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俺たちのテスト勉強

 告白しといて返事は聞かないってだいぶ驚かせてたけど、こっちは比嘉に好きな男がいると知ってる上で告ってんだ。フラれるって分かり切ってるのに、誰が返事なんか聞いてやるか!


 やっぱり、俺の告白じゃあ比嘉の気持ちを変えることはできなかったか……。いや、分かってたことだ。俺は男のプライドに懸けて、ベッコリ落ち込んだりなどしない!


 好きだと告げて、俺を見つめ返す比嘉に少し期待してしまったのがまずかった。あれさえなけりゃまた違ったかもしんない。

 ほどなくして比嘉はうつむいてしまった。ああ、やっぱりダメだったか、と見てらんなくて比嘉に背を向けた。


 でも、俺はめげずに言いたかったことを全て伝えた! よくやった、俺!

 ハッキリ言ったらかなりスッキリした! 気分爽快!


 これからは、何も気にせずに思いっきり全力で比嘉に好きだって言える! もう我慢しない。俺、こっからこの初恋に本気出す!


「おーい! 統基~、比嘉~。腹大丈夫かー?」

「おー充里! 大丈夫! 超スッキリ!」

「おー、いっぱい出たか」


 充里と曽羽が俺たちを見付けて駆け寄って来る。


「二人とも戻って来ないから、失格になっちゃったよ」

「えー、俺たち失格だって! 比嘉!」

「失格なのに、入谷くんすごく嬉しそうだね」

「曽羽もめっちゃ笑顔で失格を告げてたけどな」


 ふと見ると、比嘉はしゃがみ込んで呆然としている。何しとんじゃ、コイツは。


「汚れちゃうぞ、立てよ」

「あ……ありがとう」


 差し出した手を比嘉が取る。あー、このまま抱きしめたい!


「体育の成績、マラソン大会の結果が大きいらしいから、ペーパーテストでかなりがんばんなきゃなんなくなったぞ」

「よっしゃ、期末テストがんばろーな! 比嘉!」

「う、うん」


 最も恐れていた、比嘉に気まずく思われて友達ですらいられなくなるのを断固阻止するため、俺はここで下手に距離を取ったりなどしない。気にしないでくれ、俺はお前が俺のことなど好きじゃないと知ってて告ってるから大丈夫。


 2時間目3時間目は上級生のマラソン大会だから我ら1年生は来週から始まるテストに向けて自習である。帰っちゃダメなのか、これ。


「比嘉! 俺明日は親父に家にいろって言われてるから会って勉強教えられねえけど、ちゃんと自習しろよ。進捗状況を逐次メッセージで送って来い」

「しんちょう?」

「……勉強したら、これをここまでやったよって送れ」

「分かったわ」

「そう言えば、メッセージの友達登録増えたの?」

「増えたわよ。ほら」

「パパとママと充里と曽羽か」


 自信満々にスマホを見せてくる。良かった、あの男らしき名前はない。

 比嘉が一方的にストーカーしてるだけってことか。うん、それならまだ望みはある! 比嘉が人見知りで良かった。この顔で自信満々に告ったらあの貴公子ばりのプリンスイケメンでも絶対落ちる。


「アイコンそのままかよー。かわいい自撮りだったらメッセージ受け取るたびに嬉しいのにー」

「えっ……自撮りなんて恥ずかしくて」

「照れてんじゃねーよ、マジでかわいいな。めっちゃ好き」


 何気なく俺が言った言葉に比嘉が真っ赤になって両手で口を覆う。素晴らしいリアクションだ、比嘉!


 一度好きだと伝えたらかなり気が楽になった。あんなに思うようにしゃべれなかったのが嘘みたいに言いたいことがスラスラ口から出てくる。

 そして真っ赤になって照れる比嘉が超かわいい。俺はこの姿が見たかった! こんなことならもっと早くに告れば良かった。


 楽しんでばかりもいられない。比嘉専属ティーチャーとして大事な時期だ。なんとしても比嘉と一緒に2年生になるために、中間では欠点だらけだったのを挽回せねば。このままじゃ来年も比嘉だけ1年生をやり直すことになってしまう。


 試験の範囲の一覧表を見る。俺もバカだ。蓮のために教え方の勉強はしたけど、小学校の範囲のみ。高校のテスト範囲など俺一人では教えられない。

 今回、絶対に俺じゃ無理なのは、世界史と化学と数学と古文だな。


「恵里奈、世界史得意なヤツ知らねえ?」

「世界史はねえ、津田が前のテストで100点だったよ」

「マジか! すげえな。よし、津田を特別ティーチャーとして迎えよう。化学と数学と古文の得意なヤツは?」

「化学は杉田(すぎた)くんが前は90点でトップだったわ。数学は吉永さんが98点を記録してるよ。古文は曽羽さんね。曽羽さんは古文の95点を筆頭に前回の中間テストで総合1位だったのよ」

「げ! あのド天然頭いいんだ」

「生活力のなさとお勉強の出来は別物みたいね」


 顔が広いから恵里奈に尋ねたが、なんで点数まで覚えてるんだ。たぶんだが、恵里奈自身は点数取れてなさそう。


「津田! 世界史の出そうな所教えてくれ! 俺、比嘉を絶対に2年生にしたいんだ!」

「分かった! 頼んだよ、入谷! 絶対に比嘉さんを2年生にしてくれよ!」


 世界史の教科書を持って津田に特攻すると、意気揚々とマーカーでラインを引いていってくれる。津田の丸まるとした坊主頭が輝いて見える。ありがとう、津田!


「比嘉! このライン引いてる所覚えろ!」

「え?!」


 そのまま教科書を比嘉の机へ置く。よし次! 化学の教科書を手に杉田大助(だいすけ)の席へと走る。


「杉田! 化学の出そうな所を教えてくれ!」

「そう言われても、俺特に勉強してる訳じゃねえんだよ。実験により体で得た知識だからさあ」

「え?」


 杉田は体も大きく男っぽい濃いめの顔で化学実験が好きそうだとはまるで思わなかった。低音のええ声で戸惑って答える。


「エロ杉、家に薬品いっぱいあって日々実験しては失敗を繰り返してるんだよ」

「そうだったんだ? お前ヤバいヤツだったんだな」

「俺が教えてやるよ。塾で先生がこれは絶対出るって言ってたとこがあってさ」

「迅、日本最底辺の高校に通ってるくせに塾行ってんの?」


 杉田の後ろの席の関迅が俺の教科書にマーカーしていく。塾の先生が言うなら確かだろう。ありがたい!


「サンキュー、迅!」

「絶対比嘉さんを2年生にしろよ! 入谷!」

「任せておけ! 曽羽!」


 次は古文だ! 充里の膝に座ってイチャついている曽羽にも出そうな所を教えてもらう。お前ら教室でよく恥ずかしげもなくイチャついとんな。

 よしラスト、吉永!


「吉永!」

「比嘉のためにがんばれー、統基!」

「おう! 俺が比嘉を2年生にしてみせるぜ!」


 吉永の席へと走る俺に充里がデカい声で言うから、俺もデカい声で答える。


「比嘉さん、私年号覚えるのにいいアプリ知ってるよ。これ」

「あ、私もこれ入れてるー。すごい覚えられるよね」

「これもいいよ。試してみて」

「え……あ、ありがとう。あ、ありがとう」


 比嘉の隣の那波はじめ何人かが比嘉にオススメのアプリを教えてくれているらしい。人見知りがまたいっぺんにそれぞれ相手をしようとしてせわしなく顔をあちこちに向けている。こういう時は1対1じゃなくていいのに、全くしょうがないヤツだ。


「みんなで比嘉を2年生にしような! 我ら1年1組、全員そろって2年生になろう!」

「おー!」

「え……あ、ありがとう、みんな」


 そうそう、それでいいんだよ。めっちゃいい笑顔出たじゃん。

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