表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/52

第十話 愚者の正位置「無計画」





ミドリ「お願いします! アタシ、どうしてもカードを集めたいんです!」


夜。

アパートの一室の前で、インターフォンに話かける。


ミドリ「譲ってください……、お願いします……」


涙目で、扉に頭を下げる。



ガチャ。

扉の中からおじさんが覗く。


ミドリ「あ……」


おじさん「そんな一生懸命にねぇ。君、なにか、叶えたいことがあるのかい?」


ミドリ「は、はい! うち、すごい貧乏になっちゃって! どうにかしないとで!」


おじさん「それは……。こんなもの集めて、君の家にお金が入ってくるとは思えないけどね」


ミドリ「そ、それでも! アタシが出来ることって他になくって……」


おじさん「あげるよ。持ってって」


ミドリ「え、いいんですか!?」


おじさん「ああ、本当はね、不気味だったんだよ。何度もゴミと一緒に捨てたんだけどね。気が付いたらポストの中に入っていた。気味が悪かったんだ」


ミドリ「え……?」


おじさん「君がもらってくれるなら、僕も助かる」


ミドリ「あ、ありがとうございます!」


おじさん「それにしても、願い事なんてね……。僕はもう願い事のために、君のようには頑張れないね」


ミドリ「は、はあ……。今のアタシに出来ることなんて、他に何も無いっすから……」


おじさん「それを集めて、君の願いが叶うといいんだけどね」


ミドリ「はい……。どうなるか、わかんないですけど、アタシ集めようって思ってるんで!」


おじさん「そうかい……。まあ、とりあえず、コレ」


おじさんからカードを手渡され、

握り締めてお辞儀をする。






次の日の放課後。

保健室。


秋穂「鉄線の武器、ねえ……」


スミ「はい。階段を降りながら逃げて、一階まで追ってきて……。でも、そこでなぜか止まって、逃げれたんですけど……」


秋穂「ふーん」


スミ「なんで、あそこで止まったのか……」


秋穂「射程外になったんじゃない?」


スミ「射程外?」


秋穂「その鉄線は、無限には伸ばせないんじゃないかってこと」


スミ「ああ、なるほど……」


秋穂「それにしても、あなた達ふたりでライブねえ……。ふ~ん……」


ヒロト「なんだよ」


秋穂「べーつに~。お姉さん、そういうお話、だ~いすき」


ヒロト「うっせーな」


スミ「えっと……、私がどうしてもって……」


秋穂「そういうことに、しといたげるー」


ヒロト「はあ……」


秋穂「それにしても黒瀬さん、偉いわね」


スミ「え、なにがですか?」


秋穂「だって、日常的にカードを持ち歩いてるってことでしょ?」


スミ「あー……。持っていた方が、危険を知らせてくれそうかなって……」


秋穂「それは逆よ」


スミ「え?」


秋穂「身に着けているから、他の人に感知され、危険に巻き込まれる」


スミ「そ、そうか……」


ヒロト「だめだ。自分で持っていた方がいい」


スミ「え? ヒロト君?」


ヒロト「家に置いていたら、家族が巻き込まれるんだよ」


スミ「あ……」


秋穂「まあ、そっか。わたし、一人暮らしだから忘れていたわ。ごめんなさいね」


スミ「あ、いえいえ」


ヒロト「忘れてたって、本当だろうな……」


秋穂「うんうん。ホントー」


ヒロト「……」






バス停。


ヒロト「黒瀬先輩。昨日も思ったんだけど、まだ自分のカードの使い方、わかってないだろ」


スミ「あ、うん。何をしても反応しないんだ。振っても、投げても駄目。何かにぶつけても、カードに戻るだけ」


ヒロト「ふーん……」


ヒロトがポケットから一枚の光るカードを取り出す。


ヒロト「これ、黒瀬先輩が持ってて」


スミ「え?」


ヒロト「早く」


スミ「え、あ、うん」


カードを受け取る。


スミ「あれ? これ……?」


ヒロト「何?」


スミ「不思議。カードって見た目は全部同じ。鏡みたいにしか見えないのに。受け取ったらなんとなく違いがわかる。これがヒロト君のカード?」


ヒロト「丸太のカードだよ」


スミ「ヒッ……」


地面にカードを落とす。

ヒロトが拾い上げる。


ヒロト「先輩、今のカードだけじゃ戦えないだろ? 持っててほしいんだ」


スミ「……。持ってて、っていってもさ……。他のカードの使い方なんてわかんないし……」


ヒロト「オープンの仕方は同じだよ。力を使うように願うことも」


スミ「あんな大きな丸太なんて、私、持てない」


ヒロト「使えばわかるから。持ってて」


スミ「えっと……、でも……」


ヒロト「心配なんだよ。今のままじゃ」


スミ「う……、うん……。このカード、ヒロト君は使わないの?」


ヒロト「オープンは一度に一つ。同時には使えないから、意味ない」


スミ「へぇ……」


丸太のカードを受け取る。

手が少し震えてる。





スミの家。


スミ「お母さん、ちょっとだけ出かけてくる」


マユミ「何? 夜遅いし、明日にしたら?」


スミ「ジュ、ジュース買いに行くだけだから!」


マユミ「オレンジジュースあるわよ?」


スミ「ジ、ジンジャーが飲みたいの!」


マユミ「あーはいはい」




家の裏の林の中。

カードは光ってない。


スミ「よし……。見られてないよな……」


周りを見回す。


スミ「……武器になれ」


スミの手の平から、光りながら、空に向かって伸びるように変化する。


スミ「あ、うわわ」


両腕でがしっと掴む。


スミ「重……いけど、持てないってほどじゃない……」


見上げてみる。

電柱のように伸びる、木の丸太のような、太い棒。


スミ「そんなに重くないってことは……。ぶつけても、大したことないってことだよね?」


隣の杉に軽く当ててみる。


ドシン!!


カー、カー!


木と丸太のぶつかる大きな音。

カラスの鳴き声。


スミ「え! あ、やば! 戻れ!」




マユミ「い、今の音、なに?」


林から懐中電灯片手に飛び出してくるスミ。


マユミ「きゃ、ス、スミ!? なにしてんの?」


スミ「ご、ごめん、木登りしてて、落ちちゃって!」


マユミ「え!? 大丈夫なの!?」


スミ「うん、へーきだから。先、家に入ってるね」


マユミ「え? ええ?」


困惑するマユミ。






深夜。

大型のゲームセンター。

所々に人がいる。

カードを片手に、クレーンゲームの通路を進むミドリ。


ミドリ「光がつえぇ……。近くに持ってる奴がいる……」


ナンパ男「ねえ、君、今なにしてんの? ひとり?」


ミドリ「……」


ナンパ男「ねえってば、こっち見てよ。あ、なに? その光ってるやつ」


ミドリ「うるせーな。アタシに構うな」


ミドリがナンパ男の方を向く。


ナンパ男「あ、こっち見てくれた~」


ミドリ「な!?」


ナンパ男「え? なに?」


ナンパ男の向こう側。

通路の先、オリンピックの聖火トーチのような物を持つ、ヤンキー風の男。


ミドリ「カ、カード持ち!」


ナンパ男「え? カード?」


ミドリ「あぶねえ!」


ナンパ男「うわ」


ナンパ男を突き飛ばす。

クレーンゲームに叩きつけられる男。

地面に倒れるミドリ。


ゴウ!!


火柱がミドリの頭上をかすめて通り過ぎる。


ナンパ男「う、うわ、うわああ!」


逃げていくナンパ男。


ミドリ「ふう、ふう、」


ヤンキー「へえ、やるじゃん」


立ち上がる。

両腕を広げる。


ミドリ「……ちょっと、待って。アタシ! あんたと戦う気はないよ!」


ヤンキー「はあ?」


ミドリ「私はただ、カードが欲しいだけ! アタシのウチ、貧乏だからさ!」


ヤンキー「だから、なに?」


ミドリ「あんたのカード、アタシにくれない?」


ヤンキー「なんだコイツ……。本物のバカか」


聖火トーチをミドリに傾ける。


ヤンキー「お前こそ、俺にカードくれよ!」


ゴウ!

火の玉がミドリ向かって進む。


ミドリ「うわ!」


横に飛んでクレーンゲームに隠れる。

通り過ぎる火炎放射。


ミドリ「はあ、はあ、くっそ、話通じない奴か……」


ヤンキー「おーい、カードくれって。聞いてる?」


ミドリ「ここは、引くしかねぇ」


クレーンゲームの並びに隠れるように、四つん這いで逃げる。


ヤンキー「隠れてないで、出て来いよ。カード欲しいんだろ~?」


クレーンゲームの間をヤンキーが覗きながら進む。

近くにいた店員が、腰を抜かしている。


店員「ひ、ひい!」


ヤンキー「あれ? どこいった、アイツ」


ヤンキーの死角をついて、

店の入り口から飛び出す。




ミドリ「はあ、はあ!」


大きな道路沿いを走る。


ミドリ「はあ、はあ、絶対、無理じゃん、はあ、はあ、あんな奴から、カードもらおうなんて!」


深夜の街を駆けていく。




ゲームセンターの中で、スマホに耳をつけるヤンキー。


ヤンキー「ああ、見失った。金髪っぽい、茶髪ロングの女。白のパーカーが、ぶかぶかのワンピっぽい奴、ああ、あ、いた? そう、それ、白かピンクっぽいスニーカー、そう、後つけれる? おう、頼むわ。雑魚狩りぐらいは、絶対成功させなきゃだしよ。」


スマホを片手に、

腰を抜かす店員と、目を合わせながらしゃがむ。


ヤンキー「こっちは俺一人でやっとくから。ああ? 独り占めしようなんて思ってねえから。じゃあな、また後で。……はあ、たくよー」


怯える店員の頭を掴む。


店員「ヒ、ヒイ!!」


ヤンキー「あー、馬鹿の邪魔が入って、予定狂っちまった」


ヤンキーが聖火を店員に見せるように持つ。

火柱が巻き起こる。


店員「う、うわあああ!」


ヤンキー「おい、叫んでないでよ。店に火ぃつけられたくなかったら、有り金、全部集めろ。ついてってやるからよ」


店員の目に写る火柱。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ