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俺たちの花火大会計画

 教室に入ると、俺も用事があるのを知っているかのように津田が笑顔でやって来る。


「これ、らんぜちゃんに渡してほしいんだ」


 つい昨日似たようなセリフを聞いたなあ。


 てか、津田が両手で大事そうに差し出している箱に見覚えがある。あれ? 俺らんぜから預かった箱落とした?


「その箱、なんでお前が持ってんの?」

「修学旅行で作った益子焼が出来上がったんだよ」


 津田が教卓を指差す。教卓の上にはまだ10箱くらい残っている。


「なるほど」


 津田の箱を受け取り、カバンから預かり品の箱を出す。


「はい」

「え?! なんで?! らんぜちゃんに渡してくれよ!」

「バーカ。中見てみ」


 俺も見てないけど。

 津田が箱を開けて湯呑を取り出す。


「これ……」

「津田か。下手っぴな」


 坊主頭の男の絵だということは分かる。10年後の日付が入っている。


 忘れないで、ってか……あのメスガキ、意外とかわいいことしやがる。


「運命だ! 僕、絶対に10年後にもう一度告白する!」


 津田が宣言と共に湯呑を抱きしめた。


 津田から預かった箱を開けて湯呑を出す。


 ……コイツら、同じことしてたのかよ……。


「お前マジでメガネ替えた方がいいよ。あのメスガキはこんな大人っぽくねえわ」

「10年後にはそんな感じかなって思って」

「……こんな美人にはなってねえよ」


 さすが美術部の腕前だが、美化しすぎだ。湯呑を箱に戻し、カバンの奥に入れる。


「メッセンジャー、しかと引き受けました!」

「頼んだよ、入谷!」


 ちょうど今週末に兄貴たちがうちに来る予定になっている。亮河に渡せばらんぜへと届くだろう。


「てかさ、お前ら相手に渡すつもりなら自分の似顔絵描けよ。お互い自分の顔見ることになるじゃん」

「あ。らんぜちゃんの顔しか頭になかったものだから」


 バカだな、コイツら。お似合いかもしんない。


「おはよー」

「おう、おはよ」


 充里と曽羽が登校してきた。


「なあ、夏休みにまた花火やんねえ?」

「おー、いいねえ」


 これから夏休みの予定を立てようというのに津田が席に戻ろうとする。逃がすか。


「津田、お前いつ都合いい?」

「え?!」

「話聞いてなかったのかよ。花火」

「あ……僕もいいの?」

「そーゆーのいらねえから。いつ空いてる?」

「いつでも!」


 予定合わせやすくて助かるわ。


「完全にグループできてるし、今年はクラス全員誘わなくてもいっかなー」

「クラスの人数自体も増えてるしな。今年は仲間内な感じでいんじゃね」


 クラスの人数が増えた分、学年の人数は順調に減ってんだけど。


「おはよー」

「おー、佐伯。夏休みに花火しよーぜ」

「実来たちのグループも呼んでよ!」

「まだ諦めてねえのかよ」

「じゃあ、とりあえず俺らと実来たちねー」

「あ、ちょうど吉永が来た。吉永ー!」


 吉永わざとらしく首をかしげてからやって来る。


「おはよっ」

「はよ。夏休みに俺らと花火しねえ?」

「え! だったら行村呼んでよ!」

「行村? だけならいいけど」

「俺も行く! 俺花火の中で歌いたい!」

「いたのか、マザゴリ!」


 俺たちプラス津田プラス実来たちプラス行村と仲野。完全に修学旅行で一緒だったメンバーじゃねーか。


「おはよー。集まっちゃってどうしたの?」

「お、恵里奈も来る? また花火大会しようって言っててさ」

「あ! だったら吉田たちも誘ってよ」

「登生と大知か。あ、結愛が来るなら来夢もセットだよな。来夢が来るなら下野もか」

「あと、氷川くんも」

「あー、穂乃果ね。氷川誘うなら鎌薙と迅もだよな」


 ちょうど大知が来たから呼び寄せる。


「花火? いいじゃん! 細田も誘ってくれ」

「えー、あいつめんどくせえんだよな」

「うわ! なんでこんな集まってんの?」


 佐伯の後ろの席の阪口が席に座れなくなってしまっている。


「わりーわりー。夏休みに花火しようって言っててさ。阪口もどう? もちろん釘城も誘ってやるから」

「べっ、別にいいよ! 杉田だけ誘ってくれれば!」

「じゃー、杉田だけ誘うわ」

「それじゃ不平等だろ! みんな平等に誘えよ!」

「やっぱ釘城も誘ってほしいんじゃん」


 まだくっつく気はないらしいな、この幼馴染は。


 もうこれクラスのほとんどじゃん。収拾つかなくなってきた。

 教室を見回すとポツンと席に座る優夏と目が合った。あ、那波が学校辞めてからまだボッチなのか、優夏。


「優夏! 立夏と花火来いよ!」

「立夏学校違うけどいいの?」

「立夏なら気にしねえだろ」


 優夏が笑った。クラスではボッチでも立夏がいたら優夏は心強いはずだ。


「統基、これもう全員じゃねーの?」

「そだな。まーいいんじゃね」


 みんなが空いてる日を探す。この人数になるとなかなか予定が合わない。てーか、まだ来ないのか叶は。家近いのに遅いんだから。


 ドアをチラチラ気にしていたら、叶とすぐ後ろを緑川と和中の留年コンビが入ってくる。


「比嘉! 夏休みにみんなで花火しよーぜー」


 充里が大声で言って、緑川と和中までこっちを見た。


「箱作が幹事なら絶対曽羽来るじゃん! 俺らも行く!」


 くっそ、やっぱりこうなったか。

 俺らの修学旅行を日光にした諸悪の根源と花火なんかやりたくねえ。


「緑川、マザゴリも来るけどいーの?」

「へっ……平気だ!」

「緑川くんは体のデカいヤツ恐怖症を治すために最近ずっと相撲部屋に出入りしてるんだぞ!」

「ふっ、ヤメロよ、尚吾。毎日トラウマと戦う俺の雄姿を曽羽が想像しちゃうだろ」

「普通に緑川くんが猿みたいに小さく見えて超おもしれーんだからな!」

「お前、俺を猿みたいだと思ってたのか!」


 あー、うるっせー。ケンカするなら教室を出て行け。


「これで完全にクラス全員になっちゃったなー」

「日にち決めちゃおーぜ、統基」


 ワイワイと話し合いをしていると、ツンツンと遠慮がちに肩をつつかれた。見ると、叶だ。


「肩くらい普通にトントンしてもらっても大丈夫だよ」

「あの、そうじゃなくて……」


 叶が小さく指を差す。


「あ!」


 その先で、なぎさが笑顔ながら静かに涙を流していた。


 忘れてた! 存在感なさすぎなんだよ!


「なぎさ来てたんだ?! 夏休みにみんなで花火やろうって言っててさあ!」

「知ってます。私、一番に教室に来ていました……私のこと、見えないのかな……悲しいな……てへっ」

「ごめん! 俺たちが悪かった! 一緒に花火やろーぜ! みんな、なぎさも来てほしいよなあ?!」

「なぎさマジでいたー? 全然見えなかったー。あはは」

「充里!」


 夏休みが始まる前から波乱含みだな、こりゃ。


 なぎさも呼び寄せ、これで本当の全員集合だ。叶が嬉しそうに笑う。


「またみんなで花火できるの、楽しみだわ」

「去年、楽しかった?」

「うん!」


 俺は去年はちょっと悲しい気持ちで花火してたのを思い出す。今年はしんみり線香花火なんかやんねえ。デカい花火ぶっ放してやる!

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