23歩目
お待たせしました。
それでは本編をどうぞ!
クラリスとニコラは向き合って約1分…
どちらも動かず相手の出方を伺っていた。
(構えに隙がないわね…)
(うぅー…動きたい…でも、動いたらやられそう…)
クラリスとニコラはお互いに相手を睨み合いながら考える…そして。
「あー!もういい!」
「ちょっとニコラ⁉︎」
「いっっくよーー!」
思いっきり地面を蹴ったニコラがクラリスに突っ込む。後ろに居たエールは砂埃をモロに被った。
「おりゃー!」
ニコラは拳を思いっきり振りかぶりクラリスに叩き込んだ。
しかし…
ガシっ!
「どうしたの?そのくらいじゃ、私には届かないよ?」
クラリスはニコラの拳を受け止めていた。しかも利き腕ではない左手で…
ニコラは一旦距離を取ろうと後ろに下がろとした。
だが…
「えっ…嘘?動けない…」
「逃がさないよ!」
クラリスは不敵な笑みを浮かべ、そのままニコラを振り回して来た方向へ投げ飛ばし、壁にぶつけた。その瞬間「わー!」という歓声が聞こえた。
「クラリスさん……強いのは知ってだけど、ここまで凄いの……」
「私も戦ってるところは何度か見た事あるけど。こんなに強いの……」
フロールとウールがそれぞれ感想を述べていたがリーフはさも当然であるかの様に見ていた。
「何言ってるの。こんなのまだまだ序の口よ。まだ攻撃してないじゃない。」
「ほっほっほ。やはりあの頃より強くなっておるの。」
バースはクラリスの成長を楽しそうに見ていた。
「いてて…強いなー…お姉ちゃん、ここからは本気で行っていいよね?」
「ダメに決まってるでしょ!」
「いえ、大丈夫よ。本気で来てください。」
エールはニコラを止めるが、クラリスは大丈夫と言いエールを止め、ニコラへ本気でくるように促す。
「死んでも知りませんよ!」
そう言うとエールはリーフたちの近くへ避難する。
「リーフさん、クラリスさんがもし危なかったら防御魔法の援護をお願いしてもよろしいですか?」
「大丈夫よ。もうクラリスの勝ちだから。」
「はぁ?何言ってるんですか⁉︎」
「まぁ見てなさい。」
リーフは心配ないからとエールに伝え試合を見る。
「じゃあ本気でいっっくよー!」
ニコラは腕を回しながら近づいてくる。クラリスは木刀を直して、拳を構えた。
「来なさい。」
「あれ?木刀使わないの?」
「同じ土俵で戦うわ。そして、戦い方を教えてあげる。」
「それは舐めすぎじゃない。死んじゃっても……文句言わないでよねっ!」
再び地面を強く蹴って前にでるニコラ。そして、悠然と構えるクラリス。
「うららららららっ!」
物凄い連打をニコラは繰り出して来た。1発でも当たればそれこそ即死の様な拳を……
しかし……
(嘘、全然当たらない…なんで?)
自分の攻撃がまるで当たらないことに焦るニコラ。
(でも、それなら!)
一旦距離を取るニコラそしてそこから回し蹴りを顔面に目掛けて繰り出す。しかしその攻撃も軽々躱すクラリス。
(これでもダメなの…?)
大技も躱されて焦るニコラ、そこへクラリスは声をかける。
「ねぇ、ニコラさん気づいてますか?」
「な、何をよ。」
「その様子だと気づいていない様ですね。」
「何が言いたいのよ!」
攻撃が当たらなさ過ぎてイライラしているニコラにクラリスが告げる。
「私、まだ一歩も動いてないのよ。」
「えっ…?そんなこと…ありえないよ…」
「いいえ、クラリスさんの言う通り動いていないわよ、ニコラ。」
少し離れて、リーフたちと一緒にいたエールがニコラに伝える。
「信じられないでしょうけど、全て避けていたの、その場に居ながらね。」
「そ、そんなことあり得るの?」
流石に怖くなったのかニコラは顔を引き攣らせていた。
「どお?少しは学べたかしら?」
「ぐぬぬ…」
「分かっていなさそうね。じゃあ…教えてあげる。」
途端に目の色を変えたクラリスは思いっきり踏み込んでニコラの前まで距離を詰める。
(は、速い……!)
そう思ったのも束の間、クラリスの拳が腹部に2発入る。
「グフッ……」
そして、続けて顔に張り手が1発入ってニコラは倒れた。まだ意識がはっきりしているニコラは何が起こったか分からないけれど、腹部と頬に痛みがある事だけ分かった。
「ニコラさんはスピードもパワーもあるわ。私よりも遥かに上よ。でもね、顔面に集中しすぎるの。1発で倒そうとしていては勝てない敵もいます。」
話しながらもクラリスはニコラに近づいて行く。
「次に、直線すぎです。ニコラさんの連打は素早く、パワーもあります。ですが一直線過ぎてカウンターを取りやすいんです。私は敢えてあなたの蹴りを避けました。あの場合頭、腹部、足の3箇所のどこかが狙われる3択なので本来なら全てを躱せるバックステップが正解です。でも…」
クラリスは、倒れているニコラの横に止まって屈んで話す。
「私には読めてました。あなたが顔面を狙ってくると…相手に自分の考えを悟られる事ほど致命的な事は有りません。もっとよく考えて戦う様にして下さい。ポテンシャルは十二分に備わっています。それを活かす戦い方を見つけて下さい。」
クラリスはニコラのおでこを人差し指で小突いて立ち上がる。
「バースさん、エールさん。私の勝ちで良いですか?」
「ほっほっほ、勿論じゃ。」
「ええ、完敗の様ですね。」
バースとエールはクラリスとニコラの元へ近づいて行った。フロールとウールは驚きのあまりその場に棒立ちとなっていた。リーフはというとそんな2人を見てやれやれという顔をしていた。
試合が終わったと同時に里のみんなからは拍手喝采と歓声が響き渡った。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新は10月27日水曜日の21時です。
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