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衝撃な出会い

(新手!?)

 隙を作らぬように最低限の情報だけを確認したUYL……光夜は、迫りくるものが未確認飛行物体であると確認して、内心で舌打ちをした。

(まずいですね)

 データと照合しても何もわからないため、敵の新種であると考えらえたため、内心でかなり動揺していたが、光夜はそれを微塵も出すことなく……苦渋の決断を選択しようとした。その時だった。

【■■■■■】

(えっ?)

 動揺し、わずかながらも隙を見せてしまったというのに、ディエはその隙に攻め込んでくることはなかった。むしろ飛来する何かを警戒するような仕草を見せるディエに、光夜は今度こそ傍から見てもわかるほどに動揺した。

 その動揺を吹き飛ばすような、六つの閃光が……ディエへと飛来した。

【■■■■!!】

 短く吠えたようなしぐさを見せて……ディエが飛来する六つの閃光を腕の盾で防ぐ。六つゆえにすべてを防ぐことはかなわなかった。しかし被弾した個所は多少の損傷を与えただけで、致命打には程遠いものだった。

「固い、いや……出力不足か」

 そんな声が通信越しに届く。そのあとすぐに新たに六つの閃光が飛来し……ほかの隊員たちに、群がっていたFMEを貫いて消滅させた。

「何!?」

「今のは?」

 明らかにFMEを攻撃する意図をもって放たれた、その閃光。そしてその閃光を放った存在に目を向ければ……全身鎧を纏った人が飛んできているのが見えた。

(援軍?)

 どう見てもFMEとは違う見た目と行動、そして漸く確認できた発せられるコールサインから友軍だと思われた。

 しかしオーラスーツとはあまりにも違うその兵器について全く情報がなく、安易に断定できない状況だった。何せ人型サイズで自由自在に飛び回る兵器など、噂でさえ聞いたことがない。

 それも……オーラスーツで計測すれば、本体と思しき中身の人型は、ほぼ人間のサイズと同じだ。オーラスーツの最初期である、パワードスーツを目指していた理想型であるような……そんなサイズだった。

 コールサインはP1。それがどこの部隊かをデータ照合を行って……光夜はある程度納得した。

(千夏さんがいる秩父前線基地所属。なるほど)

 千夏の秩父前線基地所属と言うことで、多少は納得することが出来た。千夏がいる秩父前線基地には、世界最高の頭脳と言われるダヴィ技術中佐がいる。ならば彼女が新兵器の開発に成功したのかも知れないと……光夜は無理矢理自分を納得させて、その疑問を一度封じた。今すべきことは考えることではないからだ。

「ならこれはどうだ!」

 此方に飛来しながら……右腕を突き出してくる。そこには火器の発射口というべき物があり、それを見て光夜はそれが銃口だと直ぐに判断できた。そしてそれは予想と違うことなく発射されて……ディエへと命中した。

【■■■!?】

 命中した箇所が溶解するような損傷を受けて、ディエが悲鳴を上げた。それを見て……光夜は今度こそ明確に隙を晒すほど瞠目した。

(何という威力!?)

 人型サイズの右腕から放たれたとは思えない火力に驚く。しかしそれが朗報であることは考えるまでもない。何せ空を飛び、遠距離攻撃で一方的に殲滅できる事が可能だと分かったのだから。

 しかし……そんな光夜の甘い考えを即座に否定するように、ディエが短く咆えると尻尾の先の槍を飛行してくるP1へと向ける。そして直ぐに槍が四方に分かれて……そこから閃光が放たれた。

「なっ!?」

 光夜は驚きの声を上げざるを得なかった。確かにディエは大型種で危険であると周知された個体。しかし唯一の救いはリーレスなどのFMEと比べ、飛行能力を有していないこと、そして遠距離攻撃とも言える攻撃手段を有していないことだった。

 だがそれがたった今……覆されてしまった瞬間だった。強大な個体であるディエが遠距離武器まで使用するようになっては……今後被害が致命的なまでに拡大する恐れがあった。

「っ!?」

 幸いなことに、P1がその攻撃を躱したことで光夜は安堵した。まだ訪れない未来を嘆くよりも、まずは目の前の事態の対応をしなければならない。援護に来てくれたこの存在に、今最大の脅威となったディエを、共に討伐しなければならないからだ。

「聞こ――」

 そのため光夜は……ディエの注意がP1へ向いている今がチャンスと思い、通信をつなげようとした、その瞬間。

「面倒な!」

 そう咆えると……P1が地面へと突撃するようにして、角度を少し変えて落下し、激しい砂埃と振動を生み出した。その砂埃の中心部へとディエが再度槍から閃光を放った。その直ぐ脇から……完全な人型に変化したP1が凄まじい速度で走ってきて、再度光夜は声を上げるほど驚愕した。

「なっ!?」

 オーラスーツでも微かに見えるほどの超加速で……P1がディエへと接近する。先ほどまであった巨大な鎧のような武装が消えて、実に動きやすそうな格好に変わっていた。

(というよりも、完全な人型……)

 巨大な鎧を脱ぎ去った事で、完全なパワードスーツに変貌したと思えるその姿に、光夜は戦闘中ということも忘れて思わず見入ってしまった。

【■■■■■!!!!】

 もはやディエも光夜に興味はないとでも言うように、完全に意識をP1へと向けていた。ディエが槍を開いた砲で、P1を何度も狙って撃った。アームキャノンのみとなったP1は無駄に撃つことを止めて……必死になってディエへと向かって走っていた。

 その右腕の砲口から……眩い光が溜められているように光り出したのを見て、光夜は咄嗟にその光のオーラエネルギーを測定して、驚愕した。

(マテリアル兵装よりも更に強大な数値!?)

 あまりにも強大すぎる数値が検出されて、光夜はその光に意識を向けた。P1は……最小限の動きでディエの閃光を避けつつ近寄り、見上げる位の距離になった瞬間に、砲口を斜め上のディエに向けた。

「喰らえ!」

 怒号と共に眩く太い閃光が走った。その強大なエネルギーはディエも検知していたのか、受けることをせずに回避行動を行っていた。


 それが……最後の行動となることも知らずに。


 あまりにも驚きの連続で光夜も何が何だか分からず、普段通りの冷静な思考をすることが出来ていなかった。

 

 パワードスーツを用いたP1……宗一の動きがあまりにも規格外過ぎた。


 そして……宗一がそれなりの実力者であることを、光夜は知らなかった。


 故に、光夜は宗一の姿を見失った。


(どこに!?)

 少し離れた位置にいる光夜ですら見失うほどの動き。それはパワードスーツの異常な機動力と機動性、そして……宗一の修練が生み出した物だった。

 そして距離を離した光夜ですら見失ったP1の姿を……チャージショットという目くらましを喰らったディエが見失うのは、ある種自然の事と言えた。

【■■■■■!?】

 咄嗟にとでも言うように、ディエが周囲を見渡した。しかし直ぐに見つけることが出来ず……わずかでも隙を見せてしまった。

「隙有り」

 そんな言葉が光夜の耳朶を打った。その声がディエに聞こえたのか、声がした方に……視線を投じようとした。声がした瞬間に宗一の位置を把握した光夜は……何度目か分からぬ驚愕を覚えさせられた。P1がいた位置は……ディエの背中より生える触手のほぼ真下。

 P1が小さく呟き、光夜が見つけ、ディエがP1へと意識を向けようとした。その前に……いつの間にかP1の両手に握られていた木刀が、閃いた。

「ふっ!」

 短い呼気と共に横薙ぎに振るわれた木刀。それはディエの足に触れたその瞬間に、まるでディエの足の存在を完全に否定するように、凄まじい勢いで吹き飛ばしていた。

【――――――――!?!?!?!?!?】

 もはや聞こえないはずの悲鳴すらも上げられないようだった。吹き飛ばされたのは振り抜いた箇所だけではなく、足一本を見事に消し飛ばすほどの威力を有していた。

 そして……足一本が丸々吹き飛ばされた事でバランスが崩れたのか、殴打された衝撃と足を失った衝撃で故か、ディエが地に伏した。

 その痛がり方から、足が吹き飛ばされただけではないのが、何となく想像できた。何せその想像を強いるように……P1が手にしている木刀が、淡く光っていたのだから。

 ディエにとって致命的であり、P1にとって絶好の機会を逃す理由はなく、P1は跳び上がって虫のような下半身の上に立ち、背中の触手の付け根に向けて、大上段に構えた。

「づぁっ!」

 P1の木刀が振り下ろされたその時……まるで二度目の日の出が昇ったかのように、一瞬だけ眩く光り輝いた。その輝きがまるで打ち込んだディエに吸い込まれていくかのように振り抜かれ、足の時同様、触れたその瞬間に爆発した。

「!?」

 爆発したと言っても、まるで指向性爆薬のように、P1が殴った方向……つまり振り抜いた側へと爆発するようにしてディエの体が爆散した。触手の根もとと上半身が吹き飛ばされては、流石の大型種であるディエも、生きていることが出来なかったようだった。その体がどろどろの液体金属のように変化して、消滅していった。

「デ、ディエを単身撃破だって?」

「あやまぁ……凄いねぇ」

 周囲の掃討が終わったUY2とUY3も、P1とディエの短いが凄まじい攻防を見ており、そしてその攻防が終えた感想は正に驚愕だった。オーラスーツですらも巨大に感じる大型種のディエを、ほぼ人と同じサイズでしかも単身で討伐したのだ。驚かない方が無理があるという物だろう。

(コールサインもあるし、ディエと戦っていたことから味方である可能性は高いが……こいつは……)

 そしてそんな強大な存在に、ある程度警戒するのは致し方ないことだと言えるだろう。UY2は各種データの照合を行って、P1がどのような存在か判別しようとした。

 しかしその前に……

「ちょ、姐さん!?」

 声を掛けることもなく、UYLが無防備にP1へと歩んでいくのを見て、UY2が焦ったように声を上げた。しかし普段は必ず返事をしてくれるはずのUYLは、UY2の声が聞こえてないかのように……静かにP1へと歩み寄っていた。




(……びっくりするほど強くなってるんだが)

 巨大なサソリのようなFMEと戦闘を終え、どろどろの液体になったことで完全にとどめを刺したと安堵し、残心を終える。残心を解いた私は……そのあまりにも強力になったパワードスーツと愛用の木刀に、内心で驚愕していた。

 極東一号の遙か地下空間にあった光の球を取り込んだことで得た、フライトアーマーによって飛行が可能となり、更にファンネルミサイルのような六つの光線も使用が可能となった。これは外観的な変化が伴った要因故に、不思議はなかった。

 しかしフライトアーマーは、私の動きを阻害するかも知れないと、少々怖かった。私のパワードスーツの最強の攻撃は、マテリアル兵装と化した木刀による殴打だ。ペーネロペーの、フライトアーマーを装備したかのような状態では挌闘戦において邪魔でしかないからだ。

 故に、内心戦々恐々だったのだが……さすがは想いをくみ取ってくれているような事が起きるパワードスーツ。確証はなかったが元のフライトアーマーを装備してない状態にもなることができると、何の保証もない確信があって私はその確信に逆らうことなく地面に着地してから走り出した。

 そうして接敵して攻撃したのだが、威力があまりにも違いすぎてびっくりした。しかしこの変化も、新しい力を得たと言うことで基礎威力が向上したと言うべき事故に、納得は出来るのだが、予想していなかったので驚いてしまった。

(状況から鑑みて、これがフライトアーマーなんだろうな)

 救難信号が途絶えたことで一応戦闘がほぼ終わったと判断出来たので、私はそんなことを考えながら、左腕へと視線を投じた。

 視線の先にあるのは、いわゆる籠手のような装甲が追加された左腕だった。装甲もただの板ではなく、モールドなどが彫られた実にメカメカしい見た目をしており、実に好みの感じだった。そしてその籠手に意識を集中すれば……先ほどまで装備していたフライトアーマーが、脳裏に浮かんだ。

(……こんな形なのか?)

 手に入れた瞬間は真っ暗だったこと。外に出て周囲が明るくなっても、まじまじと自分を見ている余裕もなかったため、初めて認識したが……ほぼまんまペーネロペーだったことに、内心で吹き出しそうになってしまった。

 さらに驚くべきは追加装備とその外見、木刀の威力だけでなく……今装備している私の全身を覆っているパワードスーツも同様だった。地面に着地し、瞬時にフライトアーマーが解除されて走り出した。その時は目の前のデカ物相手で頭がいっぱいだったが……走ったときの速度や、反射速度を鑑みれば、スーツの性能的にもらかに向上しているのが分かった。

(前よりも早く走れたのは間違いない)

 走り出した時の疾走感。その加速性能と持続性。更にそれに適応できるだけの思考能力の加速。間違いなく反射神経も向上しているだろう。そんな性能向上を見た目にも顕しているかのように……パワードスーツの外見も変化が訪れていた。

(……動きを阻害せず、且つ邪魔にならない程度に装甲が厚くなっているのが感じられる)

 外見的変化は当然として……左腕の籠手同様メカメカしくなって、モールドもうるさくない程度にある……さらに装甲が厚くなっているのを何となく感じていた。そしてもっとも顕著に変化しているのが、右腕のアームキャノンだった。

 モールドだけでなく、クリア部分が増えており……何となくチャージとかをすればこの部分が光って、チャージ状況を外見的に知らせてくれる物だと思えた。

 そうして私が自身の変化にあれこれ考えていると、背後から巨人が歩み寄ってきているのが分かって、私は一度思考を止めて其方へと向き直った。

(……やはりでかいなぁ)

 パワードスーツを着ているとはいえ身長にほとんど変化のない私に対して、オーラスーツの全長は約3m。最近慣れてきたのだが、それでもこうして戦闘時以外で、側で仁王立ちされるとその巨大さに驚かざるを得ない。

(特別機って感じだね)

 赤紫色のカラーリングが施された機体だ。左肩にはコールサインと思しきUYLという英字が塗装されていた。また他の機体……それこそ専用機が許されているドゥ大尉のオーラスーツに負けないくらいに、普通の機体と違って特殊なパーツが装着されている。その機体は私の側に歩み寄ってきて、2mほどの間合いを離して、こう問うてきた。

「問いましょう。あなたは一体何者ですか?」


 



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