128歩目
その頃、エールたちは……
「竜の里凄かったですね。」
「私……あんなに沢山のドラゴン見たの初めて……」
さくらとボタンがそれぞれ感想を言う。今はエールがドラゴンとなって飛んでおり、ニコラは大人しくエールの背中に乗っていた。
「それにしてもサクラさんもボタンちゃんも強くなったね。」
「そうかなー?自分じゃ分からないなー。」
「私も……」
「強くなってますよ。里の子たちと渡り合えていたんですから。普通なら一撃も持ちませんよ。」
聞いていたエールに肯定されて少し実感が湧く2人だった。
「よーし!じゃあ戻ったらクラリスともう一回戦おう!そして今度こそ一本取る!」
サクラは意気込んでいるがそこまで強くなっていないと思うニコラとエールであった。
「少し休憩しましょうか、」
「そうだね。クラリスさん達なら日が沈む前にテント張って野宿の準備するもんね。」
「私は……何すれば……?」
「うーん……そうだねーじゃあ火を起こしてくれない。出来る?」
「うん!任せて……」
ボタンは木の枝を集めに行ってしまう。流石に心配なのでサクラが付いて行くのだった。
「エール。私たちは何しておく?」
「そうね。とりあえずウールは石を集めて焚き火のスペース作って。私は水を作るから。」
エールは慣れた手つきで水を作り出す。スイの教え方が良いのだろう。一方ウールは土を集めていた。そして魔法で固めて敷き詰めていく。ウールはクラリスからの教えをしっかりと身につけて更に応用していた。
「エールはやっぱり上達早いなー。私はいつも置いてけぼりだよ。」
「ふふふ。何言ってるの?ニコラも私を追い越してる事あるじゃない。」
「そうだっけ?私はエールに追いつく為に必死なんだよ?」
「姉妹であり。ライバルでもあるものね。久しぶりに手合わせしない?」
「えっ?エールからは珍しいね。いいよ。相手になるわ!」
エールの言葉に不適な笑みを浮かべるニコラ。
「だけどその前に……」
「夕飯作らないとね!」
サクラとボタンが木の枝をもって来るとニコラはそれに火をつけた。そして火を使って料理をするエール。ニコラの料理技術は全く成長はしていない為、サポートはボタンがしていた。
夕飯を食べ終わると早速手合わせを始めた
「いくよ。エール。」
「いいわよ。いつでも来なさい……」
そうしてニコラはサクラの合図の瞬間にエールの懐へと飛び込んだ。
(うっ……速い!前とは全然違う……)
「どぉ、前より早くなってるでしょー!」
「ええ、外で観てたより早いわ。」
(しかも直線的じゃない……かなり成長したわね。)
上と見せかけ下、下と見せかけ上、そしてフェイント……ニコラの技はどれも一級品の技に仕上がっていた。
「でもね。私もニコラに負けてられないのよ!」
今度はエールが仕掛ける。だが、それをニコラはことごとく防いでいく。しかしそれはエールにも分かっていた。
「パワーではニコラに勝てないけどね……テクニックではまだ負けてないわよ。」
そう言うと力の入ってない拳でエールはニコラの腹部に一撃入れた。
「何今の?」
「ふふふ。私の勝ちね。」
「えっ?」
疑問の声を上げたニコラがいきなり膝から崩れ落ちた。エールの勝ちである。
「な、何したの?」
「これがクラリスさんやリーフになら効かなかったわ。でもニコラになら効くのよ。」
「私にだけ効く?まさか……」
「そう竜心。ドラゴンだけがもつ弱点の1つ。そこを寸分違わずに押すとどんな屈強なドラゴンも暫く立てなくなるのよ。」
「話には聞いてたけどこれが竜心を押されたって事なんだね。」
「ええ、ここは力を入れなくても押せばいいだけなの。ニコラに勝つにはここを押すしかなかったのよ。」
どこか寂しそうに語るエール。強くなった妹を素直に喜んであげたい。でも、ここまで自分を追い込む存在になった事に寂しさも感じた。
「次は正攻法で勝つわよ。ニコラ」
「うん、次はもっと強くなって挑むね!」
2人は握手をした。そして立てないニコラをおんぶするエール。それは正しくどこにでもいる姉妹に見えるのでした。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新は申し訳ありませんが8月3日にさせて頂きます。活動報告でも申し上げましたが7月11日にコロナウイルスの陽性が確認された為、7月15日現在執筆を控えております。その為一週だけ休載させて頂きます。楽しみにされてる方々には大変申し訳ありませんがご理解の程をよろしくお願いします。




