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第二十六話 ペンタクルの3「共同作業」




スミとナオが机を並べて座る。

一つの教科書を真ん中で開く。

肩が触れ合いそうな距離。


スミ「……ふぅ、……ふぅ、」


心拍数が上がっていく。

恐る恐るナオを見る。


ナオ「……はっ、……はっ、」


荒い息遣い。


ビクッ


ナオがスミの目を見て驚く。

すぐに目をそらす。

ハンカチを取り出して、頬の汗を押さえるナオ。


スミ「し、白川さん……、大丈夫……?」


ナオ「……うるさい」


スミも目をそらす。

心拍数の上昇は収まらない。




水際が授業を進めていく。


水際「はい、ここ、誰に読んでもらおうかなー。はい、じゃあー、転校生ちゃん」


ビクっとするナオ。


ナオ「わ、わたし!?」


水際「はい、じゃあ読んでー」


ナオ「え、えと……、きょ、きょうかしょ……、か、りる……」


スミ「う、うん……」


立ち上がるナオ。


ナオ「い、いまはむかし……、たけ、とりの……、おきなありけり……」


水際「はい、ありがとー。竹取の翁、ありけり、ありけりとは、つまりー」


ナオが着席する。


ナオ「はあ、はあ、……きょう、かしょ……、ありがと」


スミ「うん……」


ミドリが冷たい視線でナオを見つめる。




黒板に例文を書きながら、授業を進める水際。


水際「その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。なむ、とは強調を意味しててー」


ナオとスミは一つの教科書の端と、端を持って見ている。

指先が小刻みに震えるナオ。


ナオ「はっ、はっ、」


額から汗が流れ、机に落ちる。


スミ「……」


スミの指先もわずかに震える。


ナオ「……や、って……、られるか……」


スミ「……?」


ナオ「やってられるか……、こんなの……」


スミ「白川さん……?」


ナオが手を上げながら、立ち上がる。


ナオ「すいません……」


水際「どうしたのー? 白川さん」


ナオ「気分が悪いので、保健室に行きます」


ビクっとするスミ。

大きく目を開くミドリ。


スミ「ま、待って!」


ナオの服を掴む。

ビクっとするナオ。


ナオ「なに!?」


スミ「待って、白川さん……」


ナオ「なんで?」


水際「白川さん、体調悪いのー? 保健室行くー?」


ミドリ「お、おい! 転校生!」


立ち上がるミドリ。


ミドリ「お前、今日このクラスに来て、まだ一限目だぞ! そんなに授業が嫌なのかよ!?」


ナオ「は、はあ!?」


ミドリを不安そうに見つめるシホ。


シホ「ミドリ……、転校生いじめちゃだめだよ」


ミドリ「ち、ちげえって! 一緒に授業うけて、仲良くなりたいから!!」


シホ「え、どういうこと?」


水際「どうしたの、みんな……。白川さん、保健室よねー? 黒瀬さん、ついて行ってくれる?」


スミ「い、嫌です!」


水際「ええ? じゃ、じゃあ、誰かー……」


スミ「保健室には行かないで……。白川さん、授業を受けて」


ナオ「な、なん……」


シホ「スミちゃんも、ミドリも……、どうしちゃったの?」


スミ「白川さん、ここに居て……。お願い……」


スミがぎゅっとナオの服を掴む。


ナオ「……。あ、ああ……。わかったよ」


ナオが着席する。


水際「んー。じゃあー、授業の続きするねー?」






キーンコーンカーンコーン。


女性生徒「きりーつ」


生徒たち「ありがとうございましたー」


教室を出ていく水際を怪訝に見つめるナオ。

水際がナオを見てウインクする。

背筋に悪寒。


ナオ「ねえ、あんた、何で保健室に行くのを止めたのよ。何が狙い?」


スミ「……」


ミドリ「お前こそ、何が狙いだよ。なんでウチに転校して来やがった」


ナオ「……言える訳ないだろ」


ミドリ「はあ?」


ナオ「言えば、家族がヤバイんだ」


ミドリ「なんだよ、それ……」


スミ「白川さん、誰かに脅されてるの?」


ナオ「言えないって、言ったよね」


スミ「……ごめん」


ナオ「私の質問に答えてよ。保健室に行くのを何で止めたのか」


ミドリ「……」


スミ「……」


ナオ「いったい何?」


ミドリ「いつまでも隠してはいられないだろ……」


スミ「……うん。白川さん、放課後、私達と一緒に保健室に来て」


ナオ「なんで?」


スミ「お願い。それまでは、絶対に保健室に近づかないで」


ナオ「……一体なにがあんのよ、保健室に……」


シホ「こら~! ミドリ! スミちゃん! また転校生をいじめて!!」


ミドリ「ち、ちげぇって言ってるだろ!」


スミ「シホちゃん、誤解だから」


シホ「ホントかな? じゃあ、二人がいじめてないか、シホが監視するから!」


ミドリ「な、なんだよ、それ」


シホ「今日のお昼、4人で食べよ。ね?」


スミ「う、うん……」


ナオ「……」


シホ「絶対ね~!」


シホが席に戻っていく。

自分の席に着くナオ。

スミが振り返って、後ろのナオを見る。


スミ「白川さん。あの日、あなたの家の近くの林に火をつけたのは、私たちです」


ナオがスミを睨む。


ナオ「……わかってる。お前らは私からカードを奪おうとした。私の家族を巻き込むことなんて、気にもしないし、カードのためなら手段を選ばない。犯罪者であり、私の敵だ」


スミ「……。謝らせて。あなたの家族を傷つける気なんてなかった。結果的には白川さんと戦うことになってしまったけど、本当は誰も、傷つけたくなんてなかった」


ナオ「……嘘だ」


スミ「嘘じゃない。そして、できるなら、白川さんを危険に巻き込みたくないって思ってる」


ナオ「……どういうことよ?」


スミ「放課後にはわかるから。それまでは、私と西野さんの近くに居て」


ナオ「……」


スミ「お願い。信じてなんて言えないけど、少なくとも、この学校の中においては、私はあなたの味方です」


見つめるスミ。

睨むナオ。


ナオ「……わかった。でも勘違いしないで、あなた達を信じたわけじゃない」


スミ「うん……」




先生が教室に入ってくる。

椅子を移動させ、スミの隣に並ぶナオ。

また一冊の教科書の端を二人でつまむ。






昼休み。

シホの机を囲んで、

4人でお弁当を食べる。


シホ「え!? ナオちゃん、北山女子だったの!?」


ミドリ「北山女子って?」


シホ「北のやまて女子高校! 名門お嬢高だよ!」


スミ「ああ……。どうりで見たことある制服だなって……」


ナオ「名門なんて、過去の栄光よ。今は別にお金持ちばかりが集まっているわけでもないし、学業だって並みのレベルよ」


ミドリ「ヘー。お嬢だったのかよ、お前」


ナオ「あなた、おバカさん? 違うって言ってるよね?」


ミドリ「なんだと、てめっ!」


ナオ「あと、お前じゃない。白川ナオ」


ミドリ「こいつ……」


ナオ「こいつじゃなくて、し、ら、か、わー、」


シホ「あー、はいはい。ナオちゃんって呼んで良いよね?」


ナオ「あ、うん。私もシホちゃんって呼ぶね」


シホ「うん!よろしくー!」


スミ「じゃ、じゃあ……。私もナオちゃんって呼んでいい?」


ナオ「う……、うん。黒瀬……、スミちゃん」


ミドリ「私のことはミドリでいいから、白川ナオ」


ナオ「あんたね……、はあ、わかったわ、ミドリ」


ミドリ「よろしくな、白川ナオ」


ナオ「……まったく。こちらこそ、よろしく。はあ……」


溜息をつくナオ。





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