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私たちの部屋着選び

 みんなとの待ち合わせは繁華街のショッピングセンター入り口だけど、先に家が近い愛良と合流し、更に駅で統基、充里とも合流した。


「服かわいいじゃん。今日はママが選んだんだ?」

「ええ。そんなに大勢の友達と出かけるならって昨日ママが買って来てくれて」

「買い物に行くための服を買って来たの?! 過保護やべえ」


 そう言う統基はいつものように何とも表現しづらい服を着ている。


 セットアップなのか、上下とも色味の似たムラ染の深い青で、7分袖の裾と袖には白く模様が彩られている。統基にしては細い7分丈のパンツで、今日も個性的な服が似合っている。


「充里、海にでも行くようなカッコだねえ」

「俺も今日開口一番に言った。6月でアロハは気が早えだろって」


 充里はアロハシャツにハーフパンツを履いている。体が大きいから派手なアロハシャツが迫力ある。


 電車に乗り込むと空いている。四人で並んで座った。


「マザゴリどんな私服なんだろー。想像つかねえんだよなー」

「ゴリラらしく裸じゃねーの。ゴリのくせに服なんか着てんじゃねーよっての」


 ぶわっはは! と充里と統基が爆笑している。


 待ち合わせ場所に行くと、すでに佐伯くんと行村くんがいた。


「すごいよ、行村超かっけー」

「佐伯こそ超かわいいじゃん」


 二人で服を褒め合ってたみたいね。


 たしかに、行村くんはテロテロした黒シャツに薄い青のダメージジーンズを合わせていて大人っぽい。さすがモデルさんって感じ。


 対して佐伯くんは、小柄な体にブカッとしたピンクのパーカーで、たくさん猫のイラストが描かれていてとてもかわいい。


「曽羽すげえ! うちの事務所入んない? 絶対グラビアやったら人気出るよ」

「俺鼻血出そう」


 行村くんがスカウトを始め、佐伯くんが鼻を押さえる。


 愛良はシンプルなグレーの半袖ニットワンピースを着ている。ゆったりめなんだけど、リッチなバストの主張が激しい。


「マザゴリまだかよ。調子こいてんじゃねーぞ」

「てか、まだ待ち合わせ時間になってねえよ」

「マザゴリ、どんな私服なんだろうね」

「どーせセンスの欠片もねえだろうから笑ってやろーぜ」


 そうね、仲野にファッションセンスがあるとは思えないわ。


「比嘉さん! 待った?」

「叶とデートみたいに言うな! 図々しい!」


 振り向いた時にはすでに統基が仲野を蹴っていた。


「げ! 仲野かっけえ!」


 佐伯くんが驚きの声を上げる。


 統基に蹴られている仲野は、優しい紫色のインナーに黒い5分袖のジャケットを着て白いひざ下丈のパンツで爽やかに仕上げている。


 大柄で高校生に見えない仲野に大人っぽい雰囲気のジャケットがすごく似合っている。


 ただ、そのカッコいいジャケットに次々と統基の靴底がスタンプされていく。


「クールな模様ができただろ。感謝しろ」

「あー! ひどい!」

「俺、部屋着って部屋着持ってねえから修学旅行用に買わないとなんなくってさあ」


 ジャケットを脱いでパンパンと模様を消そうとする仲野を無視して統基が話を進める。ジャケットがなくなると急にゴリラ感が強くなるのはどうしてかしら。


「みんな自分のじゃない人の部屋着選ばない? 自分で選んだら似たような服ばっかになるじゃん」

「いいねー、佐伯。くじ引きアプリで誰が誰の服選ぶか決めよーぜ」

「統基、これ6人までしかくじ引きできねえよ」


 くじ引きの結果、統基が私、佐伯くんが統基、行村くんが愛良、愛良が行村くん、私が佐伯くん、充里が充里になった。


「俺は?!」

「充里ハズレ~」

「じゃあ私が充里の服を選ぶわ。充里は佐伯くんの服を選んであげて」

「ええー、俺比嘉さんに選んでほしかった~」


 みんなで安くていろんなテイストの服がそろっているお店に入る。


 充里か……。

 絶対にサイズはLLよね。


 アロハシャツのイメージが強くて、派手な服にしか目が行かない。


「みんな決めたな? 誰から行く?」

「私からいいかしら。自信ないから後からだと出しにくくて」

「なんでお前は自信ないくせに無駄に自信満々な雰囲気出してんだ。叶は充里か。充里、着て来いよ」


 充里が私が選んだ服を持って試着室に入る。

 ドキドキしてきたわ。トップバッターもやめておけば良かったかもしれない。


 シャッとカーテンが開いた。


「着替える前と変わんねえじゃねーか!」

「いや、シャツがTシャツになって襟がなくなった。俺これ気に入ったわ。サンキュー、比嘉」


 気に入ってもらえて良かった。元のアロハシャツに戻った充里が試着室から出る。


「次、俺! ひと目見てこれ曽羽に着てほしいってビビッと来たんだよね」


 行村くんが愛良と服を試着室に押し入れる。


「へえ、そんな曽羽に似合いそうな服見つけたの?」

「曽羽のために作られたような服だよ。期待してて」


 シャッとカーテンが開くと、胸元がパックリ切られたように開いていて、ハイウエストでベルトがキュッと閉まっている黒いワンピースを着た愛良がスカートの裾を引っ張っている。


 ああ、愛良は背が高いから丈が足りないんだわ。

 

 と理解した瞬間、統基がシャッとカーテンを閉めた。


「下心しかねえチョイスしてんじゃねえ! 鼻血拭け! 佐伯! マザゴリ!」

「曽羽ちゃん、超似合ってたね」

「セクシー女教師だって」

「彼女にコスプレさせられて歓談すんな! 次、俺行く!」


 愛良が試着室から出てくると、統基が入って行く。


 シャッとカーテンが開くと、周りのお客さんも含めておおっ! とどよめきが起こった。


「かわいい!」


 思わず愛良と手を合わせてしまったくらい、統基なのにかわいい。


 黄色の大きな襟が目を引く水兵さんな感じの白いセーラー服のセットアップだ。セーラー服と言えば女子の制服のイメージだったけど、メンズのセーラーかわいい!


 裾に黄色のラインの入った7分丈の太目のパンツも、お揃いの白地に黄色のラインが入った帽子も、統基のミニチュア・ピンシャーみたいに大きな目と褐色の肌を映えさせる。


 憮然とした表情で統基がカーテンを閉めてしまうと、ああ~……と惜しむ声が湧く。


「入谷の肌にあれ絶対似合うと思ったんだよねえ」

「めちゃくちゃ似合ってた!」

「すごくかわいかったねえ」


 元の服装に戻った統基が佐伯くんに服を投げつけた。


「やめだ、やめ! 自分の服は自分で選ぶ!」

「なんで? かわいかったのに」


 キッと統基がにらみつけてくる。


「男にかわいいなんて褒めてねえんだよ!」

「俺かわいいって言われると嬉しいよ?」


 ウンザリしたように統基が佐伯くんを見る。


 そんな、自分で選ぶだなんて。

 今この時間がすごく楽しいから、みんなで選んだ服を着て修学旅行のひと時を過ごしたい。


「私も統基が選んでくれた服を修学旅行で着たいし、みんなで選びっこした服着ようよ」

「叶……」


 はあ、とため息をついた統基が佐伯くんの選んだ服を手に取った。


「サンキュー、佐伯」

「おう! すっげー似合ってたよ!」


 統基が苦笑いして、私に白い服を渡してくる。


「こんな人の多い中でそれ着たら目立つだろうから、家帰ってから着ろよ」

「分かったわ」

「お前は清廉潔白な白がすげー似合うから」


 ボソッとつぶやくように言う。声の大きな統基には珍しい。


 みんなで愛良の服を選び直して、小腹がすいたと一階のバーガー屋さんに行った。


「俺ビッグテリアバーガーセット5個」

「充里食いすぎ!」

「俺ハンバーガー単品で」

「マザゴリ食わなさすぎ!」

「その体で俺より食わねえのかよ!」


 店内でワイワイと騒いでいる男子たちを見ているだけで楽しい。


 ああ、こんなに大人数で日曜日にお買い物なんて夢みたい。ドラマか漫画でしかないと思っていた景色に自分がいることが信じられない。


「俺事務所から一日一回はSNS更新しろって言われてんだよね。みんなで撮ろうぜ!」


 行村くんがスマホを構え、みんなが画面に入るように仲野が後ろへと追いやられる。


 うわあ! みんなで写真撮るなんて、ものすごいアオハルをやってる!


「じゃあ、俺らこっちだから」

「私たちはあっち」

「俺らはそっち」


 四つ角で統基と充里と佐伯くん、私と愛良、仲野と行村くんに分かれる。


 青春感が強い! 私今日一日で一生分の青春を謳歌したんじゃないかしら。


 家に帰ってもまだ興奮が冷めやらない。


 そのままのテンションで統基が選んでくれた服を着てみる。


 ……ごくシンプルな真っ白い半袖Tシャツとハーフパンツのセットだ。生地がしっとりしていて首回りのゴムが柔らかくていい感じ。


 着心地のいい服ね。部屋着にピッタリ。


 冷蔵庫からお茶を出してコップに注ぐ。


「あ!」


 お茶を飲んでいて、口の端からこぼれてしまった。


 白い服なのに!


 慌てて確認すると、早速シミになってしまっている。


 すぐに洗えば落ちるかしら。せっかく統基が選んでくれたのに。


 脱いで食器洗剤をつけてゴシゴシとこすってみる。水で流したら、シミはキレイになくなった。


 良かった……。


 真っ白なシャツを広げて、統基の顔を思い浮かべる。修学旅行が楽しみすぎる!

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