表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/103

誤射実験

 光が閃く。それは狙い違わず私の右腕のアームキャノン先端に命中し……私の右腕に、まるでちょっとした電気が流れるような痛みが走った。

「いって……」

 覚悟はしていたが……予想以上に痛みが走ったことで、思わず口から漏れてしまった。その声に気づいたのだろう。注目していたダヴィさんの表情が、驚きの笑みから一転して苦々しい表情へと変わっていた。

「確認する。今痛いと言ったのはソウイチ君だね?」

「はい。その通りです」

「痛みのレベルは?」

「そうですね……。電気が走ったとしか言えないのですが、痛みとしてはそれなりの強さで、はたかれた物だと思われます」

 テレビなどで見るような電気ショックの罰ゲームアイテムや、スタンガンなど喰らったことがないので何とも表現がしづらかったが……痺れるような痛みが走り、その痛みの程度を伝えるとそのような物だった。その返答に満足したのかは謎だが、再度ダヴィさんは、考察の世界へと旅立ちかけた。

「ダヴィ中佐。いかにマテリアル兵装と言っても誤射は危ないということでしょうか?」

 その旅立ちを半ば強引に真矢さんが断ち切った。

「うん? あぁそうだろうね。マテリアル兵装だからあるいはと思ったのだが……当然といえば当然か」

 未だにオーラ兵装がどのような物かを完全に理解してないのだが、腐っても敵を倒すために造られた兵器だ。弾がいくら実弾ではなく、オーラという……人間の体力のような物を打ち出したとしても、兵器に代わりはないのだろう。

「もしかしたら……だからこそ装置が作動した?」

 私がそんな適当な考察をしていると……ダヴィさんの小さな呟きが耳に入ってきた。かなり小さめの声だと思われる上に、考え事をしているために口元を手で覆っている。しかも場所は野外だ。風もほとんど無いが、屋内よりは声が通りにくい状況だというのに、何故かその声は聞き取ることが出来た。

 再度思考の旅に出るのではないかと危惧したのだが……直ぐに取り直してダヴィさんから指示が出た。

「ソウイチ君には申し訳ないが、ライフルではなくハンドガンとオーラサーベルもデータを取らせてもらう」

「了解しました」

 これが平時というか……平和な世界であれば拒否していたが、この世界は戦中だ。戦場で初めて受けるよりは、今この安全な状態で受けておくのが、どれほど大事かなど考えるまでもない。また勝手な想像だが……ライフルよりもハンドガンの方が威力的には弱いはずである。

(サーベルはわからないけど……)

 と、安易に考えていたのだが……ハンドガンもサーベルどちらも、痛みに大した違いはなかった。

 一回では微妙と言うことで、何度かそれぞれの武器を当てられて……本日の訓練はなかなか痛い終わり方をして終了した。




 訓練三日目。朝起きたら一昨日の訓練開始日に比べれば、肉体的な疲労と筋肉痛は少なく思えた。ただし……まだ慣れてないのは間違いないようで、目覚ましにたたき起こされたので油断は禁物だろう。

 自戒しつつ、私は日課の素振りを終えてマヤさんと合流し、訓練を開始した。といっても同じ事の繰り返しだったので、ダヴィさんとの実験訓練までは特筆すべき事はなかった。

「本日は昨日と違いソウイチ君の行動中にあえて誤射をする。どうしても撃たれるとわかっていては身構えてしまうのでね。身構えないで不意に受けたときのデータも、安全のために取らせてもらう」

 その宣言と共に、射撃場の中に立たされた私は、次々出現する的に、指定された場所に移動しての射撃を行わされた。そして……そんな射撃場で縦横無尽に走り回って飛び回る私を、オーラライフルで狙いを付けている真矢さんのオーラスーツの姿があった。

(……心臓に悪い)

 当然だが、不意に喰らうことを目的としているので、真矢さんの射撃タイミングは私にはわからない。一応昨日のデータがあったので、最低出力よりも更に出力を落とした実験仕様にされたライフルらしいが……それでも痛みが走っても動けるようにという意味合いもあるので、そこまで出力が落とされてはいない。

 故に…

「いっ!?」

「はい、痛がってないで走って~」

「ぐっ!」

「やれば出来る子のはずだよ~。踏ん張って~」

 と……戦場で死なないためのデータ取りという大義名分の元……けっこうな数のライフルを受ける事になった。

 しかし正確な時間は不明だが……それでもそれなりの時間射撃を受けているとある程度真矢さんが射撃するタイミングがわかるようになった。そのため思わず避けてしまうのだが……直ぐに思い直してあえて喰らいにいった。

 次は……不意に格闘を喰らった時のデータ取りということで、射撃場に立って同じ場所から的を撃ちまくっている私の背後に、オーラサーベルを装備した真矢さんが立って最小限の動きで、私を不意に攻撃してくるという物だった。

 しかしこれもしばらく喰らっていると、真矢さんのタイミングわかってきたので、身構えてしまった。

 そんなことをしていると、就業時間が終わり、本日の訓練は終了となった。




 訓練四日目。この日は野外訓練最初の時に、無線機の装着テストをさせられた。

「当然だが作戦行動中は無線でやりとりを行うことになる……のだけれども、君のマテリアル兵装には無線が積み込まれてない」

 その台詞に私は大きく頷いていた。現代戦において、通信機がない戦争というのは正直想像出来ないレベルだ。情報というのは、ある意味で武器よりも重要なファクターとなりうる。それをやりとりできる通信機が、使用されないわけがなかった。

 しかし私が装着するパワードスーツはマテリアル兵装そのものであり、機械が積み込まれているわけではない。というかパワードスーツということで変に納得しているが、この液体金属みたいな物が一体何なのか……私は全く理解していない。

(何となく大丈夫という気はするのだが……)

 私だけじゃなくこの世界の人間で、しかも世界的に見てもけっこう優秀な学者でもあるダヴィさんでもわかっていないだろう。よくわからない未知の存在だが……不明な部分を補っても、あまりある戦闘能力を有していると期待されているからこそ、こうしてデータを取りながら、実戦に向けて調整しているのだ。通信機はその一環だろう。

「ということで……通信機をマテリアル兵装と同じように取り込めるのか? もしくは取り込めなかったとしても装備することが可能なのかを、試すことにする」

 そういって真矢さんが搭乗したオーラスーツに運ばれてきたのは……大小様々な通信機だった。それをダヴィさんの指示通りに装備し、オーラスーツに取り込ませようとする、もしくは私が装備した状態でパワードスーツを装備したりした。

 しかし結論から言って……オーラスーツに取り込むことが出来ず、しかも私自身が装備できたのは一つだけだった。

「歩兵装備の通信機のみ……か」

 もっとも小型の通信機しか装備出来なかった。正しく言えば装備は出来たのだが、その上でパワードスーツを纏おうとすると驚いたことに……スーツに弾かれたように外れてしま、パワードスーツから吐き出されるように外れてしまう。その後も何度か試したが、結局私が使用可能なのは歩兵装備の通信機のみだった。

「装備できないよりはいい。通信機はOKということで。次は録画装置も取り付けてもらうよ」

 そういって渡されたのは、眼鏡のように顔に装着することの出来る録画装置だった。軍事行動中の様子を録画し、最悪の場合は情報だけでも入手できるようにするための物だという。また録画をしているということで、ちょっとした抑制的な意味もあるのだろう。

(まぁこの世界の戦争では、戦争犯罪となるのは多分ほとんど無いだろうが……)

 銃で民間人を脅す、無作為に殺す等々のいわゆる戦争犯罪が現代でも問題視されていたのだが……この世界の戦争による相手は、敵国ではなく異星生命体だ。暴行などが起こりうる理由にならない。その上で抑制するとしたら……軍人同士の殺し合いだろう。

 そんな馬鹿なことを考えながら録画装置を装着し、パワードスーツを着用する。こちらも恐らく歩兵サイズの録画装置なのだろう。どちらも問題なく装備したままパワードスーツが着用できた。その後真矢さんと通信を行ったり、録画装置が作動しているか確認したが、通信機、録画装置共に問題なく使用できるようだった。

「次は、パワードスーツでオーラ兵装が使用可能かを確認させてもらう。といっても、台座に固定した状態でそれぞれのオーラ兵装に触れてもらい、発射できるかの確認程度だけど」

 完全人型の私のパワードスーツでは、3mサイズのオーラスーツに合わせたオーラ兵装を使用するには少々無理がある。しかしそれでも兵装に互換性があるかどうかを確かめるのは、非常に重要だ。

 また、この世界のオーラ兵装の特徴から考えて……私がバッテリーとして使用することも想定しているのかも知れない。

(いやはや本当に……体力がエネルギー源というのは破格だな……) 

 そんなことを想いながら、台座に固定されたオーラ兵装に触れてエネルギーを充填し、それぞれの武器をまがりなりにも使用し、発射やらサーベルの形状出力が可能と言うことがわかった。

「よし、ではこの最後に訓練を行なうよ。本日は昨日行った行軍しながらの戦闘訓練を行ってもらう。そしてその随伴として、マヤ君と一緒に行動してもらうよ」

「「了解しました」」

 そうして本日の訓練はバディ訓練とでも言うべき物で……真矢さんとの同時行軍訓練となった。しかしそこで問題なのが、パワードスーツの性能の良さだ。

 最大の利点として、サイズが小さいというのが非常に大きな要素となる。簡単な話、的が小さければそれだけ被弾率が減る。また小さいほど俊敏に動けるし、あらゆる場所での作戦行動が可能だ。

 ならばサイズに比例して出力……アームキャノンの威力が低いかと言えばそんなことはなく、むしろ真矢さんが装備している大口径且つ精密射撃が可能なオーラライフルでさえも凌駕する威力を有しており、更に連射にチャージショットも可能だ。

 極めつけが接近戦だ。マテリアル兵装がマテリアル兵装を所持しているという……この世界の人間からしたら、何を言っているのかわからないというような存在だ。しかも想いと歴史の重みが攻撃力に転化されるという……凄まじい特性を持っているため、私が長年愛用している木刀が、一撃必殺の武器になってしまっている。

(実に面妖で珍妙な物よ……)

 対して、この世界の主力武装であるオーラスーツは、確かに相当優秀だ。全高3mほどのサイズのロボット兵器。ではその動きはといえば、かなりの速さを有している。正直、3mのロボットが出せる運動性能ではない。一歩目からオリンピック選手以上の速さで動き回ることが可能だ。

 操作については神経伝達システムという物を採用しているので、思考することで直感で動かすことの出来る凄まじい操作性能。しかも使用すれば使用するだけなじんでいくこともあって、より反射に即応する。

 武装はオーラマテリアルを使用して造られた、光学兵器オーラ兵装。こちらも光学兵器であるためにほぼ必中で、しかも弾丸は自らの体力という、凄まじいコストパフォーマンスを備えている。

 そして防御力についても、戦車の主砲の直撃すらも耐えることが可能だ。しかし流石に数発しか耐えられないのだが……それは運動性で避ければ何ら問題がない。

 仮に一機でも私の世界の現代に舞い降りたら……陸上戦等においては無双出来ること間違いなしである。

 そんあかなりの性能を有しているのがオーラスーツなのだが、パワードスーツはそのかなり優秀なオーラスーツよりも、更に強力な兵装だ。そのため……どうしても明確な差が出来てしまう。サイズが小さいから森の中でも動きやすく、そもそもオリンピック選手よりも遙かに早く走れるオーラスーツよりも機敏に早く動けるのだ。

 では、兵器ではなく、中の人とも言うべき私と真矢さんの性能を考慮すればどうか? 軍人として長年戦ってきており、習熟してオーラスーツともなじんでいる歴戦の勇士である真矢さん。本格的な軍事訓練を受けたのが数日の私。当然真矢さんの方が圧倒的に凄いのだが、それを補ってしまうのがパワードスーツだった。行軍訓練において圧倒的な差を付けてしまうことが、パワードスーツのすごさを物語っていた。

 恐らくそのうち模擬戦もさせられるとは思うのだが……その場合かなりの優位性がこちらに生まれてしまうことになる。

(まぁ私のパワードスーツは新規開発兵器ではなく、突然変異兵器とでも言うべきものだからそれも当然だが……)

 言うなれば……騎兵装甲ムズボトの世界観に、ロトメイドのパワードスーツが突然出現したような状況だ。性能に差が出るのは当然といえるだろう。

 良いことづくめのようなパワードスーツだが、本日の実験で明確な欠点が浮き彫りとなった。それは拡張性のなさだ。オーラスーツの標準装備である通信機や録画装置が搭載されておらず、搭載しても歩兵が装備するサイズが限界だ。そしてその二つですら新たに装備するのが困難だったので……他の装備に関しては語るまでもない。

 オーラスーツは不思議鉱石を使用しているとはいえ、普通に存在している兵器だ。拡張性がないわけがない。拡張性という観点で言えばそれこそ比べるべくもない。

(まぁ何にでも一長一短というのはあるわけですが……)

 突然出現、意味不明な兵器、出自不明な搭乗者。実にうさんくささ満載の存在だが……その性能は折り紙付きである。どう運用するのかは……偉い人に任せるとしよう。

(しかし本当に……相手が異星生命体で助かった言うべきか……)

 異星生命体だから良いと言うわけではない。まがりなりにも殺生をしているのは間違いないのだから。己が生きるためという……生命的な大前提の生存本能が働いているとはいえ、相手を殺しているのだ。それは忘れてはならない事実だ。

(まぁ……FMEが本当に生物なのかは謎なのだが……)

 臓器も血液もないので、通常の生物でないことは間違いない。しかしそれを差し引いても……遺体が残らないのはおかしい事実だ。それを考えれば……FMEが生体兵器という事もあり得なくはない。言うなればスライムであるとも考えられた。

 ただどちらにしろ……本当に生物らしい生物でないことは助かった。虫以外の生命らしい生命を殺すのとは無縁の人生だったのだ。そんな男が突然軍に入って大量殺害をせねばならないとなれば……間違いなく精神的にいかれてしまうだろう。


 しかしどちらにしろ……私は戦わなければならない。


 この世界で生きていくためには……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ