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転生したら最弱になった元最強  作者: こいこい
プロローグ 聖暦二〇二〇年
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⓪-5 聖暦二〇二〇年

 ベルダスは大きく手を振ると、光の塊は下降し始めて森へと向かって行く。

 しかし、森の葉に当たる数センチ手前で光の弾丸は儚くも消えていく。より濃く光っていた光が空気と共に消えていった。


「な!?」


 魔法を解除したつもりもない、目標に当たったわけでもない。行きつく答えは誰かの妨害。こんなことをできるのはかなりの魔術師。


「お前の魔法がどれだけ凄いか知らないけどな、この国落としたって英雄なんてのにはなれねえぞ」


 その場にいつからいたのだろうか。ベルダスが振り向くと、そこには顔をフードで隠しマントを巻いた男が右手を前に突き出して、立っていた。


「ふん、ようやく英雄様のお出ましか」


 遠くでも英雄リヴェルの出現に、戦士たちは目を向ける。


「リ、リヴェルだーーー!」


 敵の戦士たちは現れたリヴェルの姿に慌てふためき、武器を放ってまで逃走する者までいた。

 その光景を全く気にすることなく目の前にいるベルダスから目を離さない。


「もういいだろ。白旗上げて祖国に帰れ」


 腕を組んだままリヴェルは淡々と言う。


「ふん、貴様が死んだらおとなしく帰ってやる」


 ベルダスは話しながらも腰の裏で魔法術式を描いていた。


「はぁ、やっぱ交渉じゃあ無理か」


 リヴェルは首を傾けると、ベルダスの周囲には無数の光の玉が現れた。


「国を賭けてここにいるんだ、戦いは必至だろう」


 両手を広げたベルダスは、投げるような素振りで無数の光の玉を飛ばした。光はリヴェルへ向かって一斉に飛び始めた。


「はぁ……」


 どれくらい進んだのだろうか。光の玉はいつの間にか消え失せており、リヴェルにまで届いていないようだった。


「え? ……なんだ……」


 何が起こったかわからないベルダスは周囲を見渡すも、光の玉が飛んだ形跡はない。目の前にいるリヴェルも腕を組んだまま先ほどから一切の動きがなく当たった気配がない。

 それはさきほども起こった現象。


「魔力切れか?」


 今までにない現象にベルダスは首を傾げる。魔力が底を尽きるほどの魔法ではないし、体力も充分にある。考えても答えにたどり着けないので、すぐさま考えるのを止めた。

 行きつく先は第二陣の攻撃。

 再び指先で呪文を書くと、次は無数の矢がベルダスの頭上に現れた。


「いけ、殺せ!」


 大きく広げた両手を胸元で交差するように振ると、矢はリヴェルめがけて飛んでいく。

 今度は目を離さず見ていた矢の進む先に待っていたのは再び消失するという結末。

 数メートル進んだ矢はリヴェルにまで届くことなく二人の間で消えてなくっていた。二度にわたる自信のある攻撃の消失にベルダスは当然思う。

 これは自分の失態ではなく、リヴェルの力なんだと。


「き、貴様……」


 歯ぎしりをして怒りを見せるもリヴェルは怯むことなく目の前の敵を睨みつける。フードの奥から見える鋭い視線に、一瞬ベルダスの身体が硬直する。恐怖と焦燥がまとわりついてくる。

 リヴェルはそのまま一歩踏み出す。ここでようやくベルダスは理解した。目の前にいる英雄と呼ばれる男の強さについて。

 だが、認めたくない。ここまでの差があることを。

 自分の身体が震えていることに気付いたベルダスは右手で押さえつけるように左手首を掴む。少しずつ向かってくるリヴェルに恐怖し、再度光の弾丸を放つも、今度は光が現れた瞬間に消え去っていく。


「くそう」


 今度は呪文を唱えると光の剣がベルダスの手元に現れた。鉄でさえ切れそうな光の剣にもリヴェルの表情は一切の動揺が見えない。攻撃を当てるどころか、表情一つ崩せない。

 何かが切れる音が頭の中ですると、ベルダスは勢いよく切りかかる。剣を振り上げるとリヴェルは目だけを動かして光の剣を見る。

 違和感を覚えたベルダスは一瞬、自分の手元を見た。光の剣はすでに手元からなくなっていたのだ。

 切りかかった勢いで止まれず、リヴェルは何も持たぬベルダスの顔面を一発、強く殴った。そのままの勢いで背中から倒れ込む。


「き、貴様卑怯だぞ」


 倒れ込んだベルダスは上半身だけを起こして言った。もはや負け惜しみしか出てこない。


「今お前がいる場所は命を懸けた戦争だよな。だったら卑怯なんて言葉は出てこないはずだ。自分の意志一つ貫けねえ奴は何も守れない」


 リヴェルは指先二本を下に向けると、近くに落ちていた戦士が使っていたであろう鉛の剣が宙にうく。更に指先を少し動かすだけで、剣はベルダスの足に突き刺さった。


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 あれほどまでにアルス国の戦士を圧倒し、殲滅してきたベルダスだったが、アルス国の英雄の前では赤子のようにあしらわれる。

 脚は赤く染まり、立ち上がる事さえ困難だった。


もう少し続きますよ。

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