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作戦前日

 そうして作戦当日まで予定通りの予定をこなして……大規模作戦に備えた。さすがのダヴィさんも緊張しているようで……私という好奇との塊とのデータ収集という状況だったのだが、普段ほど昂奮しておらず、固くなっているのが見て取れた。

 そんな私も当然普段通りに動くことが出来るわけもなく、パワードスーツのデータ取りの訓練で何度か危ういことがあった。

 しかしそれでもなんとかデータを取って、VRMMOを利用した訓練も無事に終えることが出来た。そしてその訓練でびっくりしたのが、FMEの巣の内装だった。

(流体金属生命体なのに……内装は実にグロテスクなのね)

 完全に見た目が漫画やアニメ、ゲームで出てくるような……というかぶっちゃけエ○リアンに出てくるような巣だった。

(吐かなかったことを、褒めて欲しいレベルだった)

 何とか自制心でどうにか出来たが……正直気持ち悪いというレベルではなかった。私のパワードスーツはロトメイドがモデルになっているはず。ならば精神状態というのは非常に重要な要素だ。何せ下手をすれば装着が解除されてしまうのだから。

(やはり百聞は一見にしかず、経験は知識に勝る)

 これを初見で……しかも実体験だった場合、本当に吐いていた可能性が合ったので助かった。

「なるほどなぁ……。お前さんが色んな意味ですげーのはわかっていたが、それでも間違いなく一般人だったんだな」

 訓練後、青い顔をしていた私を心配していた真矢さん以外の隊員は、私のことを意外そうというか……心配しつつもひどく納得した表情で見ていた。やはり言葉で聞いてわかっていても、実感できるというのは重要なのだろう。

「確かにな。となると……真矢少尉と分断されたことも想像しておくべきなのは間違いないが、本当に最悪の状況だと認識しておくべきだな」

「確かに。戦歴がいかれてるから誤解してたのは、間違いないみたいね」

「まぁ私としては……逆に安心できましたけど」

「璃兜、そうかもしれないけど、もう少しオブラートに包んで……」

 口々に勝手なことを言っているが、それも無理からぬことだ。というか再度認識できたが……私が初体験ということを差し引いても、他の人員は何とも思っていないようだった。真矢さんと璃兜少尉は無理をしているのはそれとなく察せられたが、他の三人は全く意識がぶれていない。実に凄まじい胆力といえるだろう。

(足手まといなのは間違いないが……それでも迷惑だけは掛けないように、気をつけなければならないな)

 絶対に迷惑を掛けるのは、今回のシミュレーターによる訓練で発覚したのだが、それでも心持ちだけでも気をつけなければならないだろう。確かに私は望む望まないに関わらず貴重な人材になり得てしまったのだが……私を除いてもこの部隊は貴重な人材しかいない。

 私を生かすためという面倒な任務のために、集められた精鋭だ。この人達を無駄死にさせるようなことはあってはならない。

(と、思うのは簡単なんだけどな)

 案ずるより産むが易し、三十六計逃げるにしかずとはいうが、それでどうにか出来たら苦労はしないのだ。

「宗一さん。大丈夫ですか?」

「えぇ……一応」

 そして私のことを心配してくれている、真矢さんも十分に優秀な人材であり、下衆な話、見目麗しい女人だ。見目麗しいからだろうか……それとも精神年齢的には孫に近いからか? かっこつけてしまう自分がいることに少々驚いていた。

 生涯独身だった私だが、若い頃は異性には興味津々だった。というよりも、世の男性の思春期の頃なんて……エロい事を考えてる奴が大半だろう。正直に言えば猿でしかない。

 私もご多分に漏れず……まぁエロい事ばっかり考えていた。そしてそれは大学生になってからも変わらなかったのだが……異性に対する努力よりも、友人と馬鹿みたいにゲームをしたりするのが、楽しくてしょうがなかったので何もしなかった。それは社会人になってからも、同じだった。

(歳くって変わっていくってのは……外見に気を遣わなくなることが、大きなファクターだろうなぁ……)

 学生時代友人と馬鹿やってる事しか考えてなかったが、身だしなみはもちろんきっちりしていた。しかし歳をとる事に、最低限の身だしなみで終わらせてしまい、髪型とか本当にどうでもよかった。親にも変と言われる始末だ。

 私も変だと思っていたが……毎日整えるのが面倒すぎて寝癖を直して、目に入りそうな長さになったら散髪屋で切る。その程度の事しかしなくなった。今振り返らなくても、実におっさんくさい行動だろう。

(まぁ美形に負けてたまるかという、実にくだらない考えがあるのも事実だが……)

 というか……私と整備兵の二人を除けば、この部隊は本当に美形しかいなかった。その上で全員が中身も十分なのだから、実に得がたい人材だろう。何とかして私の命は大前提として、皆が無事に帰れるように努めなければならない。

 しかしどうしてかは謎だが……私はこの大規模作戦に何かが起こることを、確信していた。それが一体どんな意味を持っているのかはわからないが……可も不可もない何かが起こるのだろうと、そう思えてならなかった。

(吉が出るか凶と出るか? 巣をつついて蜂が出てくるだけで終わればよいが……)

 期待と不安を胸に抱いて……ついに作戦決行日へと時が進んでいた。




 全ての準備を終えて、食事に風呂もすませて、緊急事態にでもならない限り明日の作戦まで、心と体を休めなければいけない時間となった。そんな状況だったのだが……流石に少し怖がっている自分がいた。

(初陣の時すらここまで怖がらなかったというのに……)

 その違いを考えて直ぐに答えに行き着いて、自分に愕然としてしまった。初陣との最大の違いは……分断される可能性が大きいこと。一人になるのが怖いのだ。もっと言ってしまえば……真矢さんと離ればなれになるのを、恐れているのだ。

(年齢的に孫にも近しい年下の女性に、肉体的にも精神的にも甘えるとか……赤ちゃんプレイじゃないんだから……)

 肉体的には、真矢さんの近くにいることで身体能力が向上していると思われる現象であり、精神的には言わずもがな。実に情けないことこの上なかった。

(確かに……元々強い人間でないことは事実なのだが……)

 定年まで無事に勤めた……といえば何事もなかったかのような感じになるが、実際は全くそうではない。入社して数年後に……最悪最凶最低最狂の上司と数年間仕事をしたことがあった。

 理不尽の塊のような人間で、怒鳴るは日常茶飯事、私の机は叩く、私が座っている椅子を蹴飛ばす。挙げ句の果てには叩かれたこともある。怒鳴るのは罵詈雑言の嵐だった。

(後、何でか知らないが、その糞上司の家庭内不和を、私のせいにされたこともあったな……)

 愚痴を開始すればいくらでも言えるほど、最悪の上司だった。今の精神ならば反論も出来ただろうが、若かった私は言い返すことも出来ず……精神的に参ったことがあった。精神科医にも強引に行かされて、完全に病人扱いをされた。

(私にも非があるのは分かっているが、それを差し引いてもひどかった)

 わからないことは分からないと言わないお前が悪いと、後の恩人の上司から叱責されたことはあった。その人にもさんざん怒られたが、その恩人の場合は「叱る」であって、「怒鳴り散らす」ではなかった。本当に、今に思えばあの糞上司は最悪だった。

(それからしばらくしてパワハラが騒がれだしたからなぁ)

 また私の若い頃に、漸くパワハラ問題が世間でも問題視されてきたという……本当に微妙な状況だった。周りのせいにしたくはないが、運が悪かったのは間違いなかった。

 そうして……そんな下らないことを考えている事に気がついて、私は再度自分に呆れて失笑した。自室に一人でいるとはいえ……ブツブツ考え事をしながら笑っているのは、端から見たら間違いなく唯の不審者だろう。

(いっそもう寝るか?)

 と、そう考えるのだが……時刻はまだ19時半。流石に速すぎるため、寝ても夜中に起きてしまう可能性が、高いと思えてしまう。

(若返ったから大丈夫だと信じたいが……)

 先のパワハラで精神的にダメージを負った都合で、眠りがものすごく浅くなってしまった。夜中に何度も目を覚ますのは日常茶飯事で、早く寝れば早く寝た分だけ目が速く覚めるという……非常に悲しい負のスパイラルな生活をもう四十年近く続けていた。故に……早く寝るのが少し怖かった。

「この恐れは眠りが浅くて早く起きてしまうことの恐れか……それとも……」

 どう考えても別の意味なのは間違いないのだが……それでもそんな下らないことを思うだけでなく口にしなければならないほど、何故か精神が少し不安定だった。

 そんなときだった。

ピンポーン

「?」

 来客を告げるチャイムが鳴り響いた。22時までは他室への来訪は認められている。そして相手を確認するための画面が目の前に表示された。その画面に映っていたのは。

「……璃兜少尉?」

「突然失礼するわね。今良いかしら?」

「? 問題ありませんが?」

「そう、なら開けてくれないかしら?」

 言われるままに、私は部屋のロックを解除した。するとすぐに璃兜少尉が部屋に入ってきた。まるで誰かに見られるのを避けるように。

「どうされたので?」

 夜の時間に部屋に女人が、一人入ってくる。私の人生の中で初の出来事だったので、色んな意味で困惑していたが……流石にそれだけでどきどき出来るほど、精神的に若くない。

(そういえば昔……中学時代に好きだった人に成人してから、告白したことあったなぁ……)

 中学卒業して会うことが数回あったが、その程度の関係だった。中学時代は仲良くしてくれていた。そしてその告白の後に飲みに行く約束をしたことがあった。その日……一睡も出来なかったことを覚えている。

(まぁ……早朝に断りのメールが来て、それっきりでしたが)

 そしてそのメールを見て速攻で寝れたのだから……私が実にチキンかということをよく理解できた経験だった。

 それと似たようなエピソードで、就職して好きになった女性が一人いて、その子もけっこう濃いめのオタクだった。それで仲良くなって連絡先も何とか交換してもらい、何度か遊びに行く約束までは出来ていた。そしてその子が好きな声優のイベントのチケットが余ったので、一緒に行かないかと誘われた事があった。それで有頂天になっていたのだが、当日になって現地で同好の士がチケット求めていたので、その人と一緒に行くと言われた。

(それでやる気なくしたんだよなぁ……)

 性分なのだが……どうしても無駄になることに、金と労力を費やすのがいやだったのだ。これだけで全く恋愛に向いてないのが、よく分かる物である。

 誤解を恐れず言うのであれば、投資に見合うだけの成果が返ってこないかもしれないと思うと、どうしても女性に金をかけたくなかった。モテなかった言い訳のようなものだが、そんな性分や経験からどうしても異性に積極的にならなかった。


 閑話休題。


 現実に思考を戻して、部隊の人間は皆人格者ばかりだ。更に女性三人は全てタイプの違いはあれど、全員が美人ないし可愛い。

 しかし極論を言えば酒も入ってないしらふの状態で、互いに体を許すほどの情熱的な関係ではないことは間違いなかった。そしてわざわざ璃兜少尉が私の部屋に来て、誰かに姿を見られないように早々と部屋に入ってきたとしても、その表情を見れば恋愛的ではない何か別の話があるのだと、予想するのは容易だった。

(しかし内容は分からない)

 シミュレーターでけっこうポカをしたのでその件かと思ったが、それは部隊全員が慰めてくれたのでほぼないと思えた。となると……璃兜少尉が来た理由は私の隣室の……

「突然来て申し訳なかったね。実は真矢の件でちょっとね」


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