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丸投げ

 オーラ部隊を突入させたにも関わらず結果は同じだった。それはつまり……一部隊を派遣したにも関わらず、成果がなかったということだ。歴史的には、オーラスーツ部隊の投入で数字時間の調査が出来ていたにも関わらず、今回の巣の攻略のための調査の際は機械同様、30分の調査すらも叶わなかったということだ。

 そして先に言った壊滅という言葉。この意味を考えれば……その部隊がどうなったのかは想像に難くなかった。

「私としては正直、ソウイチ君を突入部隊に編成するのは反対なんだけど……正直そうも言っていられなくなった状況になってしまった」

 一部隊が一切の情報を送ることなく、壊滅したという事実。これには流石に上層部としても、戦慄せざるを得なかったのだろう。確かにFMEから見れば、シャオロンという鉄壁の城砦がなくなったのと同義。警戒を強めるのは当然といえたが……それでもまさかここまで強固になるとは。

「つまり突撃部隊に死んでこいと?」

「そんなつもりはない。私としても巣への突入は反対なのだが……良くも悪くも宗一暫定少尉の戦績が少々輝かしすぎたようだ」

 千夏司令は頭が痛いというように、額に手を当てて大きく溜め息を吐いている。確かにこの結果を踏まえれば……巣への突入による破壊ではなく、巣の成長を阻害させるだけの損壊を与える作戦がもっとも安全で確実だ。

 しかしそれをしないというのは、私の戦績……というよりもシャオロン討伐が、あまりにも歴史的出来事過ぎたのだろう。

「宗一暫定少尉を出撃するように要望をしているのは、二人の基地司令からだ。建前としては、非情に強力な兵士である宗一暫定少尉を遊ばせておくわけにはいかないのと、関東平野奪還のためと言ってきているが……本音は囮というか、少しでも強い宗一暫定少尉に、FMEを押しつける口実だろう」

 確かに建前は至極もっともだが、先にも考えたとおり、ならば安全策を講じて損壊を与えまくればいいだけの話である。突入したい気持ちが透けて見える。

「しかも極東一号ほどの敵の巣に、突入する機会が出来てしまったんだ。その巣の中に……ソウイチ君のパワードスーツまでは行かないまでも、凄まじい宝が眠っている可能性は非常に高い。さらに、人類初の巣の踏査という功名が獲得できるかも知れない。そんな誘惑に逆らえないみたいでね」

「はっ! 聞いたかレン? 一度も前線に出ない、他二つの馬鹿な基地司令様はホントにオバカらしい」

 流石に耐えかねたのか、ドゥ大尉が笑いながらも怒気露わにしながら、そう吐き捨てた。

「ドゥ、気持ちは分かるが少し落ち着け。一応作戦会議中だぞ?」

「これはちょっと擁護できないわね」

「これは流石に……ちょっと」

「……」

 唯一煉道中尉が注意するが、流石に嫌悪感を隠し切れておらず、顔が歪んでいた。

「見えない箱の中にある宝物が手に入るかも……っていう希望的観測で手元にある得物減らしてどうするんだか。完全新規のオーラスーツ調整するのだって楽じゃないんだぞ?」

「まぁ……他の二つの基地の司令が悲惨ってのは、有名な話ッスからね」

 私以外の隊員はそれぞれ思い思いの言葉を漏らしていた。真矢さんは何も言っていなかったが、手が白くなるほどに手を握りしめているので、それが如実に感情を表してた。

 私も当然内心で呆れていた。地球を救うという最大にして最優先目標があるのは、どこでも間違いないはずだ。しかも今回の作戦を成功させなければ、三つの基地全てが敵の勢力圏に飲み込まれる可能性が高い。故に必死になるのは当然だ。

 しかしそれ以上に今回の作戦は、他の二つの基地の都合が前面に押し出されていると思わずにはいられなかった。これだけ強固に作戦遂行を行うと言うことは、私のパワードスーツの情報、シャオロン討伐、この二件の問題についてある程度詳細な話を知っているのだろう。そうでなければ調査部隊が壊滅したというのに、調査を強行する理由がない。

「足並みをそろえる……というわけではないが、それでもこの作戦には参加してもらう。しかし……我が秩父前線基地は、ある程度余裕があること、そして宗一暫定少尉がいることを踏まえて、突撃作戦を敢行するが、他の二部隊の突入部隊にはほとんど巣の周辺のFMEの露払いを指示している」

 そんな少々重たい雰囲気の中、千夏司令が発した言葉は少々意外な言葉だった。何せ作戦を行うが、そこまで全力で取り組まなくてよいと……基地司令自らが発言したのだから。

「ただ、それでも貴様らパラレル部隊には出撃し、巣に突入してもらう。宗一暫定少尉が、もっとも優れた戦力なのは疑いようがない。故に、内部の調査が行えてないという厳しい状況の中ではあるし、矛盾しているが……宗一暫定少尉の無事の帰還と、最低限巣の成長育成の破壊を成し遂げてもらう」

 作戦があまり好ましくなくても、やらなければならないのが下っ端の辛いところである。と思えてしまうのは私がまだこの世界の住人……というよりもまだ軍人になりきれてないところが大きな要因だろうか?

 それに対して周りの人々は当然といえば当然だが、この世界の住人な訳であり従軍期間も長い精鋭の軍人だ。先ほど文句を垂れていたが、誰もやらないという事は言わなかった。

(まぁこれはお願いではなく命令なので、断れるわけがないのだが)

「調査は作戦開始まで機械によって継続する予定だが……恐らく何の成果も上げられないだろう。故に、本当に何の情報もなく調査に行ってもらうことになるが……くれぐれも死ぬなよ」

「「「了解!」」」

 元々そのつもり……というと語弊があるが……だったので私としては別段問題ないのだが、真面目な状況だというのに実に下らないことを考えてしまっていた。

(やっぱりロトメイドってすげーというか、おかしいんだな)

 私が身に纏ったパワードスーツのイメージになったゲーム、ロトメイド。異変を察知したため先見調査隊を惑星に送ったがそれが全滅したため、完全未調査の惑星に主人公一人が降り立って、その惑星を調査するゲームだ。ゲーム故に惑星のサイズは当然実際よりも遙かに小さいのだが、ミソなのは「完全未調査」の惑星に「単身で」調査に向かわせていることだろう。

(常識的に考えれば、敵がうじゃうじゃいる未調査の場所に向かわせるっていうのは、これぐらい反感があってしかるべきだよな)

 使命感、危機感……そういった非常に大きな要因があるが、それでも軍人として任務に従事しなければならないという、義務と責務。ゲームや漫画でしかわかっていない私としては、恐怖も相まって正直気後れしてしまっているのだが、これは任務を遂行しろと言う命令であって「お願い」ではない。断れる訳もなかった。




 一通りの作戦の説明を終えた。それから今後の予定として、明日は任務として間引き作戦を行い、翌々日は一日かけて機体の調整。翌日は調整後のチェックもかねて午前中は行軍演習、午後はシミュレーターを用いての仮想訓練だ。仮想訓練はあくまでも調査を行えた別の巣の情報ではあるのだが、完全未見よりは意味があるとして行うこととなった。

(特に私が全く持って想像もできないからな)

 内装……というべきか、それがわかるだけでも大いに意味があるだろう。無機質なビルのような感じなのか、それとも流体金属とはいえ生命体らしく、有機的で生物的な見た目なのか。これを生に近い感覚で体験できるのは、ありがたい話だった。

 問題としてはオーラスーツでのシミュレーターになるので、動かすのが少々戸惑ってしまうのは難点かもしれない。オーラスーツも思考するだけで動かすことのできる兵装なので、全く動けないということはないと思う。しかしそれでも生身の感覚で動いている私の経験で、はちぐはぐになって動きが悪くなるのは目に見えていた。

(それでも完全没入の、VRができているのは驚いたな)

 ゲームやアニメでよく見るVRMMOが実際にあったのは素直に驚いた。ならば私の訓練もシミュレーターで少しはできたのではないかと一瞬考えたのだが……私が装備するのはオーラスーツではなくパワードスーツだ。おそらく時間をかければシミュレーターにデータを組み込むことはできるだろうが、そんな世界に一人だけのために貴重な時間と労力を消費するのは無駄以外の何物でもない。

 さらに言えば、私のパワードスーツのデータも取りたいはずなので、実働させての訓練以外はありえなかった。

(だから明後日のシミュレーターまでの私の予定は、中佐と一緒になってのデータ収集だしな)

 巣に突入する都合上、乱戦は避けられず、最悪の場合……私が孤立することも大いに考えられるため、久しぶりに真矢さんと完全に別れての行動となる。現時点で真矢さんと離れた場合どのような状況になるのか? 逆に真矢さんのオーラスーツの性能が、低下するのか等の確認もかねてとのことである。

(敵地で孤立……想像すらもしたくないな)

 この世界の兵装は、ほぼすべてオーラエンジンで駆動する。そのため、弾薬や推進剤等の補給があまり必要とされてない。それだけに飽き足らず、パイロットが正常な軍人で、正常な心理状態であれば武器だけでなく強化外骨格ともいえる兵装への補給や修理等を、一切必要しない。一か月以上連続稼働が可能なことは、すでに前例がいくつもあるという。

 そんな現実世界においてはありえないと、断言できる夢のような装備なのだが……しいて欠点を上げるのであれば、中身であるパイロットの状態に、大きく影響を受けるという点のみだろう。

(まぁオーラといういわば体力で駆動する都合上、兵装は無補給で稼働が可能でも、中身のパイロットの補給は必須なわけだが)

 精神状況はともかくとして、腹が減っては体力も落ちてくるし、長時間の運用は精神力も疲弊する。オーラ兵装の使用状況にもよるが、さすがに一度も休憩……小休止、飲食のための休息含む……を取らずに一日以上運用するのは得策ではない。まる一日稼働しているデータも少数あるので、不可能ではないのだろうが、やはり無理をするのはあまりよろしくはない。

 そしてその点で不安なのは私のパワードスーツだった。オーラスーツには、長期任務はもちろん、通常任務であっても最低限の糧食は備蓄されている。現実世界と違って体力が弾薬などの戦力に直結するので、かなり高カロリーな携帯食料で、味も問題ないらしい。

 しかし私のパワードスーツはオーラスーツと違い、完全なスーツだ。私の感覚から言わせれば本当に着ているだけなのだ。ゆえに携帯食料を備蓄するスペースは存在しない。スーツを装備してから背負うこともできなくはないが、どう考えても邪魔である。そのため、私の非常食は真矢さんの携帯食料内容を変えてまで、私の分の食料を備蓄してもらっているのが現在の状況だ。

 そんな私が真矢さんと分断されるのは……正直あまり考えたくなかった。

(まぁいくら老いゆえのある程度の精神が成熟したといっても、敵地のど真ん中で孤立するなんて、私の精神が持つわけがない)

 並行世界へ移動したりとか、若返ったとか、若返りの影響か体が回復したとか、なかなかありえない経歴の持ち主だが、私は一般市民だった存在だ。確かに違和感を覚えることは多々あれど、それでも戦場でまともな精神が保てるのは、常識的に考えてありえない。

(まぁ想定しないわけにはいかないが……)

 いつまでも真矢さんにおんぶにだっこ……というわけにはいかないのはわかっている。真矢さんがなぜか私のパワードスーツとリンクしているような状況であるため、こうしてペアを組んでくれている。

 しかしそれがなくなった場合は配属が別の部隊や、もしくは配置変えで別の基地に行くこともあり得るのだ。頼らざるを得ないし、頼りにしているのは事実だが、依存しては問題である。

(とりあえず……死なないように頑張ろう)

 こうしてこんなことを考えるとつくづく思うのだが、ガンになってもう長くないとわかっていたというのに、いざこうしてありえざることに若返って回復してしまうと……命が惜しくなってしまうのは実に現金だなと、自分のことながら呆れてしまう。それでもこうして生きている以上……死ぬために生きているわけではないので、この変なおいぼれが役に立てるように、人事を尽くしていくしかない。

(まぁ最後は案ずるより産むがやすし、ぶっ飛ばしてから考える! という、実に安直な思考に行き着くのだが)

 ない袖は振れず、できないことはできないもの。三十六計逃げるに如かずの精神の情けない男なので……私は作戦開始以降のことは、作戦開始以降の私に丸投げすることにした。



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