君と僕
「……魔力器官、か」
杏は自分が拾われたという路地裏で、自分の生い立ちについて教えてくれた。
魔力。この1ヶ月いろいろな知識をがむしゃらに集めていた僕が掠りもしなかった未知の物。杏の度重なる消失が魔力による事象なら、僕が最後になって杏のことを忘れずに済んだのは、幼い頃から杏のそばにいたことで少しずつ強くなっていた耐性が最後の最後で間に合ったってところか……筋は通っている。けど、いくらなんでも突拍子がなさすぎる。
「……にわかには、信じ難いな」
「そう……だよね」
杏の声が震えていることに気づいて顔を上げるが、杏は俯いていて表情が見えない。
「でもね、私の見立てが正しければ介斗にもあると思うよ」
「……え?」
何を言っているのか理解できない。
「私を助けてくれた時。幼稚園の頃のことだから介斗はもう覚えてないかもしれないけど、あの時の介斗は明らかに常人を超える能力を持ってた。それに、介斗も持ってるはずだよ?同年代から卓越した記憶力と思考力を」
……っ!心当たりは……ある。
「そうか……確かに、否定は……できないね」
「僕は、周りと違うってことを自分が特別みたいで嬉しいって感じるタイプだったけど……体の構造が他者と違うってのは……ちょっと辛いね」
苦し紛れに搾り出した言葉は冷たい路地に虚しく響いた。杏の顔はまだ見えない。
「でも、杏と同じなら、悪くないかもな」
少し思い切ったことを言った。嘘偽りない本当の気持ちだ。杏には「ねぇ、介斗。 私ね」
空気が凍っていく。
「…私、人間じゃなくなっちゃった」
杏は俯いたまま。だが、杏の足元には一滴、また一滴と雨が降っていた。




