト「……西野先輩は知ってんの?」
ミドリ「知らねーよ! 全部は!」
ヒロト「何が言いたいんだよ」
ミドリ「心配してないのかって、聞いてんだ!」
ヒロト「カードは戦争だ。いつ誰が消えてもおかしくない」
ミドリ「ふざけんな!!」
ヒロトに殴り掛かる。
拳を受け止めるヒロト。
ヒロト「死んだわけじゃないんだろ。それならラッキーじゃん」
ミドリ「てめえ!」
ミドリの拳を握るヒロトの手。
ギリギリと力をこめる。
ミドリ「こ、この……」
ヒロト「その程度?」
ミドリ「な? うわ!」
ミドリを地面に押し倒す。
そのまま馬乗り。
ミドリ「て、てめ!!」
ヒロトがカードをポケットから出して、
ミドリの首元に当てる。
ミドリ「な……」
ヒロト「西野先輩、実戦だったら死んでるよ」
ミドリ「ど、どけよ! 重いんだよ!」
ヒロト「はいはい」
ヒロトがベンチに戻る。
ミドリ「なんだよ、クソガキが……」
仰向けのまま涙目。
ヒロト「いつかこうなってた。まだ最悪の形をしてないだけ、マシじゃん」
ミドリ「うっせーよ……。こんなことなら、お前の家で、あのまま暮らしておけばよかった。そしたらスミの家が壊れることもなかったんだ」
ヒロト「……まだ、情報は不確かなんだろ。黒瀬先輩がどうなったのか、確かめてからにしようよ」
ミドリ「わかってるよ……」
腕を顔に当てる。
放課後。
駆け足で校門に向かう、
ナオとミドリ。
ミドリ「はっ、はっ、はっ、」
ナオ「速いって! 焦っても結果は一緒!」
ミドリ「早く知りてーんだよ!」
校門を出た所に秋穂の黒いスポーツカーが停まっている。
秋穂「はいは~い。かわい子ちゃんたち~。どこ行くの~?」
ミドリ「秋穂先生!」
ナオ「はあ、はあ、あのね、私達、急いでんだけど?」
秋穂「乗せて行ってあげましょうか?」
ミドリ「あ、秋穂先生も行くのか、警察署」
秋穂「そうだけど?」
ミドリ「頼む、乗せてくれ!」
ナオ「ま、まあ、このゴリラと走るよりマシかもね」
ミドリ「うっせーよ」
秋穂「もちろんいいわよ~。どうぞ、お嬢さんたち」
後部座席を開けて手招き。
ヒロト「ちょうどいいや。俺も乗せてよ」
ミドリ達の後ろからヒロトが歩いてくる。
ミドリ「新藤!」
ナオ「あんたも行くの?」
ヒロト「ああ。いいよね? 先生」
秋穂「それが人に物を頼む態度なのかしら、ま、いいけど」
秋穂が呆れたように手招き。
警察署。
コンコン!
カード犯罪対策室をノックする。
ミドリ「おい、入るぞ!」
一斉に振り向く刑事達。
刑事の男「おい、勝手に入るな」
ミドリ「いいだろ! アタシも協力者だ」
ナオ「お邪魔します。あー、私は特別捜査官だから、部外者じゃないので」
続いて入る、ヒロトと秋穂。
スミ「に、西野さん、みんな」
部屋の奥でコーヒーポットにお湯を入れているスミ。
上下黒のスーツ姿。
ミドリ「スミ! ……って、なんだよ、その服装」
スミ「あー、えーっと……」
水際「ほらー、ちゃんと自己紹介」
スミ「はい! ほ、本日付けで、カード犯罪対策室に配属されました、と、特別捜査官、黒瀬スミです!」
ミドリ「は?」
ナオ「……」
ヒロト「……」
秋穂「ふーん」
秋穂の顔がニヤつく。




