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新装備

「………………頭痛くなってきた」

 それが私の録画記録を見たうえで、私の説明を聞いてから、最初に漏らした千夏司令の言葉だった。対して大興奮という言葉では済まされないくらいに、テンションが最高潮に達し、目をキラキラさせながら画像やら動画データを、一言も発することなく分析しているダヴィさん。そんな二人を見ながら、私は内心で苦笑するしかなかった。

 部隊と合流した私だったが、その瞬間に私に箝口令の指示が出たのだ。いろんな観点から鑑みてもそれも、道理だというものである。また、無駄に目立つのもよくないので、部隊と合流してからはフライトアーマーの装着を禁じられた。

 といってもすでに飛び回った後で、しかも私の装備はオーラスーツではなくパワードスーツ。サイズだけで見れば、部隊の中に一人だけ歩兵が紛れ込んでいるような状態である。オーラスーツの望遠機能はかなりのものであり、帰路の途中で様々な部隊から、注目の的だったのは間違いないだろう。

 そのため通信にも制限がかけられ、基地に帰投したその瞬間に、私は一言も発することを許されず、司令室まで呼び出された。ほかの隊員も会議室に直行を命じられているようだ。会話こそ禁じられてないようだが、それでも帰投してもいまだ通信制限をかけられているので、実質的な軟禁状態である。

 多少の不満はあるだろうが、それどころではないのは隊員たちもわかっているとは思うが、文句がないことを祈るしかない。しかし迷惑をかけているのは間違いないので、今度何かしらのお詫びをすべきだろう。

(しかし……一人称視点でしかも録画した本人ゆえに、目新しさというか新鮮味はないが、やはりとんでもないことをしているな)

 一通りの報告を終え、二人ともいろいろ思考しているのか沈黙してしまったので、映し出された映像を注視する。デビルダムガンとの接触からの映像が流れ始めたのを見て、よくぞ戻ってきたものだとそんなことを考えていた。

 現在私が知り合えている火砲は、自分のアームキャノンとドゥ大尉のマテリアルライフル、真矢さん、璃兜さん、煉道中尉、燐中尉のオーラ兵装。そして例外としてオーラキャノンとなる。攻城兵器というべき個人で携帯できないオーラキャノンを除けば、最強の火力はドゥ大尉のマテリアルライフルとなる。

 現実世界のスナイパーライフルというものは、大まかに分けて二種類ある。一つは狙撃銃という、名前そのものの銃のもの。もう一つはアンチマテリアルライフルを狙撃銃として使用している場合だ。

 狙撃というのは物理法則やらに大きく影響を受ける。実弾を使用しているため、どうしても気圧や気温、風などの影響を強く受けるからだ。遠距離になればなるほどに、それが頼顕著になっていく。そのため2kmといった超長距離狙撃の場合は、狙撃銃を使用しても、弾丸のサイズもあって、風邪やら気温、気圧の影響が大きく影響して、まともに狙撃ができないのだ。

 その場合に用いられるのが、対物銃というアンチマテリアルライフルだ。元来は戦車の装甲を打ち抜くために開発された銃だ。そのため、弾丸がめちゃくちゃでかいのだ。そのでかい金属の塊を打ち出すために火薬の量も多い。そのため長距離で安定して飛ばすことが可能なのだ。

 話がそれたが……威力や安定性を上げるためには、大型化というのは避けられない。これは物理的な障害である以上、どうしても避けられない問題だ。

 この世界オーラ兵装もそれに漏れてはいなかった。撃ちだすのが使用者の体力ということで物体ではないのだが、それでも威力を上げるためには銃器そのものを大型化しなければならないという、宿命からは逃れられていなかった。

 そのため、特殊な武器でもない限り、携帯可能な銃器における最強の武器はマテリアルライフルとなっている。オーラ兵装で見ても……というよりも取り込んだ物体に左右されないオーラ兵装がより顕著に、大型化の影響が威力として反映される。

 しかしそれに当てはまっていないのが、私のパワードスーツのアームキャノンだった。録画しか判断材料がないため、明確なところは不明だが個人的な意見を述べるのであれば、おそらく出力だけで言えばマテリアルライフルを上回っているように見受けられた。さすがにオーラキャノンを超えるとは思っていないが……それでもサイズから見れば異様な出力といっていい。

(純正だからかな?)

 私のパワードスーツはほかのマテリアル兵装と違って、オーラマテリアルのみで形成された武器であり防具だ。オーラ兵装は変換機の一部に、マテリアル兵装はそれなりの量のオーラマテリアルを使用するが、パワードスーツは100%だ。マテリアル兵装となっている木刀についても、もはや取り込まれているといっていい状況になっている。

(……改めて考えるとすさまじい異質さだな)

 おまけに今回の作戦で極東一号に、ため込まれていたと思われるオーラマテリアルを私が全て取得している。そしてそれに伴って、飛行能力を得たという状況である。

(この世界の航空機は、今現在ほとんどオーラスーツの輸送機ぐらいしかないからな)

 輸送機にも迎撃用のオーラ兵装は搭載されているが、戦闘機などの兵器は、この世界では運用されていない。勉強したところによれば、爆撃等ができないのと、飛行種が少なからず存在していることが、大きな要因となっている。

 高高度からの爆撃で一網打尽にできればよいのだが、基本的にオーラ以外の攻撃をFMEは受け付けない。また結構俊敏に動くので、戦闘機の音速機動では狙いにくいこと、そして戦闘機に対抗して、変化や進化をするのを防ぐためらしい。

 そんな状況で生まれたのが、パワードスーツだ。人型サイズで銃器に関してはマテリアルライフルに迫り、近接武器に関しては最強クラスの威力を所持している。挙げ句の果てにオーラスーツより小型な、単体で飛行能力が可能な存在が生まれた。しかもその飛行能力は、少なくとも完全状態のオーラスーツと胴体と腕以外ほぼ壊れているが、オーラスーツ二体を高速で運搬することも可能な推力を有している。

 さらには六つのオーラ熱線を、発射する攻撃機能まで付いている。感覚的になるが、多少の思考による追尾が可能な光線だ。追尾可能なことは映像記録が証明している。あまりにも規格外すぎる代物だった。

(頭痛がして天を仰ぎ見たくなるのも無理もない)

 そんな記録を見せられて、今後どうすべきか考える上の立場の人は……大変だろう。決して他人事ではないのだが、それでもまだ少々実感が湧かない私としては、どこか遠いことのように感じてしまう。

(暢気過ぎるか?)

 立場故の難しさは私には分からないので、申し訳ないが私は私で少し考えることにした。影響といった事や、この後起こるであろう、別の基地や国連からの質問攻めなどは……一旦考えないこととした。

(飛行能力を得たのは大きいが……それよりも良いのはファンネルレーザーが一番大きいか?)

 思念誘導が可能なレーザー兵器。まだ写真撮影とかを行ってないので明確な発射場所は謎だが、背面から発射されていると思われるレーザーの数は六つ。しかも意識の加速による恩恵で、ゲーム感覚に近い形で敵を狙って撃つことが出来た。

(十分な兵器なんだが……欠点もある)

 これを欠点というのは私が逃げているだけかも知れないが……この思念誘導を行っている時、肉体を動かすことと飛行の制御を行うのが出来なかった。端的に言えば飛行ないし体を動かすことか、ファンネルレーザーの照準のどちらかしか、行うことが出来ないのである。

(パワードスーツで強化されていると思えても、所詮はマルチタスクの出来ない頭の固い老人のおっさん。無理もないと思いたい物だ)

 また当然といえば当然だが、あまり攻撃力が高くない。小型種なんかは一撃で倒せるのだが、大型種にはほとんど効いてなさそうだった。雑魚の露払い程度が限度だろう。

 しかしその威力が低いという欠点すらも、私の場合はあまり問題にならなかった。

(木刀の威力も上がっているように思えたが……オーラマテリアル取り込んだからだろうか?)

 私のパワードスーツが取り込んでいる、愛用の木刀。これがあるために……武器の威力が低いという観点のみで考えれば、あまり問題にならない。

 光夜少佐と大型種との戦闘を遠目から確認はしていたが……光夜少佐が剣一本で良い勝負をしていた。遠目に見ているときには気付かなかったが、先ほどの会話の最中に観察させてもらったのから察するに、明らかに普通のマテリアル兵装ではない。この世界においても、相当上のマテリアル兵装だと思われた。

 そんな、この世界でも上の方に行きそうなマテリアル兵装であっても、まともに手傷を負わせることが出来なかった大型種のディエ。そんな大型種の足一本と、胴体を吹き飛ばした、私の木刀。あのときは剣を振るっていたために気付かなかったが、相当凄まじいことをしたのは間違いないだろう。

(取り込んだだけで、あそこまで威力が上がるのか?)

 学者でないどころか、この世界の常識すらもまともに分からない私だが、それでも少し違和感を覚える状況ではあった。威力が低くて苦戦するよりはよっぽど良いのだが……少々ご都合主義が過ぎる嫌いがある気がした。

(まぁこれについては、少し落ち着いた後のダヴィさんと相談だな)

「どうするか……。面倒になってきたので、いっそ実験動物も手か?」

 ぼそりと、実に不穏なことをつぶやく千夏司令に戦々恐々とするが、外道ではないことは十分に理解している。故に、ただのボヤキとしていっただけなのは、すぐに理解した。また仮にそれをしようとしても、ダヴィさんが阻止してくれると思えた。

(それか嬉々として、実験動物扱いするかの二択かな?)

 自分の出来事なのに不穏な想像をしてしまっているが……なんとなくそうはならないことは、二人の人柄をそれなりに理解しているからだろう。ダヴィさんがちょっと読めないが、それでも彼女は人道的な人物だ。実験動物にするにしてもストレス等はなるべく与えない方向で、進めるタイプ。ゆえに、非人道なことはないと思えていた。

(そう考えると少し科学者として不向きか?)

 平和な世の中であればそれでもいいだろうが、今は世界大戦ならぬ、惑星間戦争ともいうべき状況だ。確かに明日にでも滅ぼされるほど追い詰められていないが、じわじわ真綿で首を締めるかのような感じで、追い込まれているのも事実。そう考えると……たかが一個人の人権など無視して、人類のために非人道なことでもすべき時では、あるかもしれない。

(しかもその対象が並行世界の人間であればなおさら……)

 なんというか……本当に私事なのにずいぶんと達観的というか、俯瞰的に物事を見られる自分に驚いている自分がいた。確かに初老のじいさんなので、この基地の中でも間違いなく精神年齢的には最年長だが……時間が経過しただけの老人でないとは思いたい……ここまで達観しているのは、正直自分で驚いていた。

(余命いくばくから若返って復活し、戦場に出たことによる変化か?)

 そういう意味では間違いなく波乱万丈な状況で、目まぐるしい変化についていくのに精一杯。自分についてあまり考えている余裕がないのも事実だが……自身の心境に、少し無頓着すぎたかもしれない。その辺少し考えるべきだろう。

(メンタルケアって何かしてるのかね?)

 戦争中でいつ死ぬかわからない。戦争ゆえに死に方が多岐にわたるうえ、おそらく最悪な死に方は敵に生きたまま取り込まれること。それを踏まえれば基地に心療関係の設備がないとおかしいので、その辺後日案内してもらってもいいかもしれない。

「……いろいろ聞きたいことは山ほどあるが、貴様だけは別口でいいだろう。まずは別の連中から話を聞いて、奴らだけでもさっさと開放するか」

 燃え尽きたといわんばかりに、背もたれに深く深く体を預けて天を仰いでいた千夏司令。とりあえず方針を決めたらしい。

 すぐさま通信してほかの隊員たちを呼び出した。時刻は現在正午に差し掛かったばかり。私だけは別口、奴らを解放という言葉から、おそらくこの後も拘束されるのが目に見えたため、内心で苦笑するしかなかった。






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