125歩目
白い場所で鬼蜘蛛の少女は目を覚ました。
「ここは……」
辺りを見回しても何もなかった。
(そっか……私封印されたんだ……)
「という事はここはあのお姉さんの中なんだね……」
……
…………
………………
(暖かい……)
死後の世界は寒く寂しい場所だったのでクラリスの中が少し暖かく感じた。すると、前に誰かいた。
「あれ?お姉さん?」
「……」
そこには無言で立ち尽くすクラリスがいた。
「えっ?なんでいるの?」
「……」
クラリスに似た誰かは返事をせずに後ろを向いて歩いて行く。
「ちょっと、待ってよ!」
少女は走ってその後を追いかけた。
「あれ……ここは?」
いきなり風のある晴れた空を見た。
「どお?シャバの空気は?」
「緑のお姉さん?」
そう、ここは外の世界だ。そして傍にはリーフが本を読んでいた。
「緑のお姉さんじゃないわ、リーフよ。」
「じゃあリーフのお姉さん。ここは?」
「和の国の私たちの拠点よ。あなたはあんまり外には行けないからね。」
「……なんで私は外にいるの?」
「質問ばかりね。まぁそうなるか。」
リーフは読んでいた本を閉じて真剣に話を始めた。
「クラリスが出してくれたのよ。」
「なんで……?じゃあ封印の意味なんてないじゃん。」
「そうね。でも、身体を動かさないと鈍るから出したんじゃないの?」
「そう言う事じゃないのよ!私は悪い事したから封印されたのよ。なんでそんな私が外に出られてるのよ!」
「悪いって自覚はあるのね……」
「それは……だって悪い事してない生き物を殺して生まれてきたし。神連中も殺したし……」
「分かってるじゃない。でも生まれてくるのに必要なら私はしょうがないと思うわよ。」
「えっ?」
「だってその人間も結局他者の命を奪って生きてるわけだし、生きる為に他者の命を食べるのは当然な事よ。クラリスが言ってたわ。人の中には自分達が特別とか思ってる人がいるって……」
そこでリーフは一旦言葉を切った。そして息を吸ってもう一度話し始める。
「でもね。命は平等だってクラリスが言ってたの。動物でも魔物でも妖精でも神様でも命の重みは一緒なんだって。だから助けるの。困ってるのが動物でも魔物でも妖精でも神様でもってね。その証拠にあの子魔族の村で人間達が暴れてた時に魔族の子供を守ってたわ。」
「あの金髪のお姉さん?お人好しだね。」
「そんなレベルじゃないわよ。これからアンタもその被害者になるんだからね。」
「えー……」
不満の声を上げる鬼蜘蛛だが、顔はニヤついていた。どうやらクラリス達との旅が楽しみの様だ。
「ほら、起きたらあなたも……そうだあなた名前は?」
「えっ?名前?」
今まで鬼蜘蛛とだけ呼ばれてたので彼女に名前などなかった。
「名前は鬼蜘蛛じゃないの?」
「それだと外で話せないでしょー、外でも話せる名前を作っておかないと。」
「そう言うことね。名前かー……」
今まで考えた事も無かった為すぐには良い名前が出てこなかった。
「うん、良いのがないからリーフのお姉さん決めてよ。」
「うぇー……私?」
心底嫌そうな顔をするリーフ。
「私が付けるよりクラリス達が帰って来てからにしましょう。私が決めると酷い名前になるわよ?」
「そんなに酷いの?」
そこまで聞くと流石に興味が出てくるので聞いてみる事にした。
「私はそうは思わないわよ。ミツエダとかカレハとかツボミとか……」
「ツボミ……いいね!私はこれからツボミにするわ!」
「えっ、いいの?」
「うん!これから成長しそうな名前だもん。」
本人が満足してる様なのでリーフもなら良しとする。
「そう言えば金髪のお姉さん達は?」
「ああ、クラリスたちね。クラリスとフロールは買い出しに出てるの。他は妖精の里に行ってるわ。詳しい事はクラリス達が帰って来てから話すそうよ。」
「ねぇ、もう一度確認するけど、私、生きてていいの?」
「いいわよ。もう一度復活した際にまた犠牲者を出すのは悪循環だからね。このままクラリスが管理した方が楽なのよ。」
リーフの返答に安堵の表情を浮かべるツボミだった。
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次回更新は7月6日水曜日の21時です。お楽しみに!
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