実験という名のセクハラ
「安全に慎重に実験、研究は行っていくのは大前提だけど……もしかしたらマヤ君のデータをもとに、ソウイチ君のパワードスーツを開発することも、夢ではないかもしれない!」
小型化の利点は数多いが、この世界のオーラマテリアルの特性を考えれば、その可能性はまさに無限大ともいえる。部品や製造された機器の特性などを向上させるのだから、極端な話、全ての部品でオーラマテリアルを取り込ませた場合はとんでもないものが仕上がるだろう。
しかし、それがそう簡単でないことは、だれもがわかっていた。いろいろあるが、今回のアクティブスーツの最大の問題として……
「と、意気込みたいのだけど、マヤ君だけで撃てなかったことがちょっとよくわからないね」
オーラスーツはオーラエンジンで動いており、そのオーラエンジンのエネルギーは搭乗者の体力である。これはオーラスーツに限らず、オーラスーツの武装、そしてアクティブスーツとその装備も含まれ、そのほとんどが使用者の体力を消費して稼働する。
だが、先ほどマテリアルライフルとなったアクティブスーツの狙撃銃を、真矢さんは自分一人で撃つことがかなわなかった。私のエネルギー供給を行って、初めて射撃が行えた。
「さらに言えば……そんな撃てない銃を撃つためにはどうすべきかをマヤ君は瞬時に把握して、撃つためにソウイチ君の攻撃を受けてエネルギーを供給されている」
そして不思議なことに、変化したばかりで何もわからない状態だったにも関わらず、真矢さんは自分では撃つことができないマテリアルライフルを撃つためにしなければいけないことを理解し、私に己を撃てと言ってきた。そして私自身も、真矢さんからの撃ってほしいという願いを、ためらうことなく実行し、さらにどうすべきかも把握していた。そうでなければ、六つに増えた楯に向かってオーラファンネルを撃つわけながい。
「これについては後々ソウイチ君に聞き取りをさせてもらうけど……まぁたぶんマヤ君と一緒だよね?」
「真矢さんがどういっているのかは存じませんが、考えることもなく撃っていたというのが正直なところですね」
「だろうね」
苦笑しながらそんなことを言って、ダヴィさんはしかめっ面を作った。渋い顔だが……私たち二人を疑っているような嫌な感じはしなかった。
(……実際、なぜわかったのかはわからないな)
私の場合は……一兆歩譲ればまだ、DXダムガンに思えたという理由がなくはないが、真矢さんの場合はある意味で私よりも謎だ。撃てないのはすぐにわかる。引き金を引いて撃てないのだから、結果としてすぐにわかるからだ。そこから私が撃つことでエネルギーをチャージできると瞬時に判断できたのがわからない。
「ただ……このエネルギーの受け渡しは画期的で革命だ! これが解明できれば……非戦闘員から余力のオーラを受けることが可能になるはずだ! しかもソウイチ君から受け取ったエネルギーで射撃した時に、一発で全放出した時と、回数を分けて撃っていたのが確認できた」
最大出力で撃ったのは、新型の敵であるファルバルクを沈めた時のことだろう。そのあとは中型以下のサイズの敵しか襲ってこなかったため、最大出力で攻撃する理由がなかった。そのため出力を低下させて撃っていたのは想像できたが、なぜこれで興奮するのかが私にはわからなかった、
しかし……その理由をすぐにダヴィさんが教えてくれて、私はその興奮に納得した。
「これはつまり、ソウイチ君から供給されたエネルギーを一時的にため込んで使用していることになる。つまりエネルギーをため込むことをしていたということだ!」
「「「!?」」」
これを聞いてだれもが驚いた。そしてそれは当然だった。エネルギーを安全にためて、いつでも使用することができる。これは便利に豊かになるためにはかなり重要な要素だ。特に感覚的だが……目に見ることができないオーラとしいう特性から、私はこのエネルギーは電気のようなものだととらえている。そして電気というエネルギーにおいて、充電の可否がどれほどの革命をもたらすのかは……考えるまでもないだろう。
「オーラキャノンはその時の基地にいる後詰の兵士や、基地内の非戦闘員のエネルギー供給で稼働した。だけど……その範囲を基地ではなく街まで広げられれば? そしてその街の住人という、基地の収容人数とは比べ物にならない人からのエネルギーを毎日ためることができたたら? それはまさに……革命以外の何物でもない!」
その通りだった。そして、これだけの新たな要素を生み出すことができた真矢さんが、悪い方向に処分されるわけがない。もともとダヴィさんの権力で保護していたのでそこまで心配していなかったが、これならば確実だろう。
「とはいえだ、エネルギーの供給、そして貯めるというのは現在、ソウイチ君とマヤ君でしか起こりえていない現状だ。はっきり言って夢物語なので、ほかの人にはいってはいけないよ」
この部隊は実験部隊。基本的に箝口令が発令されているが、今の話はかなり希望がある話だ。ほかに漏らせば無用な高揚と失望を与えかねないので念を押したのだろう。むろん誰も言うつもりはなかったので、私たちは了承した。
「さて、今後の予定については……まぁ新しいおもちゃも手に入ったので、しばらくは今までと同じで実験だね。今回みたいな緊急事態があれば話は別だけど……まぁそうそう起こらないよね?」
(それはフラグになるのでは?)
と思ったが、言霊という考えもあるし、またこんなまじめな状況でフラグのことを説明するのも嫌だったので、私は口をつぐんだ。
しかし残念ながら……しばらくののちに、またいろいろと起こってしまうのだが、当然この時の私に知る由はなかった。
最低限千夏司令に報告すべきことは報告し、私と璃兜さんはそろってダヴィさんの研究室へと足を運んだ。到着後、アクティブスーツを着た真矢さんを前にして、同性ゆえか……なかなか危険な絵面と表情で、ダヴィさんが実験を行っていた。
服は着ていたのだが、なんというか雰囲気がすごい艶めかしく思えるような状況……スーツの上からとはいえ、身体のあらゆる部分をロボットアームで検査や測定を行っていた……だったので、思わず目をそらしてしまった。私と璃兜さんが入室したことにも気づかずそのまま暴走を続けていたのだが……さすがに見かねた璃兜さんが、千夏司令に通信をつないで状況を把握してもらい、許可を得てダヴィさんの頭をはたいていた。
「いった!? 何をするんだい!」
「何をしているんですかって言いたいのは私のほうですよ、ダヴィ技術中佐?」
親友をもてあそんでいた……ように見えたため璃兜さんがそれなりに怒っているようで、結構な迫力が出ている。千夏司令が状況を確認して許可を出したとわかるように、しばし空中に投影されていた画面でこちらを見守っていたが、ダヴィさんの暴走が終わったことを確認するとすぐに通信を切った。
頭脳や権力、覚悟はあってもまだ15歳前後の子供だ。同性とはいえ、最前線で修羅場を幾多もくぐってきた璃兜さんに勝てるわけもなく、たじたじになっていた。
「大丈夫ですか真矢さん」
「……えぇ、まぁ」
仕事といえば仕事であり、先ほどの話も聞いていたので実験に協力すると承諾したのも自分自身。いろいろ思うところはあれど、それでも実験が有意義なものであり、重要でもあるからこらえている、という感じだろう。
(難儀だなぁ)
そんな面倒な状況に陥らせている私が思うのはあれなのだが、さすがに口には出さないでおいた。
しばし真矢さんと璃兜さんからのお説教が入ったが、時間も惜しいので早々に実験を開始した。主だった実験は私と真矢さんの二人の装備についてだが、それにともない璃兜さんとも変化がないかを確認したのだが……こちらも驚く結果が確認されてしまった。
「数値が向上しているうえに、なんでか知らないけど、リツ君もアクティブスーツの適合者に登録されているね」
「なんで!?」
これには本人が一番驚き、そして真矢さんも驚いていた。私ももちろん驚いていたが、周りが私よりもっと驚いていたので少々冷静になれた。しかし冷静になれたからと言って簡単なことしかわからなかったが。
(マテリアルソードの適合者だからか?)
真矢さんが適合し、一時期装備していたマテリアルソード。今そのマテリアルソードは璃兜さんのオーラスーツが装備している。それが原因くらいしか思い浮かばなのだが、それはそれでおかしいらしい。
マテリアル兵装に触れることによって適合しているか否かがわかる程度で、適合についてはほとんどわかっていない。しかしそれでも、二人が装備しているマテリアルソードのような適合者が伝播するような現象は今までなかったらしい。ましてや今回のアクティブスーツについては、いろいろあったこともあり、璃兜さんは触れてもいない。触れることもなく適合者になるのは本当におかしいらしい。
「ふぅむ。いろいろ不思議な状況だね」
大いに知的好奇心が刺激されるのか、ダヴィさんは本当にうれしそうに考え込んでいた。その後、璃兜さんは真矢さんが装備していたアクティブスーツを装備してみたが、オーラマテリアルをじかに触れることによって生ずる心理的負荷などは発生しなかった。そのため璃兜さんもほぼ問題なくこのアクティブスーツを装備できるのだが、当然といえば当然か、真矢さんよりも能力値が低い状態だった。
装備も狙撃銃ということもあり、真矢さんほど適性がない。オーラスーツで大いにマテリアルソードを使用したこともあってマテリアルソードの適正も上がっていた。装備できるために実験で着ることはあっても、アクティブスーツを装備して実戦に出ることはないだろう。
「え、待って、本当に待って? どういうこと?」
あまりにも不可思議なことに、璃兜さんが本当に混乱して頭を抱えていた。これに関して、真矢さんは仲間を見つけたという感じで、生暖かい目線で親友を見守っていた。




