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小国のドワーフおじさんは、お人好し。  作者: ke-go
ドワーフとエルフ
6/14

花園

「嫌です。離して!」


弟子1日目。


お店は午後から再開するとドラン師匠が言った。それについて私がどうこう言う必要はないのだけれど買い出しに行くから外套を脱げと迫ってくる。


「あんたの仕事着を買いに行くんだ。外套は邪魔なんだ。」


師匠の命令だから、外套を外して初めて歩くドワーフの街。いつもより視界が広がり色々なものが目に入ってくる分、ドワーフ達からの視線も感じてしまう。


ドワーフはお酒好き。だから街の彼方此方に酒場がある。お昼前から酒場前のスペースで酒をのむドワーフ達。私から見たら異常な光景だけど彼等から見れば私が異常なんだと思う。


目線は合わせない。真っすぐ目線を向けて知らないふりをすれば私から争いは起きない。


ガタンッ!


外の椅子に座りジョッキの酒を美味そうに飲んでいるドワーフ達。その彼等のひとりがジョッキを床に落としてしまった。


理由はシルフィ。


彼女を見たドワーフのひとりが、驚いて酒をこぼしてしまった。因縁をつけてくる。そう思ったシルフィは知らないふりをしながらも腰の細剣の柄を意識していた。


幸い…いざこざは起きなかった。

シルフィが通り過ぎた後、彼等の話題はエルフの話しだけになっていた。


「おら、初めてエルフ見た。」

「俺もだ。」

「ワシもじゃ…えらいべっぴんさんじゃ。ゴク…」


生唾をのむ年配の老ドワーフ。見惚れている彼に周りから野次が飛んでいた。


「興奮すんな…ジジイ。」

「エルフはお前なんか見ねぇけどな!」


なんだとコラ!


酒の力は年齢を若返らすとは言い難いが、馬鹿にされた老ドワーフを中心に朝から酔っぱらいドワーフの喧嘩が始まってしまった。


彼等の仕事に影響がなければ良いのだが、それは彼等の努力次第だろう。


「ここだ。」


ドランが連れてきたのは【酒飲みの味方】と書かれた服屋だった。


「作業着はここでそろうぞ!しかも安い。」


親指を立てて、最高感をアピールしているドラン。シルフィとしてもありがたい内容だが、彼女は店が私を受け入れてくれるかを心配していた。


「いらっしゃい。…ドランかい。今日はどうしたの?」


ドランと変わらない身長。そしてクセが強そうな髪を器用に纏めているのだが、よく見る髪留めではなく…


見たこともない程、大きな洗濯ばさみだった。

これは彼女の個性。それとも、ドワーフ女子の流行りなのか。文化を知らないシルフィは初見で困惑してしまった。


「弟子を取ったんだ。だからよ。作業着をちょっとな。」


「あんたが弟子をとる?あらあら、明日はいよいよ戦争でも始まってしまうのかしら。」


どうやらお話しが好きな店員さんのようだ。ドランと世間ばなしが止まらない。


「それで貴女がお弟子さ…ん。さ、さーーーーーん!」


やはりエルフは受け入れ難いものなのだろう。店の入り口から驚いて展示していた服に絡まり店内を一気に荒らしてしまった店内さん。服の下敷きと成り果てた彼女の居場所は大きた洗濯ばさみの揺れで特定できた。


「エ、エ、エルフ〜。」


目をまわし、天井を見ている店員さん。やはりドワーフにとってエルフは受け入れ難いもので間違いない。


そうシルフィは思っていたのだが…どうやら違う方向へ向かいそうだった。


「うまれて三百年…初めてエルフに会えました。」


天井を見上げ、両手を握り何かに報告している店員さん。そして、彼女の興味はシルフィだけになってしまった。


「美しい。もう完璧よ。貴女…完璧よ!」


胸やお尻。首筋に腕と脚。しまいには足の指の長さを自分の指を広げて測りだした。


微動だに出来ないシルフィは理解が追いつかない。


「前掛け…エプロンと厚手の手袋がほしいのね。」


この人は何なのだろう。私の身体を好きなだけ触り尽くし、ドラン師匠に買うものの確認をしているけど、私を嫌がる素振りを見せないのは商売人のプライドかしら?


「ないのよ!貴女に合う至極の一品がないの。サイズもないのよ!だから…だから私に作らせて。ね、ね、お願い。お願いよ〜!」


困り果てた私は、師匠に視線をむけました。もちろん師匠は私が困るのを予想していたんだと思います。


でも親指を立てても、私にはわからないんです。


だから…助けて下さい師匠。


「いやーーーー!」


店の奥に連れ去られたシルフィ。一度扉は閉められたが、一瞬開いた隙間から洗濯ばさみが見えた。


「男は入って来るんじゃないよ。ここは今から園よ…花園なのよ。」


ドランの反応も見ないで、扉を閉めた店員。しかし、ドランは義理堅く閉ざされた扉に親指を立てる。


店内がガラ空きだ。盗難被害にあったらどうするのだろうか?


腰のハンマーを握り警護をするお人好しのドラン。

外から見れば、あなたが盗っ人に見えるとシルフィなら言うだろう…

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