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パワハラと脅迫

 今後することが出来るであろう実験のことを考えているのか、実に楽しそうにルンルン気分のダヴィさんが高らかにそう宣言した。それと同時に、私たち三人の前に画面が表示される。

「まず、一番重要なことについて。ちょうどいい……って言ったら整備兵に怒られるんだけど、マヤ君のオーラスーツが破損しており、また先ほどの実験でマヤ君が装備していたアクティブスーツに強く反応しているように見受けられた。そのため、しばらくマヤ君はアクティブスーツで任務にあたってもらう」

 これについては予想できることだった。確かにダヴィさんの言う通り、私の小堂丸を手にしたとき、アクティブスーツに非常に反応しているように見受けらえた。私と一番付き合いが長い真矢さんのためということも大いに考えられたが、ならば発光が強くなるだけで、明らかなアクティブスーツに反応を示すようなことはないはずだ。

「リツ君はマテリアルソードの関係もあるので、先ほどの模擬戦同様、オーラスーツでマテリアルソードを装備してもらう」

 これも予想通りだ。ここら辺は驚くことはない。ただ……六人編成が部隊単位となるはずなのだが、追加要員に関していまだ光夜少佐以外について言及してこないのが怖い。実験部隊のため、まさか現時点の三人で任務にあたるのかと、不安に思えたのだが……悲しいことにそれは的中した。

「さて今後の大まかな話だけど、ソウイチ君が空飛ぶ存在となってしまった以上、それについてのデータはもちろん、もっと言えば同じように空飛ぶ兵器を開発しろと、国連から命令が下るのはそう遠くないと私は思っている」

 創造とセットでついてくるのが量産だ。便利なものをより多く、安価に。これは間違いなく誰もが思うことだ。確かに現在飛行するFMEというのを、最初に遭遇したリーレス以外に見ていない。

 もしもこのまま飛行する敵が現れない状態でオーラスーツが自由自在に飛べるようになれば、一方的な殺戮が可能となる。FMEに取り込まれて死ぬという恐怖がなくなるだけでも、戦局的には十分な魅力がある。

「よって、今まで得たデータをもとに、更なるデータ収集が主な任務となるね。具体的にいうとだね……」

 そして目の前の画面が切り替わり、私たち三人が装備した姿と、コンテナのような物体が映し出された。フライトアーマーを装着した私、アクティブスーツの真矢さん、マテリアルソードを装備したオーラスーツ。ここらは私たち三人なので何とも思わないが、コンテナのようなものが謎だった。

(縮尺があってるとしたら……)

 この世界に来てから私が最初に真矢さんと出会ったポッドよりも小さく見える。おそらくだが、オーラスーツを二機搭載することは不可能だと思われる。またそれとは別に特徴的なものが、コンテナの上部分四隅の角に取り付けられていた。フックをひっかけられるような輪っかの部品である。

(どう見ても牽引するための器具を取り付けるための輪っかに見える)

 部隊員三名、わざわざ図面を表示させて露骨に「これしかいない」と強調しているような表記。明らかに上から吊り下げるような器具。これから察するに……

「ソウイチ君は理解してそうだね? 単体飛行はある程度データが取れたので、運搬能力等を検討させてもらう」

 予想通りの言葉だった。そして言っていることは何ら間違ってないので何も言えない。

「もちろん安全には最大限考慮させてもらうよ。このコンテナには反重力発生装置の試作型を組み込む。それを使用したりしなかったりで実験を行う」

 この世界にもSFの最たる科学技術産物として、反重力発生装置が存在する。しかしまだ小型がうまくできておらず、輸送機ほどのサイズがなければ組み込むことができないものとなっている。反重力の力場を小さいものはオーラスーツにも搭載されているが、それの主な目的は重量による部品摩耗を軽減させる目的で搭載されているので、決して空を飛ぶためのものではない。

「まぁ正直に言わせてもらうと……小型化はかなりの難産だから、そう簡単にできないね。それに私自身そこまで興味をそそられるものじゃないので、あくまでも対外的なものだ」

 とんでもないことを言っている。その証拠にチラリと千夏司令に目を向ければ……こめかみに青筋を立てている。触らぬ神に祟りなし。私は何も言わずにダヴィさんの話の続きを聞く。

「しばらくは関東平野の残敵掃討で忙しくなるので、それなりの部隊を関東平野に派遣する。そのため関東平野で実験するのにうってつけな状況といえる」

 平野部の便利さは私がよく知っている。そんな便利で広大な土地を使用できるようにするのは当然といえる。部隊が派遣されている状態での関東平野であれば、万が一があってもそれなりに早く援護が来てくれるということだろう。

「もちろん、最悪の事態を想定して輸送機も上空に待機させる。できれば残ったパラレル部隊の人間を輸送機に詰めておきたかったんだけど……貴重な精鋭を無駄にするわけにはいかないので、輸送機だけだね」

 精鋭中の精鋭である残りの三人を遊ばせるのは、できないようだ。詰めていてくれればありがたかったが、敵の巣が壊れた以上、関東平野は人類の勢力圏になったといっていい。油断はできないが、そこまで神経質にならなくても問題ない。

 ちなみにほかの三人は、輸送機に乗り込んで遊撃部隊として、どこにでも救援に向かえるようにするらしい。極東作戦では残念ながら犠牲者が出てしまい、いくつかの部隊で欠員が出ている状況だが、三人を欠けた部隊の補充要員とはしないようだ。

「各々の装備については、ソウイチ君はまぁ言うまでもないね。リツ君はマテリアルソード以外は通常君が使っている装備で出撃。マヤ君はオーラスーツでの装備を可能な限り再現した、アクティブスーツ装備で出撃だね」

 サイズダウンしているため、基本的にすべて威力が低下しているが、人型サイズであれば問題なく撃退が可能だ。だがサイズの問題もあるため、マテリアルソードは装備できない。必然的に狙撃手主体の装備になるだろう。

 しかし意外なことに、チラリと横目に見れば、以前と違ってほっとしているようには見られれなかった。それどころか……真矢さんが挙手を行っていた。

「質問しても?」

「許可しよう」

「アクティブスーツのオーラソードの装備は可能ですか?」

「おや? 意外だね。君がそんなことを言うなんて」

 真矢さんのセリフにダヴィさんだけじゃなく、千夏司令に璃兜さんも驚いたように真矢さんを見ていた。特に璃兜さんは目を真ん丸に見開いている。何せオーラソードは剣身部分が物体として存在しているので、見た目からして剣と分かるものだ。刃先のみにオーラの刃を形成することで威力が向上するが、携帯性に難がある。

 いろいろ真矢さんとしての事情はあれど、嫌っていた剣という武器を自ら装備することを願ってきたのだから、他の面々が驚くのも無理はない。私は先ほどのやり取りがあったので驚くことはなかった。とりあえず装備することが許され、話を先へと進んだ。

 しばらくは飛び回っての実験データの収集が主な仕事となるようである。たださすがにそれだけでは微妙なので、状況に応じていろいろやることがあるようだ。私たち三人も遊撃部隊として動くこともあるとのこと。

(まぁそらそうか)

 現状、私が最も自由かつ最速に救援に駆けつけることができる。まだ最高速度でどれだけの距離を飛べるかまではわかってないが、それでも小回りで勝てる存在はいないはずだ。そんな存在が関東平野で任務に従事しているのだから、

 援護に向かう場合は、よほどの緊急事態ではない限り、コンテナは放置して真矢さんと璃兜さんを直接運ぶようにと指示があった。コンテナ実験と対外的なポーズのために行っているため、最悪放棄しても問題ないらしい。むろん何事もなければ無駄にはできないので回収するように命じられたが。

 今後は実験データをもとにどのような実験をしていくのかを決めるため、その辺はまだ未定のようだ。そうしてほかにもいくつかこまごましたことが説明されて、一段落がついた。

「では何か質問はあるか?」

「一つあります」

 千夏司令の言葉に、璃兜さんが挙手をする。それにうなずいて千夏司令が許可を出した。

「光夜少佐が現時点で三人の部隊に来る理由は、先ほど二人がいなくなったこと、そして真矢が剣術に興味を示しているのと関係があると思うのですが、それは教えてもらえるのでしょうか?」

 重要なことではないが、気になることなのは間違いない。私が驚かないところから、先ほどの非公式模擬戦が関係しているというのは容易に想像できる。光夜少佐と今後会うこともないとなればまだ放置できるが、現在増員するとすれば光夜少佐のみ、となれば聞きたくなるのも人情だろう。これは千夏司令も予想していたようで、すぐに回答した。

「先ほどこの二人がいなくなったのは、宗一少尉と光夜少佐が模擬戦を行うためだ」

「模擬戦ですか?」

「そうだ。生身で木剣を使用してな。結果は宗一少尉の二本先取かつ、光夜少佐の手が痺れて木剣を握れなくなるという、完封勝利となっている」

「えつ!?」

 光夜少佐の不敗伝説は、どうやらかなり広範囲に浸透しているようだ。璃兜さんが信じられないものを見る目で、私を見てきた。

「これについては彼女の今後にもかかわるため、決して口外しないように」

 箝口令は私たちも含まれているようだ。そのため私たち三人はきちんと了承の意を伝えておく。

「真矢中尉も、その後の話について話すのは構わないが、箝口令の意味を考えて話をするように」

 話す場は考えろということだろう。あえて言ってくることで、箝口令を強調しているようだった。ほかに特に質問はなく、この場は一度終わりとなった。

「宗一少尉は少し話があるのでこの場に残れ。二人の午後の業務はダヴィに任せてあるので、指示に従うように」

 ダヴィさんに任せるのではなく、この場に私を残すというのは珍しいが、おそらく光夜少佐の件だと何となく察せられた。二人はそこまでわかってないようだが、それでも重要な話というのは分かるようで、それぞれが私に頑張れと目配せをしながら退室された。

「さて……残ってもらったがここからはプライベートな話になるので、そこまで気負わなくていい」

「いやそれは……逆に気負うのですが? 光夜少佐の件ですよね?」

 このタイミングで話をするとなるとそれしかないが、それがプライベートな話ということであれば、どう考えてもかなり根が深いというか面倒ごとのにおいがプンプンすることになる。正直かなりいやだったが、しかしそれは何とか表に出さず、話を聞く。

「まず結論から言おう。光夜少佐と私は親戚だ」

「そうなのですか?」

「あぁ。ただこれは大っぴらに明かしていることではなく、ダヴィも知らん。面倒だから誰にも言うな」

 最高責任者と次席責任者というコンビであるので、どちらも互いのことをよく知っているという印象が強い。そんなダヴィさんが知らないのはなかなか衝撃的だった。

「あいつは少々……厄介な育ち方をしてな。強さに対しての執着がすごい」

 育ち方はわからないが、執着しているのはよくわかった。

「そしてそれに付随して……男女の肉体的な意味も少々危ういところがある」

「なるほど、だからですか」

 男女の肉体的な意味で危ういというのは、育ち方が関係しているのだろう。しかし具体的に言ってこないので、かなりプライベートな内容だと思われた。見た目と先ほどのやり取りから察するに、年上なのは千夏司令だ。そして親戚という発言から鑑みれば、従姉妹くらいというそれなりに近しい血縁関係とみられた。ならば親戚といえプライベートな話を、本人の許可なく言うのをためらって濁した言い方になるのは、無理もない。

 礼節的な意味での教育は、そこまで間違っているようには見られなかった。それでも育ちに問題があるというのならば、強さを求めることに絡んだ、「なにか」ということになる。

(もしくは強くなることだけを教え込まれたから、男女の接し方を知らないとかかな?)

 何とも言えない状況ではあるが、本人に確認できない状況で、少ない材料で推論しても無駄なだけだ。それだけで答えが導き出せるほど、私は頭がよくない。

(ミステリー小説とか読む気にもなれなかったしな)

「そういった事情を知っているために、あの娘のことは無下にできなくてな。故に……パワハラですまないが貴様には尽力してもらう」

「してほしいではなくて「しろ」なんですね」

 自分からパワハラだといわれてしまっては、こちらもあまり強く出ることができない。男女の違いも少々曖昧ということなので……どうにか逃げるしかないかもしれない。と、思っていたのだが……

「あぁちなみに、指導に伴ってであれば肉体に触れることは問題ない。あいつもそこらは気にしないだろうからな」

「……逃げ道封じないでください。っていうか光夜少佐が気にしないっていうのは、男女の機微がわかってない故でしょう? ならば本人の意思はあまり意味がないのでは?」

 本人がOKを出していたとしても、その本人が男女の違いを認識してないのではあまり意味がない。もっと直接的に言えば、セクハラを理解していないのではないだろうか?

「安心しろ。さすがのあの娘もバカではない。胸を鷲摑みしたりしたら、その優れた肉体でぶんなぐってくる」

「いや、しないけど、安心できませんよ」

 胸の鷲摑みなどするわけもないがその言い方だと、そこまで露骨でなければわからない可能性があるということ。直接的に言えば、背中や腰、太ももなどに手を当てて触ったりなど……一番直接的な胸や尻以外はセクハラと認識しないかもしれない。

(いくら指導でもそこまで直接的な接触はしないが……そこそこ触らざるを得ないぞ?)

 むろん下心で触るつもりはないが……はたから見ればセクハラ以外の何物でもない場所を触るのだ。正直本当に勘弁してほしい。

「彼女はとても優秀な人材だ。それだけでなく、女の私から見ても非常に魅力的な肢体をしている」

 千夏司令も十分に魅力的なプロポーションだが、光夜少佐はそれをはるかに上回っている。本当に……今までよく毒牙にかからなかったものだ。

「貴様は見た目は青年だが、精神的に老成している、故に大丈夫だとは思うが……」

 わざわざ立ち上がり私のそばに歩み寄ってきて……私の肩に手を置いた。なかなか近しい距離に千夏司令の笑顔があったが、その笑みはすさまじいすごみがあって、実に恐ろしい。

「貴様が肉体の青き衝動に任せて、何らかの破廉恥な行為に及んだとしたら、私は貴様をミサイルに詰めて300kgの爆薬とともに海に向けて発射する。森羅万象と天皇陛下に誓って、貴様を八つ裂きにするつもりだ。必ずや地獄へと叩き込むことを誓おう!」

「いや、誓わないでください」

 何とも恐ろしいことを、怒鳴りこそしないものの恐ろしく怨念が込められた声で告げてくる。それはまさに死の宣告。恐ろしすぎて涙が出そうになるほどに、千夏司令の言葉と笑顔と態度は恐ろしかった。

 






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