2歩目
お待たせしました。
それでは本編をどうぞ!
クラリスが起きたのは夜明け前だった。服装は昨日の魔道士の格好のままである。
朝霧に包まれた村には昨日の戦いの騒音は無かった。
「行こう!これ以上誰も傷つけさせない!」
クラリスは昨日の空腹など忘れて街を目指した。人々を護る為に。
「誰かが魔物を退治してくれたのかしら…」
夜は魔物が多くいた街だが今は誰もいない、そう彼女を除いて。彼女の名前はフロール。この街の守り神をしている。1週間前、この街は魔物に襲われた。結界を壊され、街の人々は殺された。そして、この辺りの村をその魔物達が襲い、ここへ連れて来ては殺して食べていた。彼女はなんとかして、捕まってた人たち数人を逃して犠牲者を減らす為動いていた。しかし……もう力が無く、魔物の群れを倒すだけの力は残っていなかった。
「とにかく……これ以上は見てられない。私が消えてもなんとか止めてみせる。」
昼間が一番動けるが、魔物は夜にしか現れない。フロールは魔力の回復させる為に姿を一旦消した。
「この街ね…」
クラリスはお昼過ぎに街へ着いていた。歩く事約6時間以上、クラリスは疲れながらも歩き続けていたのだ。街に入ると廃墟と化していた。そして、色んな場所から死臭がした。
「あの村より酷い匂い…」
窓から建物の中を覗くと家具が壊されたり、ひっくり返されたりしていた。
「酷いなー……」
そしてしばらく街を歩き回っていた。
……
…………
………………
(見られてる?見張りかしら……?)
クラリスは警戒を強めた。
…………
………………
(どうやら見張りという訳ではないみたいね…警戒してるとはいえ、襲ってこないみたいだし…)
少し警戒を解いたクラリス。するといきなり声がした。
「……こっちへ……」
か細い声だが聞こえた。クラリスは声のする方へと歩きだす。
(弱々しい声ね…それにこの声は直接耳に振動を与えてるみたい…)
「あっ!」
クラリスが声を上げた。その先には1人の少女がいた。
銀髪のロングヘアに青い瞳、肌は透き通る様に白い。服は白と青を基調とした服装だった。
「貴女はだれ?私の事見てたでしょ?」
「ええ……覗き見してたみたいでごめんなさい……私はフロール。この街の守り神です……いいえ、でした。ですね……」
「謝らなくていいわよ、黙って見られてたのは嫌だったけど……それで、何故過去形なの?」
「私は無力の守り神です。戦う事も出来なかったのですから…」
「そうね、それは変えられない事実ね、でも、貴女は悲しそうな顔をしているわ、後悔してるんでしょ?」
「ええ…それはもちろん…だからと言って過去は変えられません。」
「そうね。だったら魔物退治しないとね!」
「えっ?」
「フロールは攻撃出来ないんでしょ?なら私が戦えばいいだけだからね!」
「……貴女が強いのは分かります……私の気配を感知できるのですから……でも…勝てません……数が違い過ぎます……だから……逃げて下さい!」
「はぁ?何言ってるの?私が逃げたりしたら他の村にも影響が出るじゃない!」
「大丈夫です……これ以上被害は出させません。今の私が唯一使える攻撃魔法……アイスアロー……これで仲間を纏めてる魔物を倒せば烏合の集となります。だから……」
フロールは手を挙げて。
「逃げて下さい!貴女が戦う理由はありません!」
「えっ?ちょっ⁉︎」
クラリスは風に包まれてしまった。
「私だって戦う為に来たのよ!勝手な事しないでよ!」
「ごめんなさい……でも、私は貴女に傷ついて欲しくないの!全て私のわがままです。貴女を生かしたいという私の……どうか、お元気で!ウール!北の村へ逃してあげて下さい!」
「ちょっと、この子まさか精霊?という事は貴女は!」
クラリスが確認を取る前に高く、遠くへと飛ばされてしまった。
「ちょっと貴方、精霊なんでしょ?戻してよ!私は戦う為に来たのよ!」
「貴女、私が精霊って分かってるのなら知ってるでしょ?精霊は指示された命令を遂行するまでは命令が解けないのよ!」
「それなら!主導権をもらうわ!」
クラリスは風の精霊に自分の魔力を流し込む。
「ちょっと!何してるのよ!」
「あの子の主導権を私に上書きするのよ!」
「無茶苦茶しないでー!」
風に包まれたクラリスは徐々に高度を下げて…木にぶつかった。
「ふぎゃ!」
そしてそのまま地面に落ちるのであった。少し目を回した後に声をかけられる。
「ちょっとアンタ!めちゃくちゃしないでよ!あー頭が痛い…」
そこには赤髪のショートヘアで服装はぶかぶかのパーカーの様な服を着ていた幼女が立っていた。
「仕方ないでしょ、魔物を倒す為に来たのにいきなり逃げてなんて……」
クラリスは体制を戻して座る。その横にウールという幼女も座る。
「はぁ……あの子はね、人が好きなのよ……」
「えっ?」
「守り神なんて言われてるけど、もともとは妖精だったの。」
「そうね、貴女を使役してるという事はそういう事だもんね。」
「使役じゃないわ!友達よ!」
「友達……そっか、ごめんね、言い方が悪かったわ。」
「べ、別に怒ってはいないわよ!ただ、勘違いはして欲しくないだけ。」
……
沈黙が続いた。
「それで、なんで妖精が守り神になったの?」
「それはね……ここの土地神に気に入られてしまったからよ……」
「そんな事で、選ばれるの?」
「フロールは今は魔力が少ないけど、もともとは凄い妖精なのよ。風と水を操っていたの。もちろん攻撃魔法も沢山使えたのよ。」
ウールは鼻高々にフロールの自慢をしていた。
「そうなんだ……じゃあなんで今はあんなに弱ってるの?」
「フロールは今、街の建物が崩壊しない為に魔力を使ってるの、それこそもう一度人々が暮らせる様にする為に…」
「なるほどね…それなのに、自分が消えたら意味が無いよね!よしっ!戻るよ、街へ!」
クラリスは立ち上がって街へ戻る事を宣言した。
「アンタ正気?戻っても魔物に食われちゃうのに、何考えてるの!」
「分かってるよ!でも、私を守ろうとしてくれてるのに、自分だけ安全な場所にいるなんて出来ないのよ!」
「はぁ……フロールといい、アンタといい、お人好しね。しょうがない!私が連れて帰るわ!ここからなら夕暮れ前には着くはずよ。」
「ありがとう!」
「べ、別に貴女のためじゃないわよ!フロールの為だからね!」
「はいはい!」
「じゃあいこ……」
クラリスは途中で言葉を切った。
「何どうしたの?」
「静かに……魔物がいる。5体……」
「えっ⁉︎」
「なんで、こんな所に……」
クラリスは聞き耳を立てて魔物達の話し声を聞いた。
「この辺りにいるはずらしいぞ」
「あー、ボスが言うには風の魔力はこの辺で途切れたらしい。」
(ん?私たちが落ちた場所がバレてる?)
「当てになるのか?それ?」
「あー、大体当たってるってさ、何でも守り神の魔力を読み取ったから正確に場所が分かるんだと。」
(な、何よそれ…)
「なら、さっさと探さねーと餌が逃げちまうな!」
「もういいよ…」
「ちょっとアンタ!」
クラリスはゆらっと立ち上がる。そして魔物にも見つけられてしまった。
「おっ!居たぞ!餌だ!2匹いるぞ!」
「餌は……お前らの方だ!風よその刃を持って我が敵に断罪を!エアークラッシュ!」
3体の魔物の首が一瞬にして吹き飛んだ。それに釣られて2体の魔物がこっちを向いた。
「な、なんだ何が起こった⁉︎」
「あ、アンタ……」
「ウールさん。ここは私が片付けるから魔力を回復しておいて!こいつら倒したら街に戻るわよ!」
「は、はい!」
クラリスは、残りの2体と戦うのであった。
戦闘シーンを書くってやっぱり難しいなーと思います。戦闘シーンを書ける作家さんたちを尊敬します。
それではここまで読んで頂きありがとうございました。次回更新もお楽しみに!