暴言
「すまねぇ…頼む。」
別に、師匠と共に王城へ行こうと決めたのは私。だから師匠が気にする必要なんて無い。
それよりも、ドワーフの兵隊さん達は朝から忙しいようです。
「は!鍛冶師ひとりに、この人数か。こりゃあ、ジルコラールもいよいよ終わりだな。」
朝から工房周辺が物々しい。昨日、芋団長と呼ばれたドワーフは、数百人の兵士を率いてドランの工房を取り囲んでいた。さすがに街のドワーフ達も、ただ事ではないとドランの工房周辺に集まりだした。
(これでは、多勢に無勢です。)
シルフィは、この現状を危惧した。
数で押されたら、師匠を守りきれない。でも相手は数の優勢で油断している筈。
ほころびを探さなきゃ…
シルフィは剣を構え身構える。自分からは仕掛けない。今やることは剣先を向けたら兵隊さんが、どう反応してくるかの…観察すること。
隊列を乱した場所から、突破口を開いて師匠を守るの。
ひゃあ!
「バカヤロー。挑発してどうするんだ!俺達は城に行くんだ。別に兵がいようがいまいが関係ねぇんだ。」
私の早とちり。師匠を守ろうと焦ってしまいました。
けど…
「何で毎回、お尻叩くんですか!穢れます。」
結局、私達は兵隊さんに囲まれるように、お城に向かうことになりました。
「ドラン。大丈夫か!」
「俺達もついていくぞ!」
「シルフィちゃん。気をつけて。」
街のドワーフさん達の声。街を訪れて10年…私も、街の人達の一員になれていたみたい。
これは、すごく嬉しいこと。だから、立場を利用して生活を壊す偉いドワーフ達に私は怒りが込み上げていた。
「失礼がないように!」
お城を訪れたのは初めて。緊張しますの感情で済めば、それでよかったのに…
私は、どうして権力で街の人達の生活を壊すのか。それが許せない感情に支配されていました。
だから、貴族だろうが、王族だろうが関係ないの。私は、師匠を守る弟子…ではなく今は騎士よ!
「師匠。ここは私に任せて下さい。」
ドランは別に緊張などしていなかった。王とは面識がある。幼少の頃は城にまねかれ共に中庭を駆け回った思い出もある。
むしろ心配しているのは、シルフィの暴走だ。ひとりにしたら、城に特攻しそうな勢いだったからだ。
だから護衛という理由で一緒にきたが…
「師匠に涙は似合いません!」
やっぱり心配になる。昨晩、汗が目に入り目を擦っていたのをシルフィは、涙と勘違いしているようだ。
戦争を見越し軍備強化の為に、優先的に武器防具の鍛冶をしてもらいたい。
それを何度も断るドランに…王が直々に頼む。
兵達は民間人に王自らと…息り立ち。
シルフィは、勝手に騎士になりドランを守る盾になる覚悟を示している。
ドランは謁見する前から、ぼんやり結果が分かっていた。
王の間は…荒れる。と…
「久しいなドラン。」
軽い口調でドランを歓迎する王。
広々とした間でドランの登場を手を広げ嬉しそうにしている。
しかし、ドランは額に手をあてながら、あゝ始まるなと諦め気味な表情をしていた。
「我が名は、シルフィ・レグル・アルバーイン。エルフの里の長の娘なり。訳あってドラン殿に助太刀いたす。おまえら…我が剣の錆になれ。」
ドランに、決まりましたと笑顔と握り拳を見せるシルフィ。ドランは俺が育てる前から、この人なりだと脳内で何度も復唱し自分には非がないと…自分に言い聞かせる。
「王の前で刃を抜くとは、不届き者が!」
「黙れ芋軍団!」
シルフィは完全に暴走をしている。
「勇姿あふれる、挨拶…実に見事。私はジルコラールの王。フセイル・ジルコラール11世である。」
刃を向けたエルフですら、立ち上がりながら手を広げ歓迎するフセイル王。
「かかってこい。芋軍団!」
フセイル王の視界にはいつもの自国の騎士団が、たったひとりのエルフに吹き飛ばされる光景が広がる。
「芋の芋!残るはお前ただひとり!」
百を超えた兵士達は、まるで芋の収穫後のように、王の間で山積みに成り果てている。
「誰もお前の話なんか聞いてねぇよ。」
シルフィが縦横無尽の立ち振舞をするなか、ドランはひとり…フセイル王の傍に歩み寄っていた。
「ドラン…エルフの娘殿とは…」
「ありゃ…駄目弟子だ。」
「……弟子?」
シルフィの細剣を握る手が痺れる。高速突きを斧で何度も受け止める芋と罵られる団長。
彼は決して弱いわけではない。
「防御はなかなか…だがしかし、大振りな斧で私を狩るつもりなら笑止千万!」
防御一辺倒の芋団長…正直、防ぐので精一杯だったが、部下達ののされた姿を見て気力で立場を守ろうとしていた。
「ドラン…あのエルフの娘殿はレグルと名乗っていたが、まさか四天守のエルフなのか?」
「あ…レグル?あいつの名前…なげぇから。俺はシルフィしか覚えてねぇし、何だシテンシュてのは?」
シルフィは、芋団長の斧を何度も何度も、高速の突きで圧をかける。
良い斧なのだろう。しかし、シルフィの突きがその性能を上回る。
その結果が、武器破壊へと繋がった。
「昔、お前と城の古書を呼んだだろ。四大陸のエルフ達が世界樹を守護していると…」
「知らん。忘れた。」
刃の砕けた柄だけとなった斧を握り片膝をつき肩で息をする芋団長。
間違いなく騎士団で一番善戦をした。でも、シルフィには遠く及ばなかった。
「ドラン…知らんで良いが、問題はレグルと名乗ったことだ。この南の大陸のエルフ族はグレン・アルバーインが姓だ。」
「だからなんでぃ!」
細剣を鞘に納め、完勝をドランに手を振りながら身体で表現するシルフィ。
「名が本当なら、彼女は海を渡ってきたことになる。神がつくった、あの海をだ。」
「だからなんでぃ!」
「お前、さっきから、なんでぃ。なんでぃ。うるさいぞ!一応…王だからな私は!」
実は仲が良いフセイル王とドラン。しかし立場上、言葉遣いくらいは気をつけなければ示しがつかない。
王には王の立場。そして、街人にも街人の立場がある。
「場をわきまえろドラン。」
「うるせぇバカヤロー。」




