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第三十七話 審判・隠者「決断」





スミ「ふう、ふう、ふう、」


大きく穴が開いて、壊れた壁。

仁王立ちのスミ。

Tシャツの胸元と背中が破け、血がにじむ。


マユミ「スミ……、あなた……」


ドカドカドカ!


階段を上がり、

部屋に刑事の男たちが流れ込んでくる。


マユミ「きゃ、きゃあ!!」


刑事の男「大丈夫ですか!?」


刑事の男「何があった!?」


スミが振り返る。


スミ「来るの、遅いですよ」


刑事の男「すまない。出て行った男は、別の刑事が追っている。怪我は?」


スミ「結構、痛いかも」


気が抜けて倒れるスミ。


マユミ「スミ!!」


刑事の男「おい! 救急車!」


刑事の男「はい!」


マユミ「スミ!スミ!!」


マユミの腕の中で目を閉じる。






朝日が差し込む病室。


マユミ「どういうことですか!? どうして警察が私の家に? この子とどういう関わりがあるんですか!?」


警察の男「落ち着いてください。事情は上の者から説明します」


マユミ「この子に何をさせていたんですか。この子が使った、魔法みたいな奴、いったい何なんですか!?」


警察の男「そ、それは」


市之瀬「ここは病院です。お静かにね」


病室に市之瀬が入ってくる。


マユミ「あなた、誰ですか?」


市之瀬「この者たちの上司です。私から事情を説明します」


マユミ「事情?」


市之瀬「黒瀬スミさんには、我々の捜査に関わってもらっておりました。重要な容疑者探しに」


マユミ「なんですって!?」


市之瀬「我々が追っている容疑者を追うには、娘さんの協力が必要だった。だから彼女が手伝ってくれていたんです」


マユミ「手伝いですって? 娘はまだ高校生ですよ!?」


市之瀬「ええ、理解しています。しかし、事情が事情でしてね。黒瀬スミさんの協力なしでは、容疑者を追うことは出来ない」


マユミ「あなた達、自分が何を言っているのか、わかっているんですか?」


市之瀬「ええ、もちろん」


マユミ「いったい、娘の協力が必要な事情って何なんですか!?」


市之瀬「国家安全保障条約に準じますので、ここではお答えできません」


マユミ「はあ!?」


スミ「やめて、お母さん」


スミが上体を起こす。


マユミ「スミ! 大丈夫なの!?」


スミ「ちょっと痛いけど、平気」


マユミ「平気じゃないでしょ! 何針縫ったと思ってんの!?」


スミ「大丈夫。身体も動くし」


マユミ「スミ! 説明しなさい! この人達はいったいなんなの!? アンタ、何やってるのよ!?」


スミ「それは……」


市之瀬を見る。


市之瀬「ふう……」


大きな溜息が聞こえる。


スミ「……あの、お母さん。私、大事なことがあって……」


マユミ「大事なこと? いったい何?」


スミ「アサコを目覚めさせること」


マユミ「は? アサコちゃん?」


スミ「そう。だから、この人達に協力してる」


マユミ「なによそれ……。どういう意味よ?」


スミ「……ここに、カードはありますか?」


市之瀬「……ああ」


刑事男がスミのジャケットを持ってくる。

ポケットから一枚のカードを抜きだすスミ。


マユミ「なにそれ?」


市之瀬「……見せるのかい? 母親に」


スミ「……ええ」


市之瀬「君も、母親も元の生活には戻れなくなるよ」


スミ「覚悟の上です」


マユミ「なんの話……」


スミ「アサコを目覚めさせるには、私がやらなきゃいけないんだから」


スミのカードがぐにゃりと曲がる。


マユミ「きゃ!」


手の中でハサミに変化。


マユミ「なに……、そのオモチャ」


スミ「オモチャじゃないよ。人を殺せる武器」


マユミ「どう見ても、ハサミみたいだけど……」


スミ「うん。これは武器の一つ。他にもたくさんの武器がある」


マユミ「何言ってるか、わからないわ……」


スミ「夜に泥棒を追い払ったのは、丸太。ここでは危なくて出せない。他にも剣とか、包丁とか、沢山の種類がある」


マユミ「まって、まって、何の話?」


スミ「この武器が、この街に散らばって配られた。私は、それを集めてる」


マユミ「待ってって、何の話をしてるの? アサコちゃんが目覚めるって、どういうこと?」


スミ「この武器を集めたら、願いが叶う」


マユミ「はあ? なに言ってんの?」


市之瀬「無理もない。理解できない話です」


マユミ「はあ?」


市之瀬「お母さんは、この高牧で、不可解な事件が頻発していることをご存じですか?」


マユミ「い、いいえ……」


市之瀬「不可解な事件の中心には、いつも、その武器化するカードの影がチラついている。我々は、そのカードを持つ人物を捜査している特別班です」


マユミ「……まだ、意味がわかりません」


市之瀬「凶悪な武器になるカード。現在の科学力では解明できない力を持つ。娘さんはそれを持っているのですよ」


マユミ「え、ええ……? スミが?」


スミ「うん。これのことだよ?」


マユミ「な、なら、そんなものさっさと捨てなさい! それが原因で、この人達に協力させられたりしてんでしょ? 捨てなさい!」


スミ「駄目だよ」


マユミ「はい? 何言ってんの! 危ない物なんでしょ!?」


スミ「これが、私とアサコを繋ぐ希望だから。アサコを目覚めさせるために必要なの」


マユミ「あんたね、夢みたいなこと言ってんじゃないわよ!」


スミ「夢みたいなことなんだよ。このカードも。カードが武器になることも」


マユミ「……訳が分からないわ」


市之瀬「お母さん。残念ですが、しばらくあなたは県警の監視下に置かれます」


マユミ「監視下ですって?」


市之瀬「正確には、既に置かれていたのですが、これからはもっと厳重に」


マユミ「どういうことですか?」


市之瀬「ここで見たことは、全て内密に。誰かに話せば、その人もどうなるか、保証出来かねます」


マユミ「はあ?」


市之瀬「家も壊れてしまいましたし、仮の住まいも必要でしょう? 市内に住居を用意します」


マユミ「何言ってんの? 勝手に話を進めないで」


市之瀬「あなたの身の安全を保障するためです。もちろん、娘さんも」


マユミ「……意味わからない」


市之瀬「本日付で引っ越しの手続きをすませましょう。こちらで手配いたしますので」


マユミ「……もう、勝手にしたらいいわ」


スミを見る。

カードを握り締めてうつむく。


市之瀬「黒瀬スミさん。君には、もっと厳重な監視が付く」


スミ「はい」


市之瀬「しばらくは母親とも離れて暮らすことになるね」


マユミ「どういうこと!?」


市之瀬「彼女の協力が必要だからです。そして、彼女も我々を必要としている」


マユミ「ふざけんな!!」


スミ「やめて、お母さん」


マユミ「うっさい! 子供は黙ってろ!!」


スミ「私、もう子供じゃないよ」


マユミ「はあ、あんたは子供よ!!」


スミ「子供じゃない。自分の人生は自分で決めるから」


マユミ「え、何を言ってんの……?」


スミ「私が決めたいの。自分のやるべきこと。私がやらなきゃいけないことを」


マユミ「……はあ、意味わかんない。もう嫌になっちゃった」


脱力して、床に座るマユミ。


スミ「ごめん、お母さん」


マユミ「訳わかんない。何もかも」


スミ「痛たた」


ベッドから起き上がるスミ。


マユミ「ちょっと、まだ寝ていなさいよ」


スミ「市之瀬さん。私を連れて行ってください」


マユミ「ちょ、ちょっと、待ちなさい!」


市之瀬「……ああ」


市之瀬が刑事からスミのジャケットを預かって、

スミに羽織らせる。


スミ「……母を、危険から遠ざけてくれますか?」


市之瀬「もちろんだとも」


スミ「約束ですよ」


マユミ「ま、待ちなさい! スミ!」


刑事に囲まれながら、スミが病室を出ていく。


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