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自らを越えて 第二巻  作者: 多谷昇太
3人のアポ(1)の続き
5/13

心中における村田君の述懐(2)

だから云えることは、畢竟、誰もが「自らを越えて」行く必要がある、ということなのだろう。ただしかし、その過程に於ては悪魔もまた必ず介入して来るのに違いないのだ。なぜなら(人間それぞれに憑いてる)悪魔がそう安々とおのれの餌食を離しはしないだろうと思えるからである(我が心中に巣食う黒い霧を思えばそれが容易にわかる)。さても、であるから、大伴さんの親和への道行きは斯くも困難であることだ(バカヤロウ、他人事のように云うなよな。まったく!)…。

さて、俺の心中の述懐に文面を使い過ぎた。話を戻す。男は、呼び止められてはかなわない、あるいは俺たちに追いつかれてはかなわないとばかりに早足で沢を上って行く。その背を見送ったあとでふーっと大きく溜息を吐いてから大伴さんが「まったく、とんだ邪魔が入ってしまったわね。ふふふ、仕方ないわね。ところで御免な、カナ。大声を出したりしてさ」とあやまってみせる。それへ激情をもって返すだろうカナの性癖を慮ってミカが腕をおさえながら「カナ…」と泣きそうな表情で懇願をするようだ。それに「いいよ。わかってるよ」と妹分を気遣うがしかし大伴さんは「しかしカナ、おめえもホント、気が短いな。ええ?いま流行の緋牡丹お竜(※注:この小説は1968年の設定です)じゃないんだからさ、いい加減にしろよ」と諫めてもみせる。「緋牡丹お竜」の言葉に思わず口元を弛めるカナに「いったいどっちが強いのよ、あんたとお竜さんとさ。ええ?」と微笑みながらさらに聞くと「知らねえよ」とついに一瞬でもカナが吹き出した。それを見取ってから今度は「村田君、気にしちゃダメよ。緋牡丹お竜なんかより姿三四郎の方がずっと強いんだから。ねえ?」とうつむく俺に下から覗き込むようにして言葉をかけてくれる。


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