第十五話 シャッフル
秋穂「昨日はお疲れ~。お楽しみの山分けターイム!」
放課後、保健室に集まる。
スミ「……」
ヒロト「……」
ミドリ「……」
秋穂「何? みんな、暗い顔して」
スミ「いえ……。なんでも……」
秋穂「ま、いっか。とりあえずは、2枚ずつ引いてって」
カードの束を広げて見せる。
ミドリ「……じゃあ、アタシから」
二枚を抜き取る。
秋穂「はい、黒瀬さんもどうぞ」
スミ「はい……」
秋穂「ほら、新藤君も」
ヒロトが2枚とる。
秋穂の手に残る3枚。
秋穂「じゃあ、一枚はじゃんけんにしよっか」
ヒロト「俺はいいや。昨日の戦いで奪った1枚もあるし」
秋穂「あ、そうなの? 遠慮しなくてもいいのに~。じゃあ私達でじゃんけんしよ」
スミ「……」
秋穂「いくよ? じゃんけん、ぽん」
秋穂とミドリはグー。
スミはパー。
秋穂「あー、負けちゃったー。じゃあ、これは黒瀬さんにあげるー」
一枚をスミに渡す。
スミ「ありがとう……、ございます」
秋穂「よかったね、カードが増えて。これで黒瀬さんも、願い事に近づいたね」
スミ「……」
秋穂「嬉しくないの? 入院してる日向井アサコさん、助けたいんでしょ?」
スミ「はい……」
秋穂「うんうん。素直でよろしい」
ヒロト「じゃあ、俺はこれで」
秋穂「お待ちなさい、新藤君」
ヒロト「何?」
秋穂「まだ先生のお話は終わっていません」
ヒロト「話ってなんだよ」
秋穂「昨日のことで、みんなわかったよね。このカード争奪戦で、徒党を組みだした奴らもいるって」
ミドリ「ああ」
秋穂「そして、昨日の奴らはカードの力を悪用して、どうやら強盗まがいのことまでしてたようじゃない。悪い奴がカードを持てば危険なんだって、みんなもわかったよね?」
スミ「……」
ミドリ「まあ……」
秋穂「そんな危ない奴が、この街には沢山いると思ってみて? 欲望のままにカードの力をふるって、犯罪行為をしてまわり、人々を苦しませる。他の人のカードだって、力ずくで奪いに来る。そんな危ない奴らを、野放しにしていて、良いのかな?」
ミドリ「よくは……、ねえけどよ」
スミ「怖い……とは思います」
秋穂「ね? みんなもそう思うよね? だからさ、そんな悪い奴らから、カードを奪っちゃおうよ! ここにいるみんなで力を合わせて」
ヒロト「……前にも、その提案は断ったはずだけど?」
秋穂「新藤君はね。でも、昨日みたいな奴らが他にもいるって思ったら、許せなくない?」
ヒロト「……」
秋穂「次に、いつ私達が標的になるかもわかったものじゃないわ。だって、私たちは20枚ちかいカードを持った、願いを叶える有力候補なんだから」
スミ「先生の仮説では、全部で52枚。20枚って、半数近いですもんね……」
秋穂「そうだよ~。だから私達を狙う奴は多いはず。それにね、私達なら、強盗とかの犯罪にカードを使ったりしない。そう思わない?」
スミ「……」
ミドリ「……」
ヒロト「だから、攻めに回るってこと? 詭弁だろ。悪いヤツを倒そうなんて」
秋穂「詭弁なんかじゃない。カードが犯罪に利用されているのは、事実よ」
スミ「……」
ミドリ「アタシは……、先生の言ってること、正しい気がする……」
ヒロト「……。西野先輩はカードを集めたいんだもんな」
ミドリ「悪いかよ。スミだって本当は集めたいって思うだろ?」
スミ「……うん」
ミドリ「だったら先生の言ってるように、協力して集めたほうが良くね?」
ヒロト「俺はパス」
秋穂「ホントに空気を読まない子ね~、新藤君は」
ヒロト「あえて危険に突っ込む意味ある?」
ミドリ「アタシは、先生に協力する」
ヒロト「ちっ」
秋穂「よいよい。西野さんは素直なお利口さんだね。さて、黒瀬さんはどうする?」
スミ「……」
ヒロト「……」
スミ「考え……、させてください」
ヒロト「……はあ、……ったく、……」
溜息を吐く。
病院。
アサコの病室の前。
コンコン!
ガララ。
アサコの母が顔を出す。
アサコの母「あ……。スミちゃん……」
スミ「どうしても……、アサコの顔を見たくて……」
アサコの母「……」
スミ「……」
アサコの母「……どうぞ」
スミ「いいんですか?」
アサコの母「席を外すわ。戻ってくるまでアサコの側にいてくれる?」
スミ「はい」
病室で寝ているアサコ。
手を握る。
スミ「アサコ……。お願い、目を覚ましてよ……」
眠るアサコ。
スミ「アサコが目を覚まさないと、私……」
震える手。
朝の学校。
保健室のドアを開ける。
秋穂「あら? 黒瀬さん、早いのね」
スミ「先生」
秋穂「何?」
スミ「私も、先生のカード集め、手伝います」
秋穂「ふ、ふふふ。ありがとう。黒瀬さんなら、そう言ってくれると思ってた」
スミ「手に入ったカードは、山分けしてくれますか?」
秋穂「当然よ。成果物はみんなの物。独り占めしたりなんてしない」
スミ「ありがとうございます」
秋穂「お礼を言うのは、こちらのほう。これで、本当の同盟成立ね。共に戦いましょう、この街の人のためにも、それぞれの願いのためにも。ね、黒瀬さん」
スミ「はい」
秋穂の黒いスポーツカー。
秋穂「さあ、今日から悪いヤツ探し開始よ! さ、乗って?」
ミドリ「うーい」
スミ「はい」
乗り込んでいく。
遠目に見つめるヒロト。
ヒロト「……くそが」
民家から離れた夜の河川敷。
ジャケットの男「はっ、はっ、はっ、」
コートの女「はあ、はあ、だ、誰か……」
ジャケットの男「ま、待てよ! この!」
男がポケットからカードを取り出す。
鞭のように変化する。
ジャケットの男「待てって!」
鞭を振る。
女の足を絡めとって、倒す。
コートの女「きゃあ!」
ジャケットの男「よ、よ~し……。ほら、財布だせ。ほら」
コートの女は倒れて震えている。
ジャケットの男「あー、よし、そのままじっとしとけ~……」
鞄に手を入れて財布を取り出す。
コートの女「か、かえし」
ジャケットの男「あ?」
女の顔を蹴り飛ばす。
コートの女「ああっ!」
地面を転がる。
仰向けに倒れてコートがはだける。
ジャケットの男「抵抗すんなって……。ん……、良く見りゃいい女じゃん」
コートの女「はあ……、はあ……」
ジャケットの男「近くに人はいねえ……、よな。見られて……、ないよな……?」
コートの女に馬乗りになる。
コートの女「や、やめて……」
顔を殴る。
コートの女「あっ!」
ジャケットの男「うるせ! 静かに! しろ!」
コートの女「あ! ああ! あっ!」
何発も顔を殴る。
コートの女「う……、うう……」
ジャケットの男「ここじゃ目立ちすぎる。あっちの草むら行こうぜ」
コートの女の髪を掴む。
コートの女「い、いや!誰か!」
ミドリ「そこまでにしとけ!」
向こうから走ってくる、制服姿のミドリ。
ジャケットの男「だ、誰だ!? いや、待て……。お前、カード持ってるな!?」
ミドリ「そうだよ! お前もな!」
ミドリがカードを包丁に。
男に飛び掛かる。
反転して逃げる男。
ジャケットの男「ひ、ひい!」
ミドリ「待て!」
スミが走ってきて、追い付く。
スミ「はあ、はあ、だ、大丈夫ですか?」
コートの女「うう……、あ、ありがと……」
スミ「走れますか?」
コートの女性「はい……。あの、あなた達は?」
スミ「気にしないで。急いで逃げてください」
コートの女性「は、はい……」
コートの女性が頷いて走っていく。
ジャケットの男「く、来るな!」
鞭を振る。
ミドリの周囲に何本もの包丁が浮かび上がり、
鞭を受け止める。
ジャケットの男「うわ、なんだ!?」
ミドリ「あめぇよ」
周囲の包丁たちが舞い踊る。
ジャケットの男「う、うわああ!」
男がミドリに向かって突進する。
ミドリ「ちっ、くそ!」
包丁を構える。
しかし、刃は届かず、
男に肩を突き飛ばされる。
ミドリ「うあ!」
男がミドリの横を走り抜ける。
ミドリ「スミ! そっちに行ったぞ!」
スミ「は、はい!」
スミがカードを丸太に変化させる。
電柱のように縦に持つ。
ジャケットの男「う、うわあ!なんだ!?それ!」
スミ「もう、やめてください。カードから手を離して」
ジャケットの男「た、助けて!!」
スミ「カードから、手を離して!」
ジャケットの男「だ、誰か、助けて!」
植物のツタが男の足を絡めとる。
ジャケットの男「うわ、なんだよ、これ!?」
足を引っ張り、川の横の草むらに引きずり下ろす。
ジャケットの男「う、うわああああ!!!」
草むらに消えていく。
ミドリ「スミ!大丈夫か?」
スミ「……うん」
秋穂「はい、おつかれ~」
草むらから出てくる秋穂。
手にはカード。
ミドリ「よし。いっちょ、あがりだな。何枚持ってた?」
秋穂「残念、一枚だけ~」
スミ「先生、さっきの人は?」
秋穂「気にしなくていいわ。二度と悪さ出来ないようにしたけどね」
スミ「……。そうですか……」
秋穂「いい連携だった。さあ、今日は終わりよ。みんな送ってあげる」
ミドリ「ういー」
スミ「はい」
河川敷を秋穂について、歩いて戻る。




