135歩目
みんなが寝静まった後、クラリスは1人で外へ出た。
(1人で行く気?)
「起きてたんだ……」
クラリスがどこかへ行こうとしたのが分かったのかツボミが心の中から話しかけてくる。
「うん……これは私の問題だから。」
(クラリスってやっぱりバカだよね。)
「うん、知ってる……でもやっぱりあの子たちには生きてて欲しいの。」
(それで生かされてあの子達は喜ぶのかしら?)
「そういう問題じゃないのよ。私は生きてて欲しい。それだけよ。」
(生きて帰ってきたら殺されるかもよ?)
「大丈夫、生きて帰ってくるつもりないもの。」
そう言ってクラリスはオオクニヌシの待つ社へと向かうのだった。
「来るのが早くはないか?」
「日付は変わってるわ。問題ないでしょ?」
「確かにな……遺言があれば聞くが?」
「そうね、あの子たちが来たら絶対扉を開けないで。あとこの子をお願い。」
そう言うとクラリスの中からツボミが現れる。
「えっ?ちょっ!クラリス⁉︎」
いきなりオオクニヌシの前に出されたツボミは驚きのあまり狼狽えた。
「やはり君はこの子を自由に出来ていたのだな。」
「私の魔力を吸って瘴気は消えてるわ。あとは神格のあなたがこの子を育てて下さい。」
「俺がこいつを殺さないとは思わなかったのか?」
鋭い殺気をオオクニヌシはクラリスに向けるがクラリスは全く意に介していなかった。
「あなたはこの子を殺さないわ。」
「なぜ言い切れる?」
「もう敵対する意志がない者を神々は攻撃する事はない……でしょ?」
「ふっ……知っていたか……では、預かる。その代わり必ず戻ってきてくれよ。」
クラリスは頷いた。だがそんな保証はどこにもなかったのだった。
「待ってよ!」
しかしそれまで黙っていたツボミが声を上げた。
「私も付いていくわ!」
「ダメよ。ここで待ってなさい……」
「だって、クラリスは死ぬつもりじゃん!」
「……そんなつもりないって……それに私は不老不死だよ?」
「嘘!不老不死でもクラリスの場合は首を落とされたら死ぬんでしょ⁉︎」
「なんで知ってるの……そっか。ツボミは心が読めるのよね。」
「……ねぇ、行くなら私くらい連れて行ってよ。神様を食べれる私は神連中だって怯むわよ!」
「エアーロック……」
しかし、クラリスは風の拘束でツボミの動きを封じた。
「何よこんなの!私なら直ぐに……」
しかし、なかなか壊す事は出来なかった。
「そう簡単に壊れないわ。そういう作り方をしたのだから。オオクニヌシ様。お願いします。」
「分かった。気をつけてな……」
「ありがとう……さようなら……」
「クラリスーーー!」
ツボミの叫びも虚しくクラリスは天界へと消えて行った。
「……アンタ……なんでクラリスだけを行かせたの……?」
怒りに震えながらツボミはオオクニヌシに尋ねた。
「……俺にはこれしか出来ない……俺を食いたいのなら食え。今の俺は抵抗しない……いや出来ないぞ。」
「食べないわよ……そんなのクラリスが望んでいないもの……」
そうしてツボミは出口へと歩いて行った。
「何処へ行く気だ。」
「アンタには何も頼らない。リーフ達を起こして天界に殴り込むわ。」
そう言うとツボミはスーッと消えて行った……そうして代わりに現れたのは戦神と稲荷様だった。
「おい、オオクニヌシ、これで良いのか?」
「アンタらしくないわね。恩を仇で返すとは……」
「俺にはお前ら八百万の神々を護る責務がある……」
「言い訳か……ますますお前らしくないな。」
オオクニヌシは言い返す事はなかったのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新は9月21日水曜日の21時です。
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