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第十六話 ワンドの9「限界寸前」





雨が当たる傘。

古い商店街を覗き込む。

電球が切れ、屋根も崩れかけている。




スミ「カードが反応してます。近くにいるかも」


スマホを耳に当てる。


秋穂『今どのあたり?』


スミ「西高牧商店街の入り口」


秋穂『古いシャッター街よね? その中に居そう?』


スミ「はい。感じます。強い違和感を」


秋穂『一人で行っちゃだめよ。そこから一度離れて、合流しましょう』


スミ「わかりました」


小走りで逃げる。




住宅地の中の公園。

大きな木の下で、雨を避ける。


ミドリ「スミー?」


音のしない銀色のスケボーに乗ってやってくる。


スミ「西野さん、コッチ」


ミドリ「おう、待たせた」


スケボーをカードに戻す。


スミ「先生は?」


ミドリ「商店街の反対から挟み撃ちにするってさ、アタシらは、スミがさっきいた入口から行けって」


スミ「わかった」


ミドリ「強い違和感を感じたんだろ? 複数枚持ちの可能性が高いって、先生が」


スミ「そうかも」


ミドリ「ま、行こうぜ。アタシらが遅くて逃げられたら、先生、機嫌悪くなるし」


スミ「うん」


傘にミドリを入れて、歩き出す。


スミ「……西野さん、もう、別のカードも使いこなしてるんだね」


ミドリ「さすがに何回もこんなことしてちゃな。スミだって」


スミ「まあ、ね」






商店街の入口。

中は真っ暗。


ミドリ「……やべぇわ、ここ」


スミ「西野さんも、そう思う?」


ミドリ「ああ、違和感もすげーんだけどさ、視界も悪すぎ。なにより道幅が狭い」


スミ「逃げ場ないよね」



ブブブ。

スマホのバイブ。


スミ「はい。黒瀬です」


秋穂『到着した?』


スミ「はい。西野さんも一緒に」


秋穂『じゃあ、作戦開始と行きましょうか。大丈夫?』


スミ「正直、ここ、怖いです」


秋穂『ええ。私の姿が見えるまでに遭遇したら、すぐに引き返して』


スミ「わかりました」


秋穂『じゃあ、あとで』



ミドリ「先生なんて?」


スミ「先生の姿が見えるまでに出会っちゃったら、すぐに逃げてって」


ミドリ「はいよ」


傘を畳む。




商店街の中。

明かりもない。

入口や崩れた屋根から、僅かな光が差し込む。

雨が入り込み、いくつもの水たまり。


ミドリ「やば。ぜってー、人いないだろ、ここ」


スミ「この商店街、初めて来た」


ミドリ「そりゃな、どこ見てもボロボロじゃん。店なんてやってないって」


スミ「駅前の商店街は人も多いのにね。ちょっとしか離れてないのに」


ミドリ「そんなもん、なんじゃん? アタシらだって、下校で寄るなら、駅前の商店街か、繁華街のほうに行くだろ?」


スミ「どっちもあんまり。私、家、遠いから」


ミドリ「まあ、そっか」




ビクッ。


カードが熱い。


スミ「……近い。オープンした方がいいかも」


ミドリ「ああ」


スミがカードを取り出す。

細いノズルのついたボトルに変化。

ミドリは包丁。


ゆっくり進む。

商店街は緩いカーブになっており、先は見えない。


ミドリ「……どこだ」


スミ「……」


心臓の音が聞こえるみたい。




ミドリ「あっ! ああ!!!」


スミ「西野さん!?」


ミドリの太ももに、

針金のような鉄線が貫通している。

鉄線は長く伸び、どこまで繋がっているかわからない。


スミ「これ! ライブハウスの!?」


ミドリ「う、うぐううう!」


鉄線が抜かれる。

プシュっと血が流れる。

暗闇で見失う鉄線の先端。


スミ「み、見えない!」


ブシュ。


二の腕に激痛。


スミ「う、うああああ!」


ボトルを手放し、落ちてカードに戻る。


ブシッ。

血が流れる。


スミ「あぐ、あ、あ」


ミドリ「す、スミ、逃げよう!」


スミ「う、うう」


ミドリがスミの背中を抱えて、

来た道を戻り出す。

片足を引きずるミドリ。


ミドリ「は、はっ、はっ、」


スミ「うぐ、あ、だ、大丈夫?」


ミドリ「なんとか……、早くここを出ようあっ!あああ!!」


スミ「ああ!」


二人で倒れ込む。


ミドリの、もう一方の太ももにも鉄線が突き刺さる。


ミドリ「う、うあああ……」


ブシュッ。


抜かれる鉄線。

血が滴る先端がスミの顔に向く。


スミ「う、うあ!」


ポケットから別のカードを取り出す。

銀色の裁ちバサミへ変化。


鉄線の先端が動く。

とっさに顔を傾ける。

スミの頬をかすめて切り裂く。


スミ「っつ!」


ハサミで鉄線を切る。

一瞬の光になって鉄線が消える。


スミ「西野さん!」


ミドリ「う、ぐぐ」


スミ「立てる!?」


ミドリ「先、行って」


スミ「嫌だよ!」


うつ伏せのミドリの片手を引っ張って、

後退していく。


ミドリ「さ、先に行って!」


スミ「う、うるさい……」


ズルズルとミドリを引っ張る。


ミドリを引っ張った後が、

長い線になって地面に残る。


ブシュッ!


スミ「あ、あああああ!!」


太ももに激痛。


ミドリ「ス、スミ!!」


スミ「う、うああ……」


抜かれる鉄線。

後ろに倒れ込む。


スミ「せ、先生!どこ!? 先生!」


秋穂の姿はまだ見えない。


スミ「はあ、はあ、っこの!」


ミドリの背中を掴み、

地面にお尻を擦りながら後退。


ミドリ「スミ!無理だって、お前も死ぬ!」


スミ「し、死んで、たまるかっ……」


ミドリ「スミ……」


スミ「アサコが……、待ってる……」


雨でびちゃびちゃな服。

血がにじむ服。


スミ「はあ、はあ、もうちょっとだ……」


暗くて何も見えない。

少し後ろに入口からの光。



ガシン!


突如、目の前に現れる金属の塊。


スミ「はっ、はっ、はっ、な、に?」



金属の塊が素早く動く。


ガンッ! ガンッ!


上を見上げる。

ヒロトが金色の十字架を、剣みたいに振っている。


スミ「ヒロト君……」


ミドリ「お前、なんで」


ヒロト「速く。さっさと逃げて」


スミ「うん……」


スミたちの前に回り込んで、十字架を振る。


ガンッ! ギンッ!


何度も金属がぶつかる音。


ヒロト「黒瀬先輩、ハサミ!」


スミ「は、はい!」


一枚のカードをヒロトに投げる。

ヒロトが受け取る。

十字架をカードに戻し、

受け取ったカードをハサミに変える。


シャン。

鉄線が消える。


ヒロト「今!」


スミとミドリの手を引っ張って、

二人を地面に引きずりながら走る。


ミドリ「う、あ、イテ、いてえって」


ヒロト「我慢しろ!」


スミ「ヒ、ヒロト君!」


商店街の入り口はすぐそこ。


ブシュッ。


ヒロト「あっ!! くっそ!」


ヒロトの足に鉄線が刺さる。

立ち止まるヒロト。


スミ「ああ!」


カードを金色の十字架に変える。


ヒロト「もう!」


ガンッ! ガンッ!


十字架を振る。


ミドリ「も、もう、無理だ!」


ヒロト「あきらめて、どうすんだって!」


ガンッ! ガンッ!


ミドリ「ここで終わりかよ、アタシの人生」


ヒロト「何、一人で、決めつけ、てんだ!」


ガンッ! ガンッ! ブン!


ヒロトの十字架が空振り。


ヒロト「はあ、はあ、はあ、」


スミ「ど、どうなったの?」


ヒロト「先生だ」


スミ「え?」


ヒロト「こっちの相手なんか、していられなくなったんだろ、行くぞ」


スミを引き起こす。


ヒロト「黒瀬先輩は、そっち持って」


スミ「うん」


二人で足を引きずりながら、

ミドリの両手を引っぱって、商店街の入口に向かう。



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