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体調

意識を取り戻して……直ぐに違和感を覚えた。

(……体が)

 何か違和感を覚えたはずだった。しかしその違和感は直ぐに消えた。そして……自身の体を認識して、寝ていることに気がついた。バイザー越しに見える天井に見覚えがあり、自分がダヴィさんの研究室の寝台に横になっていることに気付いた。

「ここは……」

 そう声を上げると、直ぐ側で驚く反応を感じて、そちらに顔を向けると……真矢さんに璃兜少尉、ダヴィさんが私を見ていた。

「宗一さん!」

「よかった、目が覚めたのね」

「ふむ……バイタルは問題なし。ほっとしたよ」

 三者三様の反応を返してくれる。どうやら心配してくれていたようだ。そして辺りを見渡して時計を探し、驚いた。

「日付が?」

 私が認識している日付よりも、進んでいることに気付き……そこでようやく何故ダヴィさんの研究室にいるのか、疑問を抱いた。寝起きということもあって、頭がまだ回っていないようだ。

(いや、寝起きというのもおかしいのか?)

 当たり前だがダヴィさんの研究室で、寝た覚えはない。しかもパワードスーツを身に纏っている事に気付いて、私はパワードスーツを解除した。

「シャオロンを討伐して、宗一さんは何故か意識を失ったんです。覚えていませんか?」

「討伐?」

 そういわれて、私は意識を失う前の状況を思い出した。シャオロンを討伐して帰還しようとした矢先に、何か声が聞こえたような気がして、それを認識した瞬間に意識を失ったのだ。

「覚えてます……」

「ふむ、記憶にも齟齬がないと。体調はどうかな?」

「……大丈夫です」

 ダヴィさんからの問いかけに、寝台から下りて少し体を動かすが、違和感等はないようだった。自己診断故に断定は出来ないが、大きな問題はなさそうだった。

「ふむ。では起きたことだし診察をしようか。まぁお腹も空いているだろうから、タマヨ曹長に依頼してお弁当を持ってきてもらおう。とりあえずそれまで、簡単な問診をさせてもらうよ?」

「了解しました」

「さて二人とも。とりあえずソウイチ君が目を覚ました事だし、二人はゆっくりとやすみたまえ。目覚めたことを部隊のみんなに通知しておくのは、任せて良いかな?」

「わかりました」

「了解です」

 今のダヴィさんの台詞から、私が倒れてからそれなりの日数、見舞いに来てくれたのが分かった。二人ともよく眠れていないのか、顔の肌の艶が若干普段よりもないきがした。

(無論言いませんが)

 普段よりも肌の艶がないですね、なんて女性に対して失礼事を言うほど、いくら私も馬鹿ではない。しかも意識のない人間の見舞いという……実に退屈な時間を過ごしたのだ。ありがたい話である。

「お二人とも、ありがとうございました」

 私のお礼の言葉に、二人は笑顔を返してくれて、そのまま研究室を出て行った。それれから少しして珠代曹長がやってきて、弁当を置いていってくれた。

「ほいよ。あんたも忙しないねぇ? 何やってるのかは知らないけど、女を悲しませるのはいい男と言えないよ?」

「それはなんと言いますか……そうですね」

「おや? 素直だね? ハンサムって言うほどじゃないにしても、それなりに整った顔してるのに初心な男なんだね、あんたは」

「放っておいてくれます?」

 実に下らないやりとりをしたが、しかし情けないことに、二人が悲しんでくれたことを少し嬉しいと思ってしまう自分がいて……内心で凹んでいた。

(若返った影響かな?)

 元々異性に積極的ではなかった私は、加齢と共にさらに積極性を失って、生涯を独身で貫いた。故に、気持ち的には女性とのやりとりはドライというか、以前のように普通にしているつもりなのだが、意識してしまう自分がいて意外だった。

「私の分も持って来てくれたので、一緒にランチにしようか?」

「はい」

 ダヴィさんも連日の仕事で疲れているのが、覇気がないことで何となく察せられた。その原因が私なのは言うに及ばずなので、私は心の中で謝罪しておいた。

 食後は一通り検査が行われて、特段問題ないことが確認されたが……それ以上に解明すべき問題があった。

「シャオロンより出て行ったこの光の球。これは一体何なんだろうね?」

「そうですね。嫌な感じはしなかったのですが、何故か無意識に撃とうと反応していましたね」

「ふむ……それが一体何なのか?」

 録画された映像と、その時のオーラスーツの計器データなどを見て、必死に光の球の解析をしているダヴィさんだが……計器データにも異常がないためにお手上げのようで、直ぐに両手を挙げてしまった。

「駄目だ。さすがに映像だけでは難しいね」

「でしょうね」

 しかしそんなことを言っておきながら……ダヴィさんは映像だけの推論はいくつか教えてくれた。といっても……敵から出てきた謎の現象だ。人類にとって良い物ではないという推論になった。

「シャオロンは定期的に、関東平野を徘徊しているだけだった。その徘徊の理由をもちろん以前から調査されていたのだけれど、決定的なものは出てきていない。ただ……今回シャオロンを討伐した事で出現した謎の現象。当然だけど、これは討伐されたことによっておこった現象だ」

 すでに数世紀もの間、シャオロンはこの関東平野に居続けた。攻略兵器として開発されたオーラキャノンでも歯が立たなかった。しかしそれでも討伐するために、必死になって研究、開発が進められた。それでも倒すことが出来なかった存在だった。

「しかも光の球が出現しただけなら、まだそれで終わりと言えなくもなかったけど、向かった先はFMEの巣の、極東一号だ。そこから考えれば……ソウイチ君のデータを送った物だと、考えるのが妥当だろうね」

「確かに」

 ゲームなどでもよくある話だ。主人公の力を本拠地に送り、それを研究して主人公を殺そうとする。実にありがちな話である。

 今回のFMEは一応生物のような存在だが、全く研究が進んでいない存在なので、あれだけでデータが送られた可能性は大いにある。

 だがそうなると一つ疑問に思うことがあった。

「しかしその説が正しいとなると、先日の――」

「そう、ソウイチ君が言っていた、グカムボからも同じ光の球が出現したという現象。これがあるために、断言するのが難しくなってしまう」

 グカムボからも同じような光の球が出現した。これは今回と違って私しか視ておらず、記録にも残っていない状態なので……他の人としては確認しようがない。そのため私の幻覚とかではなく、実際におこったこととして話が進められた。

「先日のグカムボとの交戦後も、確かにソウイチ君のパワードスーツは能力の向上が確認されている。そうでなければ、私としてもシャオロンの討伐任務を発令することは、出来なかったわけだしね。しかしそれでも……シャオロンを倒すのに確証を得られるほどではなかった。もしもグカムボからの光の球がソウイチ君のデータを送信したものだとしたら……シャオロンが強化されていないのがだいぶ引っかかる」

 光の球に意識を取られすぎて、行き先を確認できなかったのが悔やまれる。しかし同じような現象であることを考えれば、極東一号に向かったと考えるのが妥当だろう。そしてもしも極東一号に向かったのならば……ダヴィさんの言うとおり、シャオロンが私の討伐されてしまったのには、違和感があった。

(予想以上に私の攻撃が強力だったのか?)

 と、自己肯定強めに考えても見るが……それにしてもあれほど巨大な存在が、データを入手した後に、多少なりともパワードスーツが強化されたとはいえ、私に討伐されるのは正直、納得がいかない。

「もしくはソウイチ君が、シャオロンの時に何か特別なことをしたなら、話は別なんだけど……」

 それからもいくつか二人で話し合ったが、結論は出せなかった。そして推論しか出せない以上、これ以上の話は無駄だと結論をつけざるを得なかった。そして再度身体に問題がないことを確認すると、私は研究室より退出した。

「予想はしていると思うけど、作戦立案が完了したら大規模作戦が開催される。それまでは通常通り過ごしてもらうけど、ソウイチ君は任務が終わり次第、必ず私のところに来て検査を受けること。これは千夏司令からも許可を受けている、正式な命令だからね?」

「了解しました」

 確かに障害たる大型の敵がいなくなった今こそ、巣を完全撤去するために動くのは当然といえるだろう。そして歴史学で学んだが、巣の攻略を行うのは歴史上初になるはずだ。

 巣の内部を捜索できていないのが不安でしかないのだが……しかし大型の敵が復活しないとも限らないため、あまり時間を置くわけにもいかない。そして巣の内部の捜索をしてないという、あまりにもリスキーな話だ。

 しかし時間をかけるわけにはいかない以上、最強戦力と言って何ら差支えのない私が出撃しないことは、ほぼあり得ないといっていいだろう。

(もしかしたら貴重ということで、最初は突入させないこともありえなくはないだろうが)

 しかしそんな最強戦力は、二度も怪奇現象を見たと報告しており、二度目に関しては原因不明の意識消失という、実に危うい存在といえる。それらを加味してどうするかは謎だが……どちらにしろ出撃の可能性がある以上は、私の体調の把握は最重要事項と言っていいだろう。

(大型の敵の時も思ったのだが……命がかかっているはずだというのに、あまり恐怖というものを感じないのは、何故なのだろうか?)

 こちらに来てすでに三度、敵と交戦した経験がある。そしてそのどれもが、一歩間違えれば死んでいた可能性がある、出来事だった。

 最初こそ、病気となってすでに余命いくばくもない体だったためと思っていたが、すでに若返ってからそれなりの月日が経過している。こまめに検査をしてもらっていることも相まって、さすがに精神と肉体の齟齬はそれなりになくなったはずなのだが、それでもあまり緊張というものを感じていない。

 さすがにそれが少々おかしいと、思い始めていた。

(しかしかといってどうこうできるわけでもなく……)

 カウンセリング等を受けたほうがいいのかもしれないが……それはもう少し基地や私自身に余裕ができてからのほうが、良いのかもしれない。そんな益体もないことを考えつつ、私は自室へと一度戻った。

 まだ夕方前という、実に中途半端な時間であり、経過観察も見て本日はすでに休みでよいと沙汰をもらっている。明日は部隊で間引き任務に従事することになるようだ。間引き作戦になったのは、私の体調を鑑みてのことだろう。それらについてありがたく思いつつ、私は自室にて木刀を出現させた。

(……特に問題はなさそうかな?)

 出現させた愛用の木刀に、変化は見受けられなかった。そして以前に許可をいただいている日ごろの素振りを行ったが、体の違和感もなかったため問題ないと判断し、私は日課を行った。

 しばし事実で素振りを終えると、ちょうどタイミングよく就業時間が終了した。それを確認して汗を自室のタオルで拭いていると、真矢さんより連絡があった。

「宗一さん。通話は可能でしょうか?」

「問題ありません」

 ちょうどいいタイミングだったので、断るはずもない。私は淡々と返事をする。

「よかった。部隊のみんなが心配しているので、皆で食事をとるのはどうかという話になりましたが、よろしいですか?」

「もちろんです。ご心配をおかけして申し訳ありません」

「いえ、こちらとしても安心しました。では1800に第三会議室に集まってくだ……っていっても分からないですよね?」

「そうなります」

 第三会議室がどこかわかないため、私はそう返すしかなかった。この基地に来てから多少は月日が経つが……前線基地なのだから自由気ままに出歩けるわけじゃない。そのため自分が行かないところを、覚えているわけもなかった。

「では1745に自室前にお願いします。案内しますね」

「お手数おかけします」

 会議室にしてくれたのは、私のパワードスーツのことをまだおおっぴらに出来ない事と、シャオロン討伐の報を周囲に知らせないための配慮だろう。そして会議室で夕食を取るということは、再び珠代曹長辺りが弁当を出してくれるのかも知れないということと、千夏司令からは許可をもらっていると言うことだろう。ならば此方としても安心して食事が出来るという物である。ありがたい話だ。

 それからシャワーを浴びて身を清めた後に、真矢さんに連れられて第三会議室へと向かった。戦闘隊員だけでなく、秋雄大束整備少尉に、ゲイツ・ミュー軍曹も来てくださり、皆が口々に心配をしてくれた。

 本気で心配してくれているのが分かったので、此方としても嬉しくなって、皆で珠代曹長の弁当をおいしくいただいた。食べ終わった後も……待機時間になるまで雑談をして、本日は終わりを告げた。




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