57歩目
お待たせしました。
それでは本編をどうぞ!
リーフがダークに攫われてしまったので、床に転がっているクラリスの介抱をするエールとウール。
「クラリスさーん。大丈夫ですか?」
「クラリス。生きてる?」
「……死ぬかと思った……」
息も絶え絶えに発した言葉がそれだった。そして、再び気絶してしまった。でも、久しぶりにクラリスの声を聞けてホッとする4人であった。
「とりあえず、隣の部屋の私のベッドに連れて行きましょう。いつまでも床で寝かせると風邪を引くもの。」
「そうですね。ではワタシが運びましょう。ニコラも付いてきますか?」
「行く!」
ふらふらと歩くニコラを見えウールが肩を貸してあげた。
「まだふらつくのね。」
「うん、だらしないよね……」
「そんな事ないわよ。結局、私は戦えなかったから……ニコラがアイツの片腕を吹き飛ばしてくれなかったらどうなっていたか……ありがとう。」
「……どういたしまして。ウールにお礼を言われるのは少しむずがゆいね。」
「な、なによ!私だってちゃんとお礼くらい言えるわよ!」
「あはは。クラリスの言う通りだね。ツンデレだ。」
ウールは顔を真っ赤にしてニコラを突き放した。そして、今まともに立てないのでニコラはよれよれして尻もちをつくのであった。
「イテテ……」
「あ、ごめんなさい……」
急いでニコラに駆け寄って再び立つ手伝いをするウールでした。
「ウールさん、手伝わなくていいんですよ。今のはニコラが煽っていたので悪くありません。」
「いやいや、流石に今のは私も悪かったから……」
「あんまり甘やかさないで下さい。直ぐに調子に乗るんですから。」
心配したり、厳しくしたりと、ウールも大変だなーっと思うウールとフロールであった。
クラリスを着替えさせてると、エールとニコラはクラリスの胸辺りを見ていた。
「どうしたんですか?」
「いや、あの時刺された傷が塞がってるの……しかも傷跡すら残ってないわ。」
「どのあたりですか?」
フロールの質問に胸の少し上の部分を指差した。
「本当ね……しっかり綺麗に塞がっている。」
「ねぇ、この魔力って解析出来たりしないのかな?」
「んー……私では出来ませんね。リーフさんならもしかしたら……」
ここにリーフがいないので、この話はここで終わるのであった。
クラリスの着替えを終わらせるとフロール以外の面々は部屋を出た。
「ねぇ、なんで私たちは隣の部屋なの?」
「そうよー!私もクラリスさんの隣に居たいわよ。」
「ニコラはまだ病み上がりでしょ?ウールさんはニコラの話し相手と少し休んでください。今日まで、フロールさんの看病してたんですから、それに……たまには2人っきりにしてあげましょう。」
エールの言葉にニコラとウールは顔を見合わせるのだった。
「クラリスさん……」
「うん……」
「やっぱり起きてたんですね。」
「うん……」
「なんで目を瞑ってるんですか?」
「合わせる顔がないから……」
「私からは見えてますよ。」
「……」
クラリスは寝返りを打って顔を背けた。それがフロールにはなんだか可愛くてクスクスと笑ってしまった。
「何か面白い事でもあったの?」
「ええ、可愛い生き物が目の前にいます。」
「へぇー、私には見えないからどんなのか教えて。」
「ふふふ。そうですね。金髪ロングで色白で可愛いパジャマを着てて、私にそっぽを向いている可愛い女の子がいます。」
「そっぽ向いてるのに可愛いんだね……」
「ええっ、とっても!」
クスクスと笑うフロールに少しムカッとしてしまうクラリスであった。
未だにそっぽを向いているクラリスにフロールはいつもの調子で話しかけた。
「いつ以来ですかね。こうして2人っきりで話すのは……」
「初めて会った街から山道を歩いて以来かな……?ここまで結構長かったわよね。」
「そうですね。いろいろありましたからね。」
「……フロール、ごめんね……私が弱かったばかりに傷つけてしまった……」
「クラリスさんのせいではないわ。私ももっと自分で自分を守れる様にならないといけないんです。」
「それでも、今回は私が弱かったから。もっと他にいい方法があったかもしれないのに……」
「良いんです。もう過ぎた事なので、それより、みんな無事だった事を喜ぶべきです。」
「……うん、そうだね。」
「それよりクラリスさん、私……まだ精霊らしいです。」
「……えっ?」
クラリスは起き上がってフロールを見た。そこにはいつものフロールがいた。そして、クラリスははっとなって再びそっぽを向いて寝てしまう。
「意固地ですね。クラリスさん。」
「そ、それで?」
「はい、私は天候を操る妖精の様なのでこれから修行して能力を開花させます。」
「うん……」
「それでリーフさんにいろいろと教えてもらう事になるそうです。」
「そう……なんだ……」
「だから、私が妖精になれた時は、クラリスさんと契約させて下さい。」
「……無理だよ。妖精との契約は1人につき1人の妖精。私には既にリーフがいるわ。リーフとの契約は私が死ぬまで切れないわ。」
少しの沈黙を迎えて、扉をノックする音が聞こえた。
「フロール姫、少しよろしいですか?」
声からしてライトだとクラリスは分かった。フロールは「どうぞ」と一言かけるとライトが部屋へと入ってくる。
「あら?クラリスちゃんがベッドを使っているのですね。」
「ええ、私はもう大丈夫なのでクラリスさんを寝かせています。」
「そうなんですね。それでクラリスちゃんはなんでそっぽ向いてるのですか?」
「それが、私に合わせる顔がないと意固地になってしまいまして……」
「ふふふ。そういう事ですか。それなら……」
ライトは掛け布団を掴むとそのまま布団をひっぺがえした。
「いつまで拗ねてるの!全くこの子は!」
(す、凄い力……)
「前もですね。リーフが傷つけられて2、3日クラリスったらこうなったのです。だからこういう時は力技で振り向かせないといけません。」
「は、はぁ……」
あまりの衝撃的な光景にフロールは呆然としてしまうのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新は1月1日土曜日の15時です。お楽しみに!
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さて、本年最後の更新となりました。今年一年読者の皆様に支えられて頑張って来れました。
本当にありがとうございました!
来年もよろしくお願い致します。




