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プロローグ

一月前に投稿した短編、最強女戦士の放浪記を改変した作品です。

楽しんで頂けると幸いです。


こちらもよろしくお願いします!

 ここにはさっきまで王国があった。

 王様が居て、国民が居て、私の()仲間も居た…


 だけど、みんな死んじゃった……


 私が殺したのだ。全部……


 理由なんてない……私を無実の罪で殺そうとしたから逃げる為に魔法を使った。そしたら暴発してそのまま大爆発を起こしてしまった。


 私はただ空を見上げていた。涙を堪える為に…


「これはまた酷い有様ですね。」


 声のする方を見ると1人の白い服を着て、杖を持った女性が私の前に立っていた。


「あなたも私を殺しにきたのですか?先程までは無実でしたが、今は大罪人です。なので何も抵抗致しません。」

「私は他者の命を奪う事は致しません。救いを求める者の前に現れます。」


 私は目を見開いた。


「それならこの国を救ってくれるのですか?」

「いいえ、私は死者を蘇生させる事は出来ません。」

「では、なぜここに……ここには私しか居ませんよ?」

「ええ、だからあなたを救いに来たのです。」

「……は?」


 少しの沈黙の後、私は疑問の声をあげた。そして女性はニコッと笑った。


「なんでですか……私は多くの命を奪ったんですよ。それなのにどうして?」

「あなたには罪がないからです。」


 その視線には一点の曇りがなかった。彼女の瞳は本当に私が悪くないと言い切っていた。だからといってこの現状を引き起こしたのは私だ。罪がないわけない。


「でも、私がこの現状を引き起こしました。それは変わりません。なので……殺して下さい……」


 私は頭下げて首を差し出した。すると、彼女は私の顎を持ち上げた。そこにいた彼女は困った顔をしていた。


「先程も言いましたが、私は命を奪う事は致しません。そして、あなたが悪くないと言うのにもしっかりとした理由があります。」

「それはどんな理由ですか。国を滅ぼしても許される理由とは一体なんだって言うんですか⁉︎」


 私は声を荒げて叫び彼女の手を払った。しかし彼女はどこまでも冷静だった。


「確かにあなたは国を滅ぼしました。ですがこれは本来起こらなかった事象でした。これは人々が起こした罪なのです。それこそ罪のない者を自分たちの都合で殺そうとした罰なのです。」


「えっ、それはどういう事ですか…?」


「本来呪いを受けるのはあなたではなく、勇者でした。ですが、あなたが勇者を庇って……いえ、あれは庇ってはいませんね。身代わりにされたばかりに起こった事象なのです。」

「なぜ、その事を……知ってるのはあの場に居た者だけなのに……」

「ふふふ。見てましたからね全て。」


 そう、私は勇者のパーティに居た。パーティの盾として、私は選ばれたのだ。文字通り道具の様に盾となって……


「もし、あなたに罪があるのならばここへ来たのは死神です。ですが、天が遣わしたのは私でした。見ての通り鎌は持っておりません。」


 彼女はくるりと回って鎌を持ってない事を見せた。


「天からって……ではあなたは天使なのですか?」

「天使ではないですね、正確に言うならば神様ですかね。」

「神様……?……えっ?ええーー⁉︎」


 私は驚きのあまり大声で絶叫してしまった。そして、あまりの大声に神様は耳を塞いでいた。


「そんなに驚かないで下さい。確かに神様ですが、そこまで偉い神様ではないのですから。」


「す、すいません……ですが、神様といきなり言われたら流石に驚きますよ。」


「ふふふ。それもそうですね、さて、信じて貰えたところで、あの時魔王がかけた呪いは不老不死でした。では、なぜそんな呪いをかけたのか分かりますか?」


 信じたわけではないが、とりあえず質問されたので少し考える。


「…すいません、わかりません。人にとっては不老不死というのは夢であり、大願ですから…」


「そうですよね、人にとっては長年の夢ですからね。ですが不老不死というのは良いことばかりではないんですよ。」

「そうなんですか?」


「ええもちろん。1人で長く生きるというのは孤独なんです。人の一生は長くても精々70年ですから、100年も経てば一人ぼっちとなってしまう。もし、人類が滅亡しても1人生きていかなくてはなりません。恐らく魔王はそれが狙いだったのかと。死ぬ事も出来ず、孤独に(さいな)まれる姿を望んだのでしょうね。」


「それを……私はこれから味わうのですね……」

「ええ……そうですね。魔王の呪いは私たち神々でもそう簡単には解けませんから。」


 これから私が味わう地獄を神様に聞かされて沈黙が下りる。


「ですが、まさかこの様なことになった理由が勇者の嫉妬だとは我々も予想出来ませんでした。」


 そうなのだ。私が死刑になった理由。それは本来勇者である自分が不老不死の加護に相応しいのにそれを私が横取りをしたなどと王に話したのが始まりであった。


 それから程なくして私は国賊として捕まった。私は、これは魔王の呪いであり、決して加護ではないと主張したが、他のメンバーが私の主張を全て覆したのだった。


 焼け野原となった土地を私と神様は見ていた。


「私はこれからどうすれば良いのでしょうね。」


 死ぬ事も出来ないし、人と関わる事もこれからは避けなければならない。私は途方に暮れるしかなかった。


「あなたに出来る事は生きる事ですよ。死ぬ事が出来ないのですから。」

「そうなりますね。あはは……こうなると死刑の方が軽く見えちゃいますね……」


 私は力なく笑った。これから無限の時間を生きなければならない。出来る事ならばこの命を持って殺してしまった人たちに償いたいけどそれも出来ないのだ。


 すると、神様が急に真剣な面持ちとなった。


「そうですか。ならば私があなたに罰を与えましょう。」

「あなたは人を殺せないのでしょう?私の罪は簡易な罰で許される程軽くはありませんよ。」


 神様は持っていた杖を振り上げる。


「あなたは自分の命を軽くみる傾向があります。そんなあなたにとってはとっておきの罰ですよ。」


 振り上げた杖が青白く光出す。


「何これ……眩しい……」

「あなたには()()()()()()()()()()。」

「えっ…」


 光が消えた後、神様は元の穏やかな顔に戻っていた。

 

(聞き間違いだよね…幸せになって貰うって…?)


「あなたに罰を与えました。我ながら良い罰です。」


 どこか満足気な神様に私は質問した。


「あの……聞き間違いですよね?幸せになって貰いますって……」

「いいえ、合ってますよ。幸せになって貰いますよ。」

「なんでですか⁉︎これだけの事をして、私が幸せになどなって良いはずがありません!」

「だからです。」


 再び真剣な面持ちになり私に話をしてくる。


「これだけの事をしてと言っていますが、あなたは償える方法を死という形でしか考えていませんよね。それでは意味がないのです。人は一瞬で不幸になります。しかし幸せになる為には長い時間をかけなければなりません。幸せになるとは軽くないのですよ。」


 神様は私の頬に手を当てて言葉を繋ぎます。


「生きなさい。何十年、何百年経とうとも幸せになる為に、ここで亡くなった方々の分まで……それがあなたへの罰です。」

「……はい……」

(そっか…私は生きていいのね……幸せになっても……いいのね……)


 そう思った瞬間私の瞳から大粒の涙が出てきた。そして、それを見た神様は私を優しく抱きしめ、泣いてる姿を見せない為に翼で隠してくれた。


(いつ以来だろう……こうして思いっきり泣いたのは……)


 そうして、私は旅に出た。時間は沢山あったので、最難関の魔法の会得を試したり、剣術を磨いたり、魔物を狩ったりした。そして、人々の戦争にも直面し、飢餓に苦しむ人々にも会った。


 あの神様の言う様に人は簡単に不幸になってしまう。でも、幸せな日常を取り戻すまでにはそれ相応の時間が必要だった。


 そんな私の旅も500年目に迎えようとしていた。


 そして、私事クラリスの旅はここからが本番になるのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

18日から20日までは2話投稿致します。休みの間の暇つぶし程度に読んで頂けると幸いです。


面白ろければブックマークをつけて頂けると幸いです。

それでは次回更新もお楽しみに!

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