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自己紹介

 基地の規模がどれほどかは知らないが……それでも軍隊がそれほど小さいとも思えない。ただわざわざドゥ大尉がそういうということは、ほとんど顔見知り程度ではあるようだ。しかし私がわからないので……自己紹介をしてもらえるのはありがたかったので、止めることはしなかった。

「なら次は俺だな。煉道・間宮中尉だ」

 副隊長に任命された煉道中尉が右手をわざわざ挙げて発言する。そしてその挙げられた右腕が……どう見ても普通の腕ではなかった。

「見てのとおり右腕は試作型の新型義手だ。以前戦闘中にちょっとしくじってな。そのまま退役もあり得たんだが……臨床実験が済んだ新型の義手に適合して戦線復帰だ」

 少々しかめっ面をしながらも、明るい口調でそう述べる。四肢を一部なくすというのは……正直想像すらもしたくないのだが、戦争中ということであり得ないことでもないのだろう。しかし、四肢を失うことに対する恐怖が、私とは違う気がした。

 その理由が、新型義手なのだろう。さすがは近未来というべきか、私の世界の時代の義手とは比較にならない一品のようだ。先ほどから右手を注視しているが、メカメカしい見た目をしているのは事実だが、生身と遜色なく右手を動かしている。実に素晴らしい義手のようだ。

 義手などの大きな問題は、エネルギーに大きく起因しているのが私の考えだ。簡単に言うと、電池がどうしてもかさばってしまう。しかしこの世界の義手のエネルギーは考えるまでもなく、オーラなのだろう。それだけで義手の開発は、私の世界よりは難しくないと思えた。

「一応右手を吹き飛ばして義手になってから、それなりに長い時間戦っている。問題ないとは思うが……まぁ迷惑を掛けないようにするのでよろしくな」

 最後は右手を力強く握って……問題ないことをアピールして終了した。そんな煉道中尉を気遣ってか、ドゥ大尉が笑ってこういってきた。

「こいつは結婚してて子供もいるからな。退役する訳にはいかなかったから、けっこう必死になってリハビリしてたぜ?」

「おいドゥ。余計なことをいうな」

 にやにや笑っているドゥ大尉の頭を、軽く左手ではたいている煉道中尉。呼び方やその漫才とも言えるやりとりから……長年戦友をやっているのがよくわかった。そんな二人に呆れ混じりに溜息を吐きながら、燐中尉が歩み寄ってくる。

「燐・笠戸中尉よ。私も……というか先日の演習を知らない人はほとんどいないんじゃないかしら?」

 周囲を見渡して確認をする燐中尉。その言葉通りというべきか……誰も否定しなかった。

「正直に言うとね……あなたが愼司中尉をぶっ飛ばしてくれて、スカッとしたわ」

 燐中尉の言葉に、璃兜少尉が大きく何度も頷き、真矢さんが苦笑いをしている。どうやら真矢さん以外の女性にも、あまり好かれてない様子だ。

「どんな人かと思ったけど……異常な新兵器を見たらなんかそれも吹っ飛んだし、さっきからのあなたを見ていると、色々納得できたわ。それと……あなたの格闘術に興味があるわ。今度私とも演習してね?」

 ドゥ大尉とは違い……実に好戦的な笑み浮かべて、こちらに拳を突き出してくる。

「おいおい、燐中尉。俺が先だぜ?」

「あら? 順番については何も言ってなかったと、思いますけど?」

「……それもそうか」

 燐中尉からの指摘に……ドゥ大尉が諦めたように大げさに肩をすくめる。まだ全員の自己紹介が終わってないが、人間的に問題ない人材ばかりのようだ。

「璃兜・楯乃少尉よ。何というか……先日保護した人が平行世界の人間って、流石に予想できなかったわね。けど、真矢とそれなりの時間一緒にいるのに、真矢が普通にしてるから問題ないってわかるわね」

「ちょっと璃兜? それ、どういう意味?」

「さぁねぇ? あんたは自分の魅力について自覚なさ過ぎ」

「魅力って?」

 本当に理解してないのか、真矢さんが首を傾げて眉をしかめている。そんな真矢さんを見て、璃兜少尉が呆れたように大きく溜息を吐いてた。

「まぁともかくよろしくね」

 そういって満面の笑みで手を振ってくる。それに対して、私は軽く頭を下げておいた。

「では次は私でしょうか? 私は真矢・山谷少尉です。狙撃兵なのですが……マテリアル兵装に選ばれたために今四苦八苦しています。今度演習に付き合っていただけたら幸いです」

 真矢さんの自己紹介は至ってシンプルだった。しかし誰もちゃかすことなく、そして侮ることもしない。隊の人間の人格的なところもあると思ったが……それ以上に狙撃の腕前が事実なことを、誰よりも私自身がよく理解していた。愼司中尉も言っていたが、それだけ真矢少尉の狙撃の腕前が確かであり、認知されていると言うことなのだろう。

「次は俺……というか、俺もするのか?」

「そらそうだろ、秋雄。ある意味あんたが要だぜ? 特に俺にとってはな」

「そう思ってるなら、もう少し大事に扱ってくれたらありがたいがね」

「それは出来ない相談だ」

「ったく、かわいげねぇ奴だな相変わらず」

 ドゥ大尉と親しげに話す秋雄整備少尉。整備という単語と、二人のやりとりから察するに、ドゥ大尉のオーラスーツの整備などを、秋雄整備少尉が行っているのがわかった。

「秋雄大束整備少尉だ。整備兵をやっている。長年整備を行ってきたが……お前さんほどの奇っ怪な兵器は初めて見るな」

 そういって私の右腕の腕輪をじろじろといぶかしげな目で見つめてくる。整備兵でなくても、奇っ怪なことは間違いないのでそれも当然といえた。

「まぁ縁あってこうして同じ部隊になったんだ。どこまで力になれるかはわからんが、何かあったらいってこい」

「承知しました」

「……ふむ。何というか、なんか知らんがお前さんは、あまり若造って感じがしないな? 仲良く慣れそうだよ」

 直感で察したというべきなのか……ともかくこちらに対してそう快活で笑ってくれた。思うところも多々あるだろうに、それでもこちらを一人の人として見てくれたのは、非常にありがたかった。

「自分はゲイツ・ミュー軍曹です! 今度その兵器を是非じっくりと見せてください!」

「あ~ゲイツ。残念だがお前にだけは、ダヴィ中佐から言付けがある。気持ちはわかるが許可なく変なことをしないように……とのことだ」

「そんな殺生な!?」

 ドゥ大尉より伝えられたダヴィさんの伝言に、驚愕を露わに詰めよろうとしたが、その前に秋雄少尉に首根っこを捕まれて止められていた。その様子を見れば考えるまでもない。ダヴィさんと同類だ。

「こんなんだが……まぁ整備の腕については、俺が保証する」

「なるほど?」

 首根っこを掴んで溜息を吐きながら、秋雄少尉がそう言ってくる。こちらとしてはまだ判断材料が皆無なので……その言葉を信じるしかないが、ドゥ大尉が何も言わないところを見ると、問題ないのだろう。

「では最後だな、ルーキー。とびきりの自己紹介をお願いしようか?」

 そして最後に……残された私にそういってくるドゥ大尉。そういわれて……私自身が自己紹介をしていない事を思い出して、内心で少し頭を抱えた。

(何も考えてないが……まぁいいか)

 何をいうべきか一瞬だけ悩んだが……このメンバーであれば別段問題ないだろう。そう思って私は普通に挨拶をすることにした。

「私は真堂宗一と申します。生まれは平行世界の日本……この世界でいう大和国ですね。趣味として剣術を学んでおりましたが、なにぶん一般人ですので、ご迷惑をおかけするとは思いますが……どうぞよろしくお願いします」

「おいおい、ルーキーってわざわざ前振りしたのにその程度かよ……と、言いたいところ何だが、剣術ってのが気になるな?」

 予想通り……その単語に食いついて来てくれた。剣術が失伝していることは、初日にダヴィさんより話を聞いている。そして……単語だけでは何のことかわからないだろうが、先日の愼司中尉との演習、そして私が異世界の人間であること、更に先ほど少しの間だけ映された刀達。これらを総合的に判断すれば、私の言っていることが戯言ではないことはわかるだろう。

「なるほどな。愼司との演習で妙に様になっていると思ってはいたが……そうか、平行世界と言われた時点で気づくべきだったか」

 ドゥ大尉と同じような思いを抱いたらしい煉道中尉が、以前よりも更に興味深そうにこちらを観察し始めた。それは二人だけではなく……真矢さんを除いた戦場に出る人間全員が、私に好奇の目線を向けてくる。

「これは是非とも訓練して欲しいわね。いっそ、これからってのはどうかしら? ドゥ大尉」

 燐中尉が……不敵に笑いながら提案している。それに対して……こちらに向けていた人員全員が、弾かれたようにドゥ大尉へと視線を向ける。その視線を受けたからではないだろうが……ドゥ大尉も非常に鋭い視線をしたのだが、しかし直ぐに大きな溜息をついた。

「非常に魅力的な提案だ。魅力的すぎて思わず許可を出したくなるんだが……その辺は千夏司令にNGを出されててな」

「あら………………それは残念ね」

(うわぁ……すげ~悔しそうな表情をしている)

 残念だと自ら口にして、一応引き下がっているのだが……その表情は実に苦々しい。それは他の面子も同様であり、皆の心境を如実に語っていた。

「さすがは千夏司令か。俺達の考えはお見通しだったか」

 しかし一番切り替えが早く、少し芝居がかった仕草で煉道中尉が小さく肩をすくめていた。

「私としても、私の楯と剣技がどれだけ有効か、試してみたかったわね」

 座りながら左手で体を隠すように前に出す仕草をする、璃兜少尉。その仕草と言葉から……楯を使う剣術というのがよくわかった。しかもその動作がけっこう様になっていて……私は内心驚いていた。

(この世界の剣術は廃れたはず。ならば我流のはずだが……これほど様になっていようとは)

 自らの命がかかっている中で身につけてきた技術。やはり極限状態での戦闘というのは凄まじい経験となり、積み重なって技量となり得るのだろう。この辺に関してはありがたいことに、生涯を通して戦争というものを直に経験をしたことがない私には、わからないことだった。




 その後はドゥ大尉が千夏司令より送られた個々人のデータを見つつ、皆で話し合ってこの部隊の陣形が話し合われた。その結果として決まったのが、次の陣形だった。

 

 私と燐中尉が前衛。真矢少尉と璃兜少尉が中衛。煉道中尉とドゥ大尉が後衛。


 本来真矢さんは狙撃兵ということもあって後衛の方が好ましいのだが、ダヴィさんより私からなるべく離さないような指示が出ているらしい。それに皆が疑問を持ったのだが……先日見せてもらった真矢さんのオーラスーツのデータを見せると、皆が納得していた。私はよくわかってないのだが、他の歴戦の勇士達が納得するほどに、真矢さんのオーラスーツは性能が向上しているのだろう。

「なんか……妬けるわね?」

(おや?)

 皆が驚きつつも納得している中で、璃兜少尉だけが何というか……少し意味深な言葉を呟いていた。しかしそれに気づいたのは私だけだったのか……そのまま話は進んだ。そもそもこの陣形になったのは明確な理由があった。というよりも、恐らくこうなるように千夏司令が人員を厳選したと思われた。

 私が前衛なのは今更言うことでもないだろう。燐少尉は格闘術がかなり得意なようで、オーラスーツだけじゃなく生身の格闘術も相当らしい。オーラスーツの得物は、マテリアルハンドガンとオーラナイフを用いた格闘術らしい。背中のバックアップもオーラブースターと予備のオーラナイフが積まれているだけで、戦闘方法だけでなく、武装面から見ても完全な接近戦仕様。

 中衛の真矢少尉と璃兜少尉。真矢さんが中衛なのは私の側をあまり離れないようにするためだ。私はパワードスーツの関係上、高出力の通信機や録画録音装置を搭載できない。故に、私を補佐する役割と、マテリアル兵装の関係もあって、真矢少尉は中衛となった。そのため装備を中距離仕様に変更している。ただし遠距離が出来るという事も考えて、バックパックにオーラライフルを装備している。

 璃兜中尉は、試作型のオーラシールドを使用した剣技が得意なようだ。バックパックには数と距離に対応するために、オーラマシンガンを二丁搭載している。そして右手に装備しているのはオーラソード。オーラサーベルと違って、剣身がキチンとあって、刃の部分だけオーラを発生させる仕組みだ。携帯性と取り回しが悪くなるが、それを補ってあまりある高出力が可能となる。

 後衛は煉道中尉とドゥ大尉。煉道中尉もどちらかといえば接近戦が得意なようだ。ほとんど璃兜中尉と同じ装備だが、オーラシールドの代わりにマテリアルライフルを装備している。そのため璃兜中尉よりは遠距離対応が可能だ。というよりも装備から見て後衛であるドゥ大尉の護衛……スポッターのような役割が大きいようだ。

 ドゥ大尉は何というか……大尉というだけでなく特別な人間なのがよくわかる。何せ全身マテリアル兵装で固められているからだ。

(マテリアルハンドガン二丁、マテリアルライフルにマテリアルバスターソード……)

 他の隊員が通常1つしか装備していないマテリアル兵装を4種類も装備している。大尉という肩書きから鑑みても、相当な実力者であると予想できた。

 残る二人は整備兵と言うことだが……そこで重要なのが先ほどのドゥ大尉と大束少尉の会話だ。長年整備をしてもらっているような間柄を思わせる会話と気安さ。恐らく私が思ったとおり付き合いが長いのだろう。マテリアル兵装をこれだけ複数装備しているドゥ大尉だ。恐らくオーラスーツも特注と思われる。

 ゲイツ軍曹も、ダヴィさんからわざわざ伝言を残されることを考えれば、少なくともダヴィさんがゲイツ軍曹の能力を把握しているということになる。

 それらを鑑みれば、この部隊はかなりの精鋭部隊であると考えて良いだろう。その精鋭部隊が……いわば私のお守りとして結成されたと言うこと。これはなかなか責任重大というか……かかる期待がでかいのがよくわかるというものである。

(気を引き締めなければならんか……)

 正直な話……私はまだこの世界の事を理解しているわけではない。FMEとかいう……異星起源の生命体と生身で殺し合った身だが、それでもわからないし、ぴんと来ない。しかしそれでも、これだけの人員をわざわざ割いてくれたとなれば、否応にも自分が重要人物扱いされてしまっていることは理解できる。

 無論、利があるからこそこれだけの無茶を通してくれたのは、わかっている。腐っても戦争中なのだ。善意でしてくれているわけではないことは、重々承知している。

 そしてもっと言えば……私自身の価値を示し続けなければ、愉快なことにはならないだろう。


 そう考えて、私は手を握りしめた。



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