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貫く光

 触れてすぐに変化が訪れる。天を貫かんと言わんばかりのまばゆい光が、オーラマテリアルを触れた私の手から発せられた。それは早くに出ていた月に向かって伸びているようだった。

「これは!?」

 ここに至ってようやく機器が反応し、その機器の測定値にダヴィ中佐が驚愕していた。それが耳に入ってきているけれど……私は自分の変化があまりにもすごい状況で、驚いており聞こえていなかった。

 触れた個所から発せられた光。それが月に向かって伸びたのかと思えば、光が私の体を這うようにして私の体を包み込んだ。はたから見ればまるで巨大な蛇に巻き付かれたような光景だったと思う。けれど不快感も不安もなく、私はそれに身を任せた。

 全身を這い、やがて光の玉が私を包み込んだ。右手に持っていたオーラライフルが変化しだす。少し長くなり、それに伴って砲身や本体そのものが少し大きくなる。重さが増したように感じられたけど、すぐにアクティブスーツの要所要所が変化し、重さが感じられなくなった。

 胴体を覆う装甲の中心部に、翡翠のような装甲が追加され、最後に担架アームで装備していた二つの盾が変化を起こし……全部で三対の盾が生まれた。

「えぇ!?」

「これは……」

 さすがにこれには私は驚き、ダヴィ中佐も驚きを隠せていない様子だった。オーラマテリアルは、思いに応じて変化する特徴を有しているのは周知の事実だけど、完全な複製が行われたことは今のところ事例がなかったはず。

 だったのだけれど、変化が実際に目の前で起こってしまったのだから、驚くのも無理はなかった。

「真矢! なんかすんごいことになってるけど大丈夫!?」

「大丈夫!」

 璃兜の心配する声にすぐに返事をし、今は驚いている場合ではないことを思い出し、私は空を見上げた。私の装備が変化する際の発光を見ていた気がしたので、宗一知さんも気づいているだろうけれど、今はそれどころではない。

 直線とはいえ音速を優に超える敵の相手をしているのだ。こちらに意識を割く余裕があるわけもない。私はコンテナの上に跳び上がって、大きくなった狙撃銃を空へと向ける。


 この時、どうしてかはわからないけど、このままでは撃てないことが私はわかっていた。


 普段の私からは考えられないことの連続だったけど、そんなこと考える場合ではなかった。


 というよりも、そのことに気づいてすらおらず……私は撃つために必要な言葉を放った。


「宗一さん! 私を撃ってください!」

 

「「!?」」

 璃兜とダヴィ中佐が驚いているのが分かった。けれどそんなことはどうでもよくて、今の私の脳内を占めていたのは、どうすれば宗一さんを助けることができるか……それだけだった。

 これだけの言葉で、伝わるはずがない。わかるわけがない。けれでも、私たち二人は……なぜか今この場ですべきことがこれだけで伝わって、それぞれが実行した。

私が声を張り上げて……宗一さんはそれに応えてくれた。

!!!!

 敵の突進を避けると同時に、宗一さんの背から六つの光が放たれる。それは最短距離を光速で走り……私の三対の盾に吸い込まれるようにして命中する。吸い込まれたのと同時に、盾がすべて光を放ち、その光がアームを通り胸部へと流れ込んでいく。胸元にできた翡翠のような部分が光り……その光に呼応するように、狙撃銃全体が光り輝いた。

!!!!

 オーラ数値を計測する機器が、悲鳴のような警告音を響かせた。けれどその音を聞くまでもなく、手にした狙撃銃から伝わってくる力を感じ取ることができて……私は意識を集中させた。

(狙うのは!?)

 回避に専念していた宗一さんが、私に意識を向けて、さらに射撃する。一秒に満たないような時間だけれど、あれほどの敵と相対しているときに割く時間としては致命的な時間だった。

 それを証明するように、すでに敵が宗一さんに向けて突進しているにも関わらず、宗一さんは体勢を元に戻すことすらできていない。このままでは下手をすれば命を失いかねない。

(させない!)

 宗一さんでは対処ができても倒すことができず、私では対処ができずかすり傷一つ負わすことができなかった。けれど……今の私ならば、できるはずだ。そう信じた。

 息を整えて止める。意識を集中し、ただ敵を射貫くのみの存在として自身を定義づける。


 狙いを定めて……引き金を引いた。


!!!!


 光学兵器であるオーラ兵装に、銃撃に伴う反動は存在しない。にもかかわらず、すさまじい圧を私は感じた。そして感じ入ったその瞬間に、敵の赤い部位を、私のオーラライフル……今はマテリアル兵装と化したマテリアルライフルより放たれた、銃口の太さの光線が貫いた。

「■■■!?」

 一瞬の出来事のため断末魔を上げることもできず、ただ驚くことだけして……高速で飛び回っていた敵が空中で形を崩して飛散する。

「ちょっ!?」

 宗一さんに突っ込む寸前で形を崩したことで……液体金属のような物体になったFMEがもろに宗一さんにかかった。速度は音速を超えていたこともあり……宗一さんが吹っ飛ばされた。


 その時……液体金属と化した敵の残骸と接触したときに、宗一さんがわずかに光ったことに、私は気付かなかった。


「おぼぁ!?」

「宗一さん!?」

 変な悲鳴を上げながら、宗一さんが吹っ飛んでいく。けれどすぐに体勢を整えられたことから、問題はないように見受けられた。

「大丈夫です。特段問題ありません」

「よかった」

「助かりました真矢さん。しかし……その武器は一体?」

 望遠機能でこちらのことを見ているのだろう。宗一さんから実にまっとうな疑問が投げかけられる。けれどそれに対して……私は返事をすることができなかった。

「……なんでしょうね?」

 先ほどまでの確信した時の強い気持ちが消えたことで、自分自身どうしていいかわからなくなるほど、私はてんぱってしまった。宗一さんに問われて改めて自分の姿を見てみれば……異常としか言えない姿に変わっている。

 アクティブスーツはフル装備であったとしても、対応できるのは人型種のみ。私がアクティブスーツを装備している理由は、宗一さんのマテリアル兵装になった宗一さんの刀に反応したためだ。

 前回の作戦で、自身に調整された準特別機のオーラスーツが修理中で使用できないことも後押しとなり、オーラスーツとパワードスーツの混合部隊の隊長に任命されて配属となった。これは実験的意味が相当強い部隊で、私がアクティブスーツ装備ということも相まって、本来であれば通常戦闘を想定していない。

 しかし緊急事態ということもあり、こうしてFMEと遭遇、戦闘と相成った。危機的状況だったことと、不可思議な現象、さらに私が謎に強気になったことで今に至っているけれど……この状況を思い返して、私は途方に暮れた。

 新種の強敵を倒すことはできたことは幸いなことだし、何よりも強力な武装となったアクティブスーツ……マテリアルスーツ? は戦力状況としては非常に良いことなのだが、あまりにも突飛すぎる状況だった。

「ちょっと二人とも!」

 宗一さんは吹っ飛ばされた影響で少しふらつきながら、私は今の自分の状況に途方に暮れていると……残りの一人である璃兜から怒号が上がった。

「どういう状況かわからないけど、しゃべってるのなら問題ないんでしょ! こっち手伝って!」

 喋れていることから、切羽詰まっている様子ではなさそうだった。けれど大事な友達を放っておくなどあるわけもなく、私は慌てて璃兜に群がる敵に向けて構えた。けれど構えた瞬間に分かった。撃てないと。

(私の体力では足りないの?)

 先ほどの敵に向ける前から、撃てないことが分かっていたかのように……私は宗一さんに撃つことをお願いした。そして宗一さんも、それに一切疑問を抱くことなく、私に向けて六つの光線を放ってくれた。なぜかはわからないけど、この銃は私だけでは撃つことができないようだった。


この時私は自分の身に起きていたことがあまりにもすごすぎたこと、そして戦闘中ということも相まって、この装備がどれほどとんでもないことなのかを、理解できていなかった。


(考えることが多いけど、今は後回し!)

 いろいろとんでもないことが起こっているけれど、今は親友を助けるために戦わなければならない。そして戦うために……

「宗一さん!」

「承知!」

 私の言葉に即応し、宗一さんが先ほどと同じように六つの光線を私に放つ。私は構えた姿勢のまま、三対の盾を宗一さんに向ける。そしてその六つの光を受け止めて、狙撃銃に力が宿ったことを感じ取った。

(通常個体であるならば!)

 先ほどの飛行型の敵と違い、周りに群がってきているのは通常の個体。であるのならば、先ほどの敵に向けた最大出力ともいえる威力は必要がない。そう考えると自然と銃が威力を調整してくれたようで、引き金を引いたと同時に放たれた光線は、明らかに先ほどの一射よりも、光が弱く感じられた。

 想いに反応してくれて、狙撃銃の一発の威力が目に見えて威力が下がった。けれどアクティブスーツで使用されている狙撃銃とは比べ物にならない威力を有しており、威力抑えた今の射撃でも、マテリアルライフルに迫っていると思えるほどの威力を有しているように感じられた。

「すさまじい威力だね」

 それを証明するように、ダヴィ中佐がデータを確認して驚きを隠せないように、つぶやいていた。今の出力を落とした威力でこれなのだから……先ほど私が仕留めた際の威力は、間違いなくマテリアルライフルの威力を優に超えているだろう。狙撃銃という特性が反映されたのか、貫通力が高かったのだろう。

 しかし最大の欠点が……

カチン

(弾切れ?)

 人型種と中型種を倒すことのできる威力で撃っていると、十発も撃つことができず弾切れとなった。威力が向上したことで相当燃費が悪いのかもしれない。再び宗一さんにお願いしようとしたとき、すでに宗一さんが六つの光を私に向けて放ってくれていた。一発も外れることなく六つの盾に吸い込まれて、再び手にしたマテリアルライフルに光が宿った。それを確認したと同時に、私はさらに敵を撃ち抜いた。

 宗一さんは私の装填作業があるためか、上空にて射撃による援護に徹底していた。また私が襲われそうになった時の楯役としてのフォローも兼ねているのだろう。それを気にしつつも、アクティブスーツでFMEと接近戦で戦いたくないため、私は必死にFMEに向けて銃を撃ち続けた。

 私、宗一さん、璃兜の三人でしばらく応戦していたが、敵がこの島への上陸をやめたのか、敵の反応が検出されなくなった。けれど安全のためにレーダーから反応がなくなっても、警戒を少しの間続けていた。

「なんとかなったわね」

 やがて確信が持てたからか、璃兜が大きく息を吐き捨てながら安堵の声を漏らしていた。それは私や宗一さんも同じで……三人そろって深いため息をついた。

「正直……全滅するかもって思ったわ」

「そうだね」

 璃兜の言葉に、私はうなずいていた。人員で一部隊に満たず、装備でも一人がアクティブスーツであるため、FMEと正面切って戦うには無謀と言って差し支えない。

 しかも相手は最悪なことに飛行型の新種だ。本当に、全滅しなかったことは奇跡以外の何物でもない。

 そして……とんでもないことも起こっていた。

「それで……その装備は何?」

「……なんだろうね?」

 璃兜から言われて我に返り……私は内心で頭を抱えた。今まではある程度、巻き込まれたというか、自分が本当の意味で直接的にかかわっていなかったのだけれど、今回は間違いなく私が当事者だった。

(けど、だからといってわかるわけもなく……)

 璃兜に言われて改めて自分の姿を確認する。巨大化した狙撃銃。一対だった盾が三倍の六対に増え、装甲もところどころ強化されている。明らかに普通のアクティブスーツではなかった。

「それは私が最も知りたいことだよ!」

 安全になったからか、ダヴィ中佐がテンション爆上がりでそう言ってきた。基地では集計された様々なデータを見ながら、いろいろと考えているに違いない。今まで宗一さんとともに実験やらデータ収集をしていたことは多々あったけれど、これからは私も完全な当事者として実験台にされることを思って……ちょっとだけ内心で辟易してしまった。

「DXダムガンみたいだなぁ」

 そうして私が途方に暮れていると、そばに降り立った宗一さんが私を見てぼそりと、そんなつぶやきを漏らしていた。

「DXダムガンですか?」

 まさか私がつぶやきを聞いていたとは思わなかったのか、宗一さんが一瞬慌てたけど……すぐに平静を取り戻し、やがてどうしてか知らないけど一度ため息をついてから答えてくれる。

「えぇ。私の知ってる――」

「知っているのかい!?」

 知っているという言葉を言い終える前に、ダヴィ中佐が反応した。その声に驚いてしまったけれど、宗一さんの発言にも驚いていた。それは璃兜も同じで、皆が宗一さんのほうに意識を向けた。

「知ってるといっても、私の世界の創作物の話になりますが」

 そう前置きをして宗一さんが話し出す。

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