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密談

想いを持って面妖を断つ!84話目


第84話 密談

「今回の視察において、ソウイチ君の若返りについては公表しない。並行世界も隠しておきたいのが本音なんだけど、さすがにソウイチ君の兵器が説明できないため、これは伝える」

 これに関しては現在と同じ扱いになるようだ。ダヴィさんが言った通りで、私が身に着けている兵器があまりにも異質すぎる。私は娯楽があふれていた日本の育ちゆえに、そこまで違和感はないが……この世界の人間では意味が分からないものだろう。

「そしてマテリアルソードが反応していることも伝える。まぁこの辺は食い下がってくるだろうけど、そこは任せてくれたまえ」

 ふふん、と自信満々に鼻を鳴らすダヴィさん。ここまでは普段通りというか、いつも通りの態度だったのだが、次の瞬間表情を厳しく一変させた。

「三人に命令するのは、その次の項目だね」

 お願いでもなく、命令という指示。そしてその態度。明らかに厳命されているのがよくわかる。そんなことを重いながらそちらを見てみる。


【宗一少尉の意識喪失について、一切の発言を禁止する】

 

 なかなか強気なことが書かれていた。しかも驚いたことに手書きである。パソコンというか、電子機器を使用しないで作成した様子。よほど情報を統制したかったのだろう。それかこの指示がそれほどまでにやばいのか。その辺は想像するしかなかった。

「あえて言わせてもらうけど、ソウイチ君が意識を失った点については、私たちは疑ってない。データがあるということ、そしてソウイチ君のことをよく知っているってのが大きいことだね。けれど、他の人たちはソウイチ君の人柄を知らない」

 私自身、気になっていたことであり、何度か質問も受けていた。しかしその質問を受けるとき、全員個別で受けさせられていたので、この意識喪失について二人がかなり重要視していることは、何となく察せられていた。

「この点は私も今いろいろ考えている最中だ。だから、他のことについても私たち二人で回答する。けれどあちらも君たちに話しかけてこない……なんてことはないと思う。だから、この点だけは絶対に守秘を貫いてくれたまえ」

「「「了解」」」

「まぁ聞かれても、こちらもわからないから答えようがないんだけどね」

 どこまで本当かはわからないが、いつも通りの茶目っ気たっぷりな態度でそういってくると、少々読みにくいところではある。隠していることは多々あるのだろうが、それでも私や真矢さん、璃兜さんなんかが不利益になることは流石にしないだろう。

「では具体的な予定だが、出迎えた後、軽い説明をしたのちに、野外訓練場に移動する。そして宗一少尉と璃兜少尉で模擬戦を行ってもらう。璃兜少尉はマテリアルソードを装備した上でフル装備。そしてそれは宗一少尉も同じだ」

「えっ!?」

 この内容に璃兜さんが悲鳴にも近い声を上げた。真矢さんも声こそ上げてないが、驚いて千夏司令へと目を向けている。そしてそれは私も同じだった。

(フル装備って……フライトアーマーを用いてって意味だろう? 純粋に模擬戦に成るのか?)

 空を自由自在に飛べるのだ。その戦力差とはもはや隔絶したと言って良いほどに、戦力に開きがでてしまう。確かに璃兜さんは剣と楯を用いた戦闘が得意なのでそれなりに持つだろうが、それでも一方的な試合に成るのが道理だ。

「この仕合においては、申し訳ないが璃兜少尉の身の安全こそ保証するが、負け戦をしてもらう。どれほど宗一少尉が問題なのかを知らしめるためだからな」

「ひ、ひどくないですか?」

 これに関してはその通り過ぎて何も言えなかった。

「またマテリアルソードが本当に使用できるのかを公開する場でもある。公開処刑みたいな事になるが、耐えろ」

「りょ、了解」

 完全な命令であるため拒否も出来ない。一方的に撃たれるだけの仕合を強要されるのは……なかなかきついものがあるだろう。

「マヤ君はその間、アクティブスーツで野外演習場で待機してもらう。マテリアルソードをリツ君が使用したときに、マテリアルソードと、マヤ君の半壊しているオーラスーツが反応したのはデータで確認しているからね。何か新しいデータが取れるかも知れない」

「了解」

 野外演習場の模擬戦の後、次は屋内で的などに射撃などをしてのデータ解析などを行うとのこと。直接的な質疑応答のようなことはしないらしい。こちらとしてはそちらの方がありがたかった。

(口を滑らせるか、割らせられそうだしなぁ……)

 海千山千の歴戦の勇士である光夜少佐や、他の基地の司令。他の基地の司令はパラレル部隊にはすこぶる評判は悪かったが、それでもこの戦時中の世界で基地司令にまで上り詰めたのだ。実戦を知らなくとも、口や頭は回るだろう。

 仮に賄賂やコネ、ごますりで偉くなったとしても、それでもこの世界で偉くなったのは事実。私が相手ではあちらとしても簡単だろう。

 そんな色々と不安に思いつつも、千夏司令とダヴィさんがいるので恐らく大丈夫だろう。またここで私があーだーこーだ考えたところで、どうにかなるわけもない。

(案ずるより産むが易し)

 という、明日の自分に丸投げすることにした。




 翌朝。午前八時。視察団を乗せた輸送機が、秩父前線基地の格納庫に着陸した。佐野前線基地、筑波前線基地の司令官とその護衛。基地司令はどちらもそれなりに年配の人だ。しかしどちらも……あまり軍人らしくない体をしている。具体的に言えば少し太り気味だ。

 以前ドゥ大尉が、現場を知らないと吐き捨てていたことから、戦場に出たことがないのかも知れない。事務方であっても、最低限の訓練は受けているはずだが、その様子も歩いている姿からは見受けられない。何よりもあまりに覇気がない感じだ。

(なるほど。コネって線が強そうだな)

 それに対して護衛はどちらもアクティブスーツを着込んできており、なかなか高圧的な態度を装備で示していた。アクティブスーツのおかげで少し分かりづらいが、それでも歩いている姿に隙はほとんど見受けられない。現役軍人なのは間違いないだろう。

 そしてそこから更に下りてきた三人。その三人を見て……私は必死に視線を固定するはめになった。

(でっか)

 俯瞰的に見ることで、何とか誤魔化しているのだが、私の目は国連軍からの派遣と思われる三人組の一人に目がいっていた。

 先頭の女性が色んな意味で大きい人だったのだ。まずは背丈が高い。親友の一人が178cmの男がいたが、そいつとほとんど差がないように見受けられた。

 そして下衆な話、胸がでかかった。驚いたことに真矢さんよりも大きそうである。確かに背丈が高いため全体的に大きくなるのは必定だが、それでもでかい。

 髪は腰まで伸ばされたストレート。顔を見れば先日の赤紫のオーラスーツの搭乗者の顔だったので、この人が光夜少佐であると判断が出来た。背丈が高いので好みは別れそうだが……顔は柔和な美人、体つきはボボンキュ、ボボンな抜群のスタイル。軍人故に肉体は無駄がない。男好きされそうな体をしている。

(迫力があるな……)

 と、安易で最低な品定めのような事をしていたのだが、その身からあふれ出る気力は他を圧倒するほどだ。後ろにいる二人の内一人は、光夜少佐よりもガタイがでかく背も高い男なのだが、その男よりも圧力を感じるほどだ。歴戦の勇士なのは間違いがなさそうだった。

(これは……厳しく追及されそうで怖いな)

 そしてその光夜少佐の後ろから歩いてくるのは、180後半はありそうな背丈の男だ。ガタイが凄いでかい上に、引き締まっている。正に筋肉モリモリマッチョマンの……マッスル! という感じである。此方も実に整った容姿をしている。髪を後ろで乱雑にまとめて、豪快さがでている感じだった。

(ごついな)

 最後の一人は二人に比べれば特徴はほとんどなく、普通の外国人だった。金髪で白い肌。顔の造形から察するに、欧州の人であると何となく察せられた。

 一通り全員が挨拶をすると、時間も惜しいとでもいうように、野外演習場へと足を運ぶこととなった。その間も、一部の連中……いや正直に言うと、二大基地の連中の侮蔑とも言える視線が本当にうざかった。

(本当に目は口ほどにものを言うってのは、真理だなぁ)

 私が仕事をしていた年代の時、悲しいことだがどうしても仲良くなれない人間というのは存在した。そしてそういう連中に限って……パワハラという、上という立場を利用しての嫌がらせというのをしてくるのだ。そしてそんな連中に共通していたのが、口が悪く性格も悪いが、それ以上に……目が腐っていた。本当に。

(腐っていたも変か? というか……侮辱ないし侮蔑をしているのが、目で分かったなぁ)

 目は口ほどにものを言う……これは数百年使われてきた表現だろう。それが何故今でも使われているのかを、身をもって教えてくれた。それだけは感謝しても良いかもしれない。

(……まぁその時に比べれば、まだマシかも知れないが)

 当時も剣術を習っていたので、最悪……殺すことも出来た。無論、殺して豚箱に行きたくないし、現代に脈々と受け継がれている、剣術という概念をクズどもの血で汚したくなかったという理由が大きい。

 しかし……殺そうと思えば殺せた。それが大きい精神安定剤といえた。

 そして今のこの世界においては……現実世界では最悪にして最終手段だったが、戦争をしているという状況下では、戦力という実績があればある程度は目を瞑ることが出来るという確信がある。極端なことを言えば、人を一人殺してもそれ以上に敵を殺せば……帳消しになるほどの状況なのだから。

(面倒事が起こらなければ良いがなぁ……)

 そうは思うが……それはどだい無理な話だった。しかしそれを解決する物を……私はすでに持っていた。


 そのことを完全に失念していたのだ。


 何故失念していたのかも……気付くことなく。




 そうして実験という名の、いじめが始まった。

(いじめるのは私なんですがね)

「はじめ」

 まるで公式試合とでもいうように、野外射撃訓練場の中で、数メートルの距離を置いて対峙した。生身の私と、フル装備のオーラスーツに乗り込んだ璃兜さん。璃兜さんはすでにオーラスーツに搭乗しており、エンジンも戦闘出力に回している。正に引き絞られた矢そのものと言っていい。

 常識的に考えればそれこそ勝負にならず、私が数秒もせずにひき肉にされるだけのはずなのだが、そうはならなかった。

 何せ私は一秒に満たない時間でパワードスーツとフライトアーマーを装備して、空へと飛んだのだから。

「!?」

「これが……」

 観測室で驚いているのがそれとなく感じられたが、それも当然だろう。

「っくそ!?」

 唯一といっていい勝機を逃した璃兜さんから、悪態の声が漏れる。私の装備がどんなものなのかということを見せるための模擬戦のため、ここで手を止めるわけにはいかず、私は意識を集中し、直線に飛び上がりつつ、背面の火砲に意識を割く。

「ファンネルレーザー」

 ぼそりとつぶやいて……六つの軌跡が背面より生まれる。曲線を描きながら高速で移動するそれを、私は加速する意識の中で、それぞれの軌道を描かせて璃兜さんへと攻撃する。

 意識が加速し、六つの軌跡を操り……襲わせる。念のため四肢にのみ狙いを集中させ、すべてが命中する。

 システムが組み込まれてないため、完全に私の意志で軌跡も出力が決まることになるのは実験で分かっている。そしてこの模擬戦を行う前に行った実験では、最も弱い出力で放った場合、オーラスーツを損傷させない出力になることは確認された。

 逆に、どれだけ最低出力と強く意識しても……アームキャノンは許容範囲を超えてしまった。そのため。この模擬戦での攻撃は、ファンネルレーザーに限定されている。

(光学兵器はすごいな)

 撃った時には当たっている。そういって差し支えないほどの速度があるのだ。その光学兵器をある程度とは言え操れるほどの思考加速というのは、どれほどのものなのか……学者ではない私ですら非常に興味をそそられる。

「勝負あり。ソウイチ君の勝ちだね」

 最低出力のために機体にほとんど影響はない。そのため見た目には変化はない。また放った攻撃も光線だ。刹那の時間で迫るそれを視認できないが、機器が敗北を判定しているのだから、誰もがそれを認めざるを得ない。

「璃兜少尉には悪いが、それなりの数をこなしてもらう」

「……了解です」

 データをとるためとはいえ、ほとんど負け続けろと言われているようなもののため、その胸中や忸怩たるものだろう。しかしそれでも命令が下されれば、指示通り動かなければならない。人生とはままならないものである。

 しかしそこはさすが精鋭部隊の一員に選ばれる人員。すぐに私の弱点を見抜かれた。

「そこっ!」

 短いが、鬱憤が溜まった怒気が込められた怒号が、璃兜さんから上げられる。

 驚いたことに、オーラファンネルレーザーの弱点ともいえる、発射と同時に意識を軌跡誘導に割かれるという欠点を、数試合で璃兜さんに見抜かれた。こちらが発射すると見抜いたその瞬間に、本体である私の移動軌跡を先読みし、正確に撃ち抜かれた。

 オーラファンネルレーザーは背面から発射され、さらに弧を描いて発射される都合上、同時に撃てば間違いなく向こうが先にあたる。さすがに致命傷を負うほどの正確な射撃はできないが、私は音速に近い速度で移動している。その私を正確に目で追い、予測して撃ってくるのは並の感覚ではない。

(人のことさんざん変人扱いしてるけど、この人も十分変人だろ)

 しかし私とてバカではない。対策されてしまえばその対策を行うのは道理であり、撃ちさえしなければ自由自在に飛べるのを最大限活用し。動き回るだけのこと。そしてそれは飛行だけではなく……

(地を駆けるのも問題はない!)

 禁止されているのはあくまでも攻撃手段のみ。ならばそれを逸脱しない範囲で勝つために動くのは悪いことではないはず。墜落するように演習場に着地し、衝撃と土ぼこりを回せて体制を崩し、視覚を奪う。一瞬でもほかのことに気を取られたその瞬間、こちらの勝ちが確定する。

「ファンネル!」

 いくら戦車よりも俊敏に、機敏に、早く動けて、そして射角が自由に取れるといっても、しょせんは二次元起動。三次元起動ができるうえに、小型ゆえの狙いにくさなども駆使すれば、そうそう負けることはない。

 何より、此方も二次元機動をするのであれば、ファンネルに気を取られたとしても、十分に体を動かすことが出来る。それらを駆使すれば、負ける方が難しかった。

「それまで」

 二桁は越えたであろう位の模擬戦という名のいじめを行わされていたら、千夏司令がそう告げて終わった。結果としては当然こちらの圧勝。むしろ完全勝利にできなかったことを、恥じてもいいくらいである。

「次は地上戦で接近戦を行ってもらう。当然こちらは射撃武器は使用不可だ」

 マテリアルソードのデータをとるためそのような指示が出る。飛ぶことができないで、私は必然的に……ほぼ完全な人のサイズになってしまう。それに対して相手はオーラスーツ。3mを超える鉄の巨人と相対しなければならない。

 パワードスーツを纏っているので何とか平常心が保てているが、常識的に考えて、3mのロボット兵器に、己の肉体サイズで戦いを挑めとか……鬼畜の所業ではなかろうか?

(しかも得物は木刀一本)

 私の見た目がパワードスーツでなければ、まさに虐殺にもならない。ただの公開処刑だ。

 しかしその常識的に考えるのも、あくまでも私の常識で考えればの話である。

「はじめ!」

 千夏司令の合図とともに、璃兜さんが右手に持ったマテリアルソードを振り下ろす。それを迎え撃つはパワードスーツに比例して、ちょっとだけ大きくなった木刀だ。私の常識であれば、木刀は一瞬でへし折られて、私はぐしゃぐしゃにつぶされるのが落ちである。しかし、そうはならない。

!!!!

 金属の塊を木刀で受けたことによる、実に鈍い音があたりを木霊する。私の常識では折れるはずの木刀は折れず、つぶれすはずの私の体はつぶれない。衝撃的な状況である。

「なんと!?」

「これほどとは……」

 そしてその衝撃的なことは、私よりもこの世界の住人のほうがより衝撃的に映った光景のようである。通信から届く声から驚いているのがよく分かった。それに気を一瞬だけ取られるが、すぐに目の前の出来事に意識を集中させる。

 私の常識ではない、オーラエネルギーが壮絶ともいえると考えられる私の木刀は、フライトアーマーを身に着けたことでさらに強化され、もはや決戦兵器というべきものへと進化していると教えてもらった。ゆえに、マテリアルソードと打ち合う模擬戦も、マテリアルソードが問題ないと十分に検証したうえで、こうして実現させていた。

 といっても万が一があるので、私は基本的に受けるのみで、私から攻撃することは禁止されていた。大型種にすら有効であるマテリアル兵装に、万が一があってはまずいからだ。

 パワードスーツとオーラスーツのサイズ比もあって、基本的に振り下ろされるか、薙いで来るかのしかなく、ある程度攻撃が限定されるため、いなすのはそこまで問題ではなかった。

「さすがね! 宗一少尉!」

「おほめいただき光栄です」

 わずか数分で三桁に及ぶほどの攻撃を繰り出してくる。私のパワードスーツもだが、オーラスーツの性能にも驚かされてばかりである。

「……こいつは」

「……」

 そんな中、切り結びに集中していた私は、私を射抜くような目でこちらを観察していた、一人の視線に気づくことはなかった。







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